現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 欧州の自動車メーカーがディーゼル排ガス不正に手を染めた本当の理由

ここから本文です

欧州の自動車メーカーがディーゼル排ガス不正に手を染めた本当の理由

掲載 更新
欧州の自動車メーカーがディーゼル排ガス不正に手を染めた本当の理由

 コストと手間を惜しみ燃費と動力性能の両立が難しくなった

 フォルクスワーゲンのディーゼル排ガス問題を発端に、ディーゼルエンジン車の排ガス対策が話題となった。そして、VWもアウディも関係者が逮捕されたり罰金の支払いを命じられたりということが起きている。世界に名だたる自動車メーカーであり、信頼や憧れの高いブランドが、なぜそのような事態となったのか。

「燃費なら日本車」の時代は終わった! 国産車を脅かす好燃費の輸入車4選

 答えは比較的簡単だ。それは、ディーゼルエンジンが抱える根本的な課題による。

 1990年代に、二酸化炭素(CO2)排出による地球温暖化の抑制が社会に浸透し、クルマの燃費を向上させることが強く求められるようになった。

 そこで、トヨタは97年に世界初のハイブリッド車(HV)プリウスを発売した。そして、従来のガソリンエンジン車の2倍の燃費性能を実現したのである。一方、欧州では、ドイツを中心に欧州のとくに高速での長距離移動において、HVは必ずしも有効でないとの評判であった。プリウスが、燃費向上を主目的に作られたHVであったため、走行性能に不満があったのだ。

 しかしそこに、彼らの見落としがあった。たとえば、燃費をプリウスより少し落とすことをよしとしたトヨタのオーリスのHVは、のちに欧州でそれなりの販売台数を得ている。またVWの問題以後、欧州各自動車メーカーによるHVやプラグインハイブリッド車(PHV)への積極的な姿勢を見れば、電動化の効果は明らかだ。

 いずれにしてもHVは使い物にならないと判断した当時の欧州の自動車メーカーは、従来から小型車で使われてきたディーゼル車の直噴化など性能向上により、燃費をさらに改善しようと試みた。ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べ熱効率が高いことから燃費が良いエンジンと理解されている。また、ディーゼルターボを乗用車に採用し、上級車種にもディーゼルターボ車を波及させて売り上げを伸ばし、欧州市場の約半数がディーゼル車という状況を生み出した。

 ところが、直噴ディーゼルエンジンは、燃費が良くても排ガス浄化性能ではガソリンや、LPG(液化石油ガス)エンジンに劣る。理由は、燃費を良くすればするほど燃焼温度が上がり、窒素酸化物(NOx)の排出が増える。逆に、NOx排出量を減らそうとして燃焼温度を下げると粒子状物質(PM)の排出が増えるという、背反する排ガス性能を有するのである。ガソリンエンジンでも、直噴化した場合はPM排出の懸念が生じる。

 そこで、PMを処理するディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)を装備することにより、燃焼温度を下げNOxを減らそうとしたが、それでは圧倒的に燃費性能を上げるのが難しくなる。つまりHVに負けてしまう。燃費を向上させながら、NOx触媒をDPFと併用しながら排ガス浄化を行おうとしたが、NOx除去には限界があった。

 NOx除去に効果的なのは、尿素SCR(選択触媒還元)と呼ばれる触媒の装着にある。日産ディーゼル(現在のUD)や、ダイムラーは、はやくから尿素SCRの採用に踏み切ったが、フルラインアップ(小型車から高級車までを扱う)自動車メーカーは、躊躇した。尿素SCRを取り付けるコストと、尿素を定期的に補充する手間を惜しんだのだ。さらに、日本が世界をリードした新長期規制に準じるEURO6の排ガス規制へと基準が厳しくなると、なおさら排ガス浄化と動力性能の両立が困難になった。

 結果、モード測定による排ガス規制は達成できても、排ガス浄化を満たしながら実走行における動力性能の確保ができなくなった。そこで、市場で運転性能に苦情が出ないよう不正な操作が行われたと考えられる。

 電動化に踏み切るか、直噴ディーゼルターボエンジンを使うにしても尿素SCRを装着するかをしていれば、この問題は起こらなかった可能性は高い。技術の本質を見抜けなかったか、あるいはあえて見ないようにして目先の利益を追求した経営責任である。

こんな記事も読まれています

全長4.1mで600馬力! 日産「超“コンパクト”GT-R」がスゴい! 「V6ツインターボ」×4WDでまさかの“市販化”実現! 4ドアボディの「スーパースポーツSUV」どんなモデル?
全長4.1mで600馬力! 日産「超“コンパクト”GT-R」がスゴい! 「V6ツインターボ」×4WDでまさかの“市販化”実現! 4ドアボディの「スーパースポーツSUV」どんなモデル?
くるまのニュース
進化したアドベンチャースポーツ BMW Motorrad「F900XR」新型モデル発表
進化したアドベンチャースポーツ BMW Motorrad「F900XR」新型モデル発表
バイクのニュース
DIYスキルやカスタムセンスが光りまくり! 「オーテック里帰りミーティング2024」に参加したオーナーカーが個性的すぎた
DIYスキルやカスタムセンスが光りまくり! 「オーテック里帰りミーティング2024」に参加したオーナーカーが個性的すぎた
WEB CARTOP
トヨタ、SUV「RAV4」を一部改良 全グレードを4WDに 装備充実で価格は上昇
トヨタ、SUV「RAV4」を一部改良 全グレードを4WDに 装備充実で価格は上昇
日刊自動車新聞
首都高羽田線「大改造計画」いよいよ本格化へ!? 羽田トンネル「上下線分離」で渋滞緩和!? 「謎の高架橋」復活で「5車線化」のスゴさとは
首都高羽田線「大改造計画」いよいよ本格化へ!? 羽田トンネル「上下線分離」で渋滞緩和!? 「謎の高架橋」復活で「5車線化」のスゴさとは
くるまのニュース
フェラーリ、スキッドブロックの変更で予算にダメージ「技術指令が来たのが直前だったから……」
フェラーリ、スキッドブロックの変更で予算にダメージ「技術指令が来たのが直前だったから……」
motorsport.com 日本版
朝ドラで注目の【平成文化】バブル崩壊後におきた「RVブーム」で 1994年に登場した“記憶に残る日本車”3選
朝ドラで注目の【平成文化】バブル崩壊後におきた「RVブーム」で 1994年に登場した“記憶に残る日本車”3選
VAGUE
タクシーが儲かるかどうかは「アプリ加盟」が鍵! 年収900万円もあり得るイマドキのタクシードライバー事情
タクシーが儲かるかどうかは「アプリ加盟」が鍵! 年収900万円もあり得るイマドキのタクシードライバー事情
WEB CARTOP
“アルファードミニ!?” スズキ「新型ワゴン」1月発売? デザイン大幅刷新! 「ソリオ」何が変わる? 既に先行パンフ配布! ユーザーの声は
“アルファードミニ!?” スズキ「新型ワゴン」1月発売? デザイン大幅刷新! 「ソリオ」何が変わる? 既に先行パンフ配布! ユーザーの声は
くるまのニュース
インドならではの色彩美!? ロイヤルエンフィールド新型モデル「GoanClassic350」発表
インドならではの色彩美!? ロイヤルエンフィールド新型モデル「GoanClassic350」発表
バイクのニュース
純正から卒業! オリジナル感を極めるホイール交換完全ガイド~Weeklyメンテナンス~
純正から卒業! オリジナル感を極めるホイール交換完全ガイド~Weeklyメンテナンス~
レスポンス
【後方視認性を確保する】データシステムからデジタルルームミラー「DRM6030」が発売
【後方視認性を確保する】データシステムからデジタルルームミラー「DRM6030」が発売
driver@web
ポルシェ 911 カレラT【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
ポルシェ 911 カレラT【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
Webモーターマガジン
10月SUVマーケットはトヨタ・ライズが2カ月連続首位、ヤリスクロスが2位に浮上!(24年10月の軽自動車を含むSUV車販売登録ランキングTOP20)
10月SUVマーケットはトヨタ・ライズが2カ月連続首位、ヤリスクロスが2位に浮上!(24年10月の軽自動車を含むSUV車販売登録ランキングTOP20)
カー・アンド・ドライバー
ホンダ新型「コンパクト“セダン”」発表! 顔面刷新で“超カッコイイ”「シティ」! 全長4.5m級のちょうどイイサイズ感な「新モデル」伯国に登場
ホンダ新型「コンパクト“セダン”」発表! 顔面刷新で“超カッコイイ”「シティ」! 全長4.5m級のちょうどイイサイズ感な「新モデル」伯国に登場
くるまのニュース
トヨタ「“9人乗り”ミニバン」がスゴイ! スライドドア&「カクカク」広々ボディでめちゃ便利! “2階建て”「車中泊」仕様もある「プロエース」とは
トヨタ「“9人乗り”ミニバン」がスゴイ! スライドドア&「カクカク」広々ボディでめちゃ便利! “2階建て”「車中泊」仕様もある「プロエース」とは
くるまのニュース
三菱「新型パジェロ」いつ登場!? 伝説の「3列SUV」6年ぶり復活へ? 超タフ顔で2025年デビューに期待大!
三菱「新型パジェロ」いつ登場!? 伝説の「3列SUV」6年ぶり復活へ? 超タフ顔で2025年デビューに期待大!
くるまのニュース
二人暮らしができる便利な車! トヨタ ハイエースがベースのキャンパー
二人暮らしができる便利な車! トヨタ ハイエースがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

275.0460.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.0789.0万円

中古車を検索
プリウスの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

275.0460.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.0789.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村