2023年7月26日、三菱自動車はタイ・バンコクでASEAN市場の主力車種であるピックアップトラック「新型トライトン」を正式発表した。順次各国・地域で発売され、最終的には100カ国以上(日本市場にも2024年初頭に導入予定)で年間20万台規模の販売となる、まさに三菱の屋台骨車種が登場したわけだ。今回、その新型トライトンほか5車種を生産する三菱のタイ・レムチャバン工場を取材する機会を得た。生産現場をこの目で見ると、そこには三菱自動車の「製造業としての強さ」がつまっていました。
文/ベストカーWeb編集部、写真/三菱自動車、ベストカーWeb
三菱は盤石だ!! 世界戦略拠点&ASEAN主力「タイ・レムチャバン工場」で見えた揺るぎない足場
■「レムチャバン」は世界戦略の拠点
三菱自動車の2022年の年間世界生産台数は101.9万台。このうち日本は45.3万台(岡崎21.5万台、水島23.8万台)で、タイ(レムチャバン工場)は27万台、これにインドネシア15.6万台、フィリピン4.3万台、中国2.7万台が続く。
国別で見ると日本が最多台数だが、工場別で見るとこのタイ・レムチャバン工場が最も多くの三菱車を組み立てていることになる。
タイの最南端に位置する「レムチャバン工業団地」、港に隣接したこの地域の一等地に三菱自動車の車両組み立て工場がある @Google Map
三菱自動車レムチャバン工場は、タイ南部、タイランド湾に面する「レムチャバン工業団地」に広大な敷地を持つ。第一工場は1992年に設立され、1996年に第二工場、2008年にエンジン工場、2012年に第三工場と増設されていき、現在は5375名の雇用を抱え、いまは(新旧)トライトン、アウトランダー、パジェロスポーツ、ミラージュ、アトラージュの5車種を製造する。
三菱自動車の仕向け地域別の販売比率を見ると、ASEAN地域が31%(26.2万台)で1位、中東・アフリカ・南米市場が18%(15万台)で2位、北米市場が3位で16%(13.3万台)、日本市場は4位で11%(9.2万台)となっている。三菱自動車の根幹を支えるだけでなく、ルノー・日産・三菱グループのASEAN市場における中心的存在といえる。
三菱自動車は東南アジアでものすごく固い土台と足場を持つ企業なわけだ。
また、タイ国内での年間(「販売」ではなく)「生産」台数は約27万台で、このうちタイ国内向けの販売は4.7万台/年であり、つまり22万台以上がタイから北米や中東、アフリカ、欧州、他のASEAN諸国へと輸出されている。「レムチャバン」は世界戦略拠点でもある。
工場の組み立てラインは最先端の産業用ロボットが積極的に導入され、自動化が進んでいる。溶接や鉄板加工などロボットの得意文化はロボットが担う
工場内の車両組み立てラインは産業用ロボットの導入で自動化が進んでおり、特にスポット溶接などは95%がロボット作業。人間が担う5%には「次世代に技術を残すため」という研修目的の割合が大きく、そうした「あえて」の部分を除くと97%程度まで自動化できるとのこと。
「もちろん雇用の問題もありますが、今のところロボット作業が増えたからといって人間の雇用が減ったということはありません。機械が得意なところは機械がやって、人間が得意なところは人間がやる、ということが、まだまだ進められると思います」
とは三菱自動車レムチャバン工場長の小川英児工場長。
組み立てラインには発表されたばかりの新型トライトンも流れており、レーンの幅が自動で調節されることで3種類のボディ(シングルキャブ、ダブルキャブ、クラブキャブ)を間断なく流すことができるという。
新型トライトンと旧型トライトンが混流する組み立てライン。それぞれの工程で品質管理が徹底されている
タイには三菱自動車以外にも多くのトヨタ、日産、ホンダ、スズキ、BMW、GWM(長城汽車)などが工場を持っているが、このレムチャバン工場はタイの輸出港として最大級のレムチャバン港に隣接しており、輸送船への輸送コストが格安ですむという利点を持つ。
地域との関係も大変良好で、政治リスクもいまのところまったく心配ないとのこと。
■「品質」は? 「電動化」は??
「タイ工場での生産」と聞くと、ぜひ伺いたいのが「品質」の問題。失礼は承知で、以下、工場長に直撃で聞いてみた。
「2010年に日産がマーチの日本市場販売車をタイ製に切り替え、2012年に同じく三菱がタイで組み立てたミラージュを日本に輸入するかたちで発売しました。その頃のマーチなりミラージュは、日本で組み立てたライバル車両に比べると、品質というか組み立て精度のようなものが甘く感じられて、実際に販売も苦戦しています。しかしその頃と比べると、現在のタイ製のクルマはずいぶん品質が向上しているように思えます。この品質向上の最大の理由はなんだと考えられますか」
前述の小川工場長はにこやかな笑顔を崩さず、「たしかに以前は、おっしゃるとおり品質面で不安な時期もありました。しかし今は、世界中のどの工場にも負けていない自信があります。それはもう、細かい努力の積み重ねがありますので」と答えてくれた。
安全管理を徹底したうえで、作業員の効率化と省力化が図られている。自動車の組み立て工場って「カイゼン」の集合体なのだった
国内工場との情報共有と、品質管理の徹底。
特に、組み立て精度を含む品質の向上については、以前の「最終工程で品質チェックと管理する体制」から、いわゆる「品質は工程で作り込む」という全工程での品質管理体制に切り替えたことが大きいとのこと。
実際、発表会場でじっくりチェックした新型トライトンは品質が充分以上に高く、国産車との質(たとえばエンジンルームの組み立て精度や内装のチリの合い具合)の差を見つけることは難しかった(ちなみにトヨタのハイラックス(日本仕様)もタイ製だが品質はまったく問題になっていない)。
タイの製造業のクオリティは日進月歩であり、特に日本企業の工場は(各メーカーの努力もあって)国内工場と肩を並べるレベルになっている。
もう一点、最近話題になっている「電動化」についても聞いてみた。テスラやBYD、最近だとトヨタ自動車が、バッテリーEV製造のため、従来の自動車製造工程を根本的に見直す動きを強めている。
共用部品を増やして組み立てが必要な部品点数そのものを減らし(ギガキャスト構造化)、組み立て中の車両を自走させることで作業工程や作業スペースの省力化を進める、というもの。
こうした先端モビリティ企業たちの「電動化に向けた動き」について、レムチャバン工場では何かアクションをしているのか。
「電動化については、もちろん長期的なビジョンとして対応する準備はあります。ただ今のところはまだ”話し合いを進めている”という段階ですね。この工場ではアウトランダーPHEVも組み立てていて、つまりPHEVのバッテリーを車両に装着できる設備があります。その割合を増やしていくことはできるでしょう。ここから先で、電動化がどのように進むのか、どれくらいの速度で進んでいくかは、地域によって差があるでしょうし、進み方や速度によって対応の仕方も変わると思います。この工場では当面、お客さまがいま求めているクルマを全力で作り、作れる体制を整えてゆくことが大事だと考えています」
と、前述の小川工場長は語る。
一部繰り返しになるが、ここで組み立てられる新型トライトンは、世界100カ国へ向け、年間20万台を生産してゆくことになる。
この工場では新旧トライトン、ミラージュ、パジェロスポーツ、そしてアウトランダーPHEVも生産している。世界のモビリティが変化してゆけば、それに合わせてこの工場で組み立てる製品も変わってゆくのだろう
工場取材を終えた感想としてまず最初に伝えたいのは、「ものづくり」の現場が持つ熱であった。品質管理や電動化の質問が中心となったが、この「巨大な機械を計画的に動かし、多くの雇用を生み出して、毎日毎時間、世界へ向けて販売する自動車を作り出す」という仕組みが経済を回す。これこそが自動車という製品の醍醐味なんだな…と感じました。
時代の要請に従って先進国においてはモビリティの電動化が進んでゆくとして、こうした「優秀な品質を担保する製造ライン」は(かたちは変わってゆくかもしれないけれど)5年、10年は軽く残ってゆくだろうし、つながってゆくだろうとも思います。
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買うか買わないか決まるぐらい気になります。