ゼネラル・モーターズ(GM)の傘下ブランドであるキャデラックが2026年からF1に新規参戦を行なうことが正式に公表されて1ヵ月半が経過したが、彼らはただ手をこまねいているわけではない。
2025年の1月1日からキャデラックF1のエグゼクティブ・エンジニアリング・コンサルタントとしてイギリス・シルバーストンの施設で指揮を採るパット・シモンズは、改めてその時間的猶予の少なさを強調した。
■F1新規参戦叶ったキャデラック、拒否されたアンドレッティ。実態はほぼ同じ……違いはどこにあったのか?
「2026年のF1世界選手権に参戦するため、キャデラックで正式に新しい役割を担うことになった」
F1エンジニアとして長いキャリアを築き、2024年まではFIAのテクニカルディレクターとして2026年のF1次世代レギュレーション策定にも携わったシモンズは、そう語った。
「冬季テストが(前回パワーユニット規則が刷新された)2014年と同じ形で行なわれるとすれば、マシンが走るまで400日を切っている……エキサイティングな挑戦だ」
元々GM/キャデラックは、F1新規参戦を目指すアンドレッティ・グローバルのパートナーとしてF1プロジェクトに関与していた。ただ、そのプロジェクトはFIAの承認こそ受けることができたものの、F1の商業権を司るフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)から拒否された。
それでもアンドレッティ・グローバルはシルバーストンの施設も含めプロジェクトを進めてきた。一時は暗礁に乗り上げたものの、マイケル・アンドレッティが組織のオーナーから退き、その運営を引き継いだダン・トウリスが経営するTWGグローバルがGMと協力し、キャデラックブランドとして2026年からF1に参戦することが叶った。
キャデラックF1は参戦当初の2シーズンこそフェラーリからカスタマーパワーユニット(PU)供給を受けるものの、2028年からは独自PUを開発しフルワークスとしてグリッドに並ぶこととなる。
コンサルタントとしてキャデラックF1に関わるシモンズは、メーカーが蓄積するノウハウの多さを指摘した上で、チームが待ち構える課題は非常に大きいと語った。
「GMにはモータースポーツにおける長い歴史があり、私は子どもの頃、(1967年の)ブランズハッチ1000kmでシャパラル2Fが優勝する姿を見たのを覚えている」とシモンズは言う。
「シャパラルの立役者であるジム・ホールは、このプログラムに対するGMの貢献を常に認めてきた。最近では、GMはシボレーとキャデラックのブランドを通して、インディカーのエンジンメーカーとしてだけでなく、耐久レースでも競争力を発揮している。ル・マンからタラデガまで、耐久レースからストックカーまで、勝ち方を知っている」
「同時に、F1がモータースポーツ最高峰であり続けるという事実を前に、彼らは必要とされる革新性と卓越性への要求、他の選手権で享受してきた成功を再現できるチームを構築するために必要なことを、十分に尊重している」
キャデラックF1では、元マルシャF1のグレアム・ロードンがチーム代表を務める。またここ数ヵ月では、テクニカルディレクターにニック・チェスターが、オペレーションディレクターにロブ・ホワイトが、空力部門にジョン・トムリンソンが加わるなど、経験豊富な人材を揃えてきた。
「F1マシンを製造するのは大変なことだが、既に十分なほど文書化されている」とシモンズは言う。
「タイムスケールやマイルストーンは既に確立されていて、チームには長い間マシンを設計し開発してきた経験豊富なスタッフが多く存在する。彼らに併せて、F1で求められる厳しい納期と妥協ができない品質に対応するため、必要なプロセスも整備されている」
「同時に、このプロジェクトを支えるためのインフラをシルバーストンの拠点に整備している。白紙からのスタートは、困難よりもチャンスの方が遥かに多いという格言もある」
「チームは最高のエンジニアリング水準に基づいて作られるだけでなく、環境・社会・ガバナンス(ESG)の投資基準も適用され、F1で働く上で最高のチームになるよう努力する」
キャデラックはその他にも切実なドライバー問題を抱え、2025年に突入した時点では2席とも空席となっている。
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