10月15日、スバルは、新型「レヴォーグ」を発表した。お披露目の場所に選ばれたのは成田空港の整備地区にある日本航空(以下、JAL)の格納庫だった! その理由とは? 新型のポイントについても説明する。
初のフルモデルチェンジ
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SUBARUが「レヴォーグ」をフルモデルチェンジし、販売開始した。10月15日におこなわれたオンライン発表会は、なんと日本航空成田Aハンガー(格納庫)からの中継だった。
Hiromitsu Yasui6年ぶりのフルモデルチェンジになった新型レヴォーグ。特徴をごくかんたんにあげると、新しいエンジンなどで動的性能が向上し、かつ新しいカメラシステムを得た先進安全技術の「アイサイト」が進化し、安全性能が高まった。
クルマでもっとも大事な、人体でいえば骨格にあたるプラットフォームが一新された。SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)と呼ぶ新世代のもので、構造用接着剤を多用しているのが特徴だ。剛性を上げ、しなやかな走りを実現している。
同時に、サスペンションシステムや、ステアリング・システムも新設計。エンジニアの理想を実現したといってもいいような内容になっている。
「最新技術は日本(専用車種)のレヴォーグから導入します」
成田の格納庫で、ボーイング「787」の前に置かれた3台の新型レヴォーグをしたがえて、SUBARUの中村知美社長はそう語った。
Hiromitsu Yasuiステレオカメラを使ったSUBARU独自のADAS(最新運転支援システム)技術「アイサイト」は、カメラの性能があがり、より広く、より遠くまで検知が可能に。それによって危機回避性能が高まっている。
新型は、新たに前方用レーダーセンサーが組み合わされた。それによって、たとえば交差点では、左右から不意に飛び出してきた車両などを検知するタイミングがうんと早くなった。SUBARUではさきに、ジャーナリストにプロトタイプを試乗させ、新世代のアイサイトの効果を体験させている。自信があるのだ。
Hiromitsu Yasui前側方プリクラッシュブレーキ、緊急時プリクラッシュステアリング(ブレーキだけで止まれないとき操舵を支援する)、エマージェンシー・レーンキープアシスト(後方の死角にいる車両との接触を避けるための操舵支援)など、新しくなったアイサイト(全車標準装備)で、SUBARUはいっきに競合をひき離した感すらある。
同時にオプションで「アイサイトX(エックス)」が設定されたのも、注目していいだろう。こちらは安全技術というより、運転支援技術だ。一定の条件を満たした自動車専用道路での使用を前提としていて、車両がアクセル、ブレーキ、ステアリング・ホイール操作をアシストする。
50km/hまでの渋滞時、ステアリング・ホイールのスウィッチを押すと、車両が加速と減速、そしてステアリング・ホイールの操作をおこなう。さらに停止と再発進までおこなう「渋滞時ハンズオフアシスト」「渋滞時発進アシスト」「カーブ前速度制御」などがアイサイトXに含まれる。
新エンジンを搭載
搭載する1795ccの水平対向4気筒ガソリンターボ・エンジンは新開発。130kW(177ps)の最高出力と、300Nmの最大トルクを発揮する。現行モデルの1599ccエンジンと1998ccエンジンはなくなり、当面、レヴォーグのパワーユニットはこの1.8リッターのみとなる。
これに、SUBARUが得意とするシメトリカルAWDなるフルタイム4輪駆動システムと、無段変速機リニアトロニックを組み合わせる。
Hiromitsu Yasuiサスペンションはストローク量を増やすとともに細部まで手を入れ、車輪が浮かないようにし、接地性を上げる(駆動力を確保する)とともに、乗り心地の快適性を追求。いっぽうで「STI Sport」には専用に電子制御可変ダンパーを採用するという凝りかだ。
STI Sportに搭載されるドライブモードセレクトは、従来の3段階から、5段階へ。名称も「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ」「スポーツプラス」「インディビデュアル」となった。
中村社長は新型レヴォーグの変更内容をして「2格上の大幅な進化」と、ユニークな表現をした。「2格上」とは、通常のモデルチェンジでは性能向上によって、従来とくらべ1段階上をいくパフォーマンスを手に入れたとうたうことが多いが、そのまた上をいく性能を実現した、ということである。
Hiromitsu YasuiSUBARUとJALの共通点とは
レヴォーグは、たとえば「レガシィ・アウトバック」と比べると、スポーティ嗜好が強めのモデルだ。“スポーツワゴン”というユニークなコンセプトでファンを獲得してきた。新型はキープコンセプト。SUBARUのスポーツモデルのシンボルともいえる、ボンネット上のエアスクープも継承されている。
新型のスタイリング上の特徴は、シャープな印象がより強められた点だ。ヘッドランプのレンズの上下幅が狭くなるとともに、グリルは立体的な造型に。くわえて、エアダムの存在感が増し、いかにも走りがよさそうなアグレッシブさを持つ。
Hiromitsu Yasuiボディサイズは、全長4755(従来型は4690)mm、全幅1795(同1780)mm、全高1500(同1490)mm。ホイールベースは2670(同2650)mmと、すこしずつ大きくなっている。
SUBARUが手がけるプロダクトの価値として、前出の中村社長は「ひとを中心にした製品づくり」とした。
続けて、「ボーイング787型機の中央翼をこれまで1000機以上生産してきたのはSUBARUです。1917年に設立され、航空機も手がけてきたSUBARUのDNAは、使うひとを中心に製品をつくり、それが安心感につながり、ひいては使う楽しさへと結びつけているのでる」と、述べた。
Hiromitsu Yasuiでは、JALの施設で発表会をおこなった理由とは?
SUBARUの広報担当者によれば「新型コロナウィルス感染拡大に伴い、私たちを取り巻く環境は大きく変化しました。“人の移動”に関しても、新たな経験や体験を得るために必要な行為が、その内容や方法について見直されています。こうした状況下に“移動する愉しさ”を追求していく点において、JAL様とSUBARUは共通しております。あらためて“移動する愉しさ”について多くの人に発信したく、JAL様とのイベントを企画しました」とのことだった。
Hiromitsu Yasui会場に、格納庫を選んだ理由は?
「格納庫は空間が広いため、ソーシャル・ディスタンシングを確保でき、新型コロナウィルスにかんする環境変化にも対応しやすい、と、考えたからです。また、普段なかなか入れない格納庫内の様子は、オンライン配信でも視聴者に愉しんでいただけるのではないか? とも考えました。弊社の技術が採用されているボーイング787と新型レヴォーグのツーショットも実現出来ますので」
なるほど。企業のヘリティッジを訴求し、同時に製品づくりの思想を伝えるための、ユニークな演出といえる。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiちなみに、発表会実現までには多くの苦労があったそうだ。さきほどのSUBARUの広報担当者は「本来格納庫は、イベントをおこなう会場ではないため、JAL様や成田空港様に迷惑が掛からないよう細かい調整をおこない実現にいたりました。たとえば、格納庫内に入れる人数に制限があったため、スタッフを必要最小限にしなければなりませんでした」と、話した。
新型レヴォーグのグレード構成は大きくいうと「GT」系と「STI Sport」系の2本だて。前者は310万2000円から、後者は337万円からだ。
記者会見の席上で、先行予約状況について中村社長は、「2020年8月20日から10月14日までに8290台で、高度運転支援システムのアイサイトX搭載グレードが全体の93%を占めています。また、STI Sport系が全体の57%です」と、発表、レヴォーグを好むひとの嗜好を明らかにしてくれたのだった。
Hiromitsu Yasui文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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