販売合戦のため自社登録が横行して大きな問題になっていたが、現在、人気モデルの自社登録車はどうなっているのか? これは中古マーケットに大きな影響を及ぼす問題で、クルマを買うユーザーサイドからは見逃せないポイントだ。
中古車のスペシャリスト、萩原文博氏が未使用車ではないがそれに近い中古車を購入した自らの経験を交えながら、自社登録によって生まれる未使用車、新古車を買うメリットとデメリットについて考察する。
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文:萩原文博/写真:SUZUKI、DAIHATSU、HONDA、NISSAN、TOYOTA
登録(届出)済未使用車とは?
以前、スズキとダイハツが軽自動車の新車販売台数No.1の称号を獲得するため、激しい販売競争が繰り広げられていた時期があった。その競争によって大量に発生したものを、鈴木修会長が「行儀の悪いこと」と語ったことがある、それが今回のテーマ、自社登録車だ。
自社登録車は「新古車」や「未使用車」と言われて新車なのか、中古車なのわかりづらいというユーザーの声を受けて、自動車公正取引協議会の指導により、広告で掲載する場合は「登録(軽自動車は届出)済未使用車」という表示するルールとなっているのだ。
昔から自社登録はあるが、2014年にダイハツとスズキが軽自動車販売ナンバーワンの座をかけて自社登録が激増し問題化。両メーカーのシェア合計が70%を超えた
ダイハツはムーヴ、写真のタントの自社登録を増強してスズキに対抗。2014年から引き続き2015年3月も激しい争いが繰り広げられた末にダイハツがトップ死守
したがって、ここでは未使用車や新古車という言葉は使用しない(タイトルと矛盾するが……)。
そもそも「登録(届出)済未使用車」とは何かというと、初度登録(届出)された車両で、 使用または運行に供されていない車両となっており、正真正銘の中古車なのだ。ただ、走行距離が非常に少なく、コンディションは限りなく新車に近いクルマということになる。
この「登録(届出)済未使用車」にはメリットとデメリットがあるので紹介しよう。
登録(届出)済未使用車は安いが制約もある
まずはメリットから。
この「登録(届出)済未使用車」の最大のメリットは走行距離が少なく、高コンディションながら新車と比べて価格が安いことにつきる。しかも人気のオプションが装着されていることもあり、その場合数十万円も安いということもある。
筆者は実際過去に未使用車ではないが、試乗車だった走行距離の少ない、V35型の日産スカイラインクーペを購入したことがあり、そのクルマは新車で購入した場合の総支払額より100万円以上お得に手に入れることができた。
萩原氏はV35スカイラインクーペの試乗車を購入したというが、スポーツ系、スペシャルティクーペなどで未使用車、試乗車が出てくるのは珍しいケース
しかし、「登録(届出)済未使用車」はメリットだけでなく、デメリットもあることを覚えておきたい。
デメリットとしてまず、挙げたいのが新車に比べて車検期間が短いということだ。新車購入してから登録となるので、最初の車検まで丸3年となるが、「登録(届出)済未使用車」の場合、すでに登録されているので、車検期間は短くなる。
筆者が購入したスカイラインクーペも登録から半年後に中古車として市場に出回ったため、残車検期間は約2年だった。
続いてはグレードの選択幅が少ないということ。多くの車種は売れ筋グレードもしくはエントリーグレードを大量に製造するため、登録(届出)済未使用車」はグレードそして駆動方式の選択肢が少ないことが挙げられる。
また、ボディカラーの選択肢も限られる。定番カラーの白(パール)、黒、シルバーそしてカタログに使用されるイメージカラーはそれなりに台数があるが、珍しいボディカラーは流通していないことが多い。
エクストレイルのブルー系ボディカラーは珍しく、 登録(届出)済未使用車 では出てこない可能性が高い。価格を優先すれば妥協点も増えてしまう
そして最後はメーカーオプションが装着できないことだ。ナビゲーションなどはディーラーオプションなので、後付けできるがサンルーフや本革シート、先進安全装備などは後付けできないため、装着した物件を探すことになるのだ。
すなわち、「登録(届出)済未使用車」は価格の安さというメリットはあるが、ユーザー自身の好みの車種、グレード、ボディカラー、装備のクルマが見つかるかどうかという難しさがあるのだ。
その結果クルマへのこだわりが強いマニアックなクルマは少なく、こだわりが少なく、販売台数の多い軽自動車などに多く「登録(届出)済未使用車」が存在するのだ。
カーナビのようにディーラーオプションにも設定されているものはいつでも装着できるが、本革シートなどのメーカーオプション品は後付けできない
人気軽自動車は自社登録車も多い!
それでは、ここからは現在販売台数の多い車種にどれくらい「登録(届出)済未使用車」が占めているのかを紹介したい。今回検索した条件は全ての車種共通で、2019年式、走行距離500km以下、修復歴なしとした。
軽自動車でナンバーワン人気のN-BOXは大量の 登録(届出)済未使用車 が出回っている。人気の高いボディカラーが希望なら掘り出し物が見つかる可能性は高い
まずは、軽自動車の帝王ことホンダN-BOX。先ほどの条件で中古車を検索すると、何と約1025台がヒットした。
その中で最も多いのが約300台でカスタムG Lホンダセンシング。次いで、約260台でG Lホンダセンシングとカスタム、標準車ともに自然吸気エンジンを搭載した売れ筋グレードが上位を占めた。
そして最も多いカスタムG Lホンダセンシングの価格帯は約148.8万~約198.8万円となっており、やはり割安感は高い。ボディカラーは人気色の白(パール)、黒が中心となっている。
スペーシアの販売が好調だが、それに連動するように自社登録車も増大中。2018年に登場したばかりのスペーシアギアも出回っているので要チェック
続いて紹介するのは、2017年12月に登場したスズキスペーシアを検索してみると、N-BOXを上回る約1110台がヒットした。最も多いグレードは標準車の上級グレードハイブリッドXで、次いで、カスタムハイブリッドXSとなった。
そして昨年登場したばかりのスペーシアギアXZターボも100台流通している。最も多いハイブリッドXの価格帯は約120万~約165万円。イメージカラーの薄いグリーンを中心にオプション色のパールが多いのが特徴だ。
また、ダイハツムーヴキャンバスも「登録(届出)済未使用車」が約545台と多くなっており、特別仕様車のXメイクアップリミテッドIIIやGメイクアップリミテッドSAIIIなど装備の充実したグレードが多くなっている。
個性的なツートンカラーを数多くラインナップしているムーヴキャンパスは装備の充実した登録(届出)済未使用車 が増大中の注目モデルだ
続いては登録車を見てみよう。8月1日にマイナーチェンジを行ったばかりの売れ筋ミニバン、日産セレナの「登録(届出)済未使用車」は約550台も流通している。
ただ流通しているグレードは人気のe-Powerではなく、ガソリン車が中心。最も多いのが特別仕様車の2.0ハイウェイスター VセレクションIIで約87.7%を占めている。
価格は約209~約310万円となっており、プロパイロット装着車ならば、購入後の満足度は相当高くなるはずだ。
セレナの 登録(届出)済未使用車 はガソリン車が中心でe-Powerは少ないが、プロパイロット装着車もあるため掘り出し物に巡り合える可能性は充分ある
最後はマイナーチェンジを行い、新車販売台数トップに返り咲いたトヨタプリウス。2019年式なので、すべてマイナーチェンジ後のモデルとなるが、すでに約100台の「登録(届出)済未使用車」が流通している。
グレードはベーシックな1.8Sが最も多く、1.8Sツーリングそして1.8Aが続く。最も流通台数が多い1.8Sの価格帯は約219.8万~約264.8万円となっており、満足できる価格となっている。
高年式、高コンディションの「登録(届出)済未使用車」は確かに割安な価格が魅力である。しかし、グレードやボディカラーの選択肢が少なくなるうえ、車検期間が短くなることを覚えておいてほしい。
フロントマスクをおとなしくしたマイチェン後の2019年モデルの 登録(届出)済未使用車は買い得感の高い価格設定も多いのでグレードを選ばなければお得
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