5シリーズはBMWの屋台骨であった
1972年に登場したBMW初代「5シリーズ」(E12型)。第二次世界大戦後のBMWを躍進させたノイエクラッセ(新クラスの意味、現在でいうと小型中型の車格でヒットしたモデル)の後継として登場した5シリーズは、フランス生まれのカー・デザインの巨匠であるポール・ブラック(メルセデス・ベンツ[W100や114など]や後にプジョー[406や206など]にも在籍)の手によるスタイリングに、直4と直6エンジンを搭載したミドルクラスのサルーン。
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日本でも発売され、当初は「2002」などと同じツインキャブだったが、モデルライフ途中でインジェクション仕様となり、三桁の数字のあとに、現在も続く「i」が付けられている。SUVが増えた今でもBMWの基幹となるモデルである。
ニキ・ラウダも乗ったアルピナ
ここで簡単にアルピナについて触れると、1962年に父親が創った事務機器メーカーであるアルピナで、息子であるブルカルト・ボーフェンジーペンが新しいBMW 1500用のウェーバー・ツイン・キャブレターの開発に取り掛かり、1964年に発表したことが始まり。
これが評判となり、早くもアルピナがチューニングしたエンジンを搭載したBMW車は、BMW社の車両保証が受けられることとなる。
そして1965年に現在の自動車のアルピナが会社として設立され、BMWと蜜月な時代を築くことになるのである。つまりアルピナとは父親の事務機器会社が基であり、現在の社名はアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン有限&合資会社となっている。
そんなアルピナはレースにも積極的に参戦。各モデルがニキ・ラウダなどのドライビングで欧州各地のタイトルを獲得したことからさらにBMWの信頼を得て、「3.0CS」の軽量バージョン、「3.0CSL」の開発に携わり、やはりタイトルを獲得(このCSLで使われたホイールが、現在のアルピナ・クラシックの原型となっている)。
そしてそのころに作られたモデルが今回紹介する「B2」(E12型)である。
ビジネスエクスプレスの1台
開発はBMWから促されたと言われており、当時5シリーズの最大排気量が3.0L(175ps)なのに対して、同じ3.0Lの直6(ライト・シックスを搭載)ながら最高出力230psを発揮して、驚くべき高性能として羨望のクルマとなるのである。
その性能は0−100km/h加速が3.2秒、最高速度は230km/hをマーク。それはまさにアウトバーンの国ではビジネス・エクスプレスであり、BMWだけどBMWではないアルピナの地位を確固たるものにした。なお、これに触発されたのか、欧州ではモデル末期に「M535i」という、「M5」のご先祖様的なモデルが発売されている。
そしてこのB2そして「B6」(E21型3シリーズがベース)、「B7ターボ」(E12型5シリーズがベース:ともに1978年発表)の成功が、現在も年間2000台にも満たない販売台数のアルピナを独立した自動車メーカーとしてまで到達させるのだ(メーカーとして認定されるのは1983年)。
そして初期のアルピナモデルの数字はBMWの3シリーズとか5シリーズとリンクしておらず、3シリーズが「B5」や「C1」を名乗ったかと思えば、5シリーズが「B6」や「B9」を名乗るなど、少々解り難かったが、現在は解消されて分かりやすくなっている。
アルピナブランドが注目されるのはこれから
さて、2023年2月1日開催されたサザビーズ主催のオークションで、11万8000ユーロ(邦貨換算約1670万円)で落札されたアルピナB2は、1976年2月に登録された個体。1990年までは同じ所有者が維持しており、その後複数のオーナーを経て一度は忘れられそうになったが、2014年までに大がかりなレストアが施されて、ボディやエンジンはもちろん、ギアボックスやサスペンション等まで新車のようなコンディションに戻された。さらに当時の書類も残っているという、復活を遂げた1台だ。
落札価格を見て、意外と格安なのでは? と思うのは筆者だけではないだろう。アルピナのブランドがBMWに譲渡されることが確定になり今後の情勢は解らないが、半世紀にもわたって支持されたブランド力は昔のクルマがあってこそ。このB2は、今後も輝き続けるだろうアルピナの歴史の証人にほかならない。
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みんなのコメント
恐ろしく洗練されたワークスチューンの車って印象。
クルマは200万だが、実際そんなもんだろう
最近の日本中古相場がおかしいだけで