トヨタのコンパクトSUV「C-HR」に、あらためて小川フミオが試乗した。登場から5年を経た今、実力は?
トヨタの自信作
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トヨタ「C-HR」は、クルマの運転が好きなひとなら、今でもけっこう楽しめるモデルだ。2016年に発表されたので、足かけ5年目。最新のニュースは2020年8月にプリクラッシュセーフティ装備を充実させたこと。ふわりとした乗り味は、独自のキャラクターとして健在だ。5年たった今でも色褪せていない。
C-HRが登場したとき、すっきりした操縦性で強く印象に残ったのをいまでもおぼえている。「驚くほど“まっすぐ走る”トヨタ車が出来ました」なんて開発者が言ったりして。このクルマの完成度への自信をあらわした言葉であると受け取った。
GA-Cプラットフォームというものを使っていて、トヨタでは「ヤリス・クロス」や「アクア」、「カローラ・クロス」、レクサスではコンパクトSUVの「UX」と共用だ。2640mmのホイールベースのシャシーに全長4385mmのボディを載せている。大きすぎず、日本でちょうどいいサイズだ。
今回乗ったのは、1797cc直列4気筒ガソリン・エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドの前輪駆動仕様だ。高速ではもうちょっと力が欲しいなぁと思う場面もあったが、市街地では発進から終始スムーズで気持ちよい。サイズからして、市街地で乗る人が多いと思うから、パワーユニットへの不満はあまりないだろう。
燃費の良さはさすがだ。ストップ&ゴーの多い都心部の一般道を20kmちょっと走ったときの燃費は、リッターあたり約21.3km/Lだった。
ちなみに、WLTCモード燃費は25.8km/Lだ。エンジンとモーターの緻密な制御による賜物である。
個性的な乗り味
C-HRの最大の特徴であると思ったのが、乗り味だ。足まわりの設定が、大胆、というか、個性的である。“ふわりふわり”というかんじでソフト。最新のカローラ・クロスの乗り味をすぐに連想してしまった。
カローラ・クロスと異なるのは、C-HRはカーブを曲がるとき、ノーズ(クルマの前部)の外側が予想以上に沈みこむ点だ。カローラ・クロスは足がふんばって、いってみればスポーティなコーナリングを体験させてくれるいっぽう、C-HRはサスペンションストロークが長めのクロスカントリー型SUVを思わせるロール制御だった。
ひさしぶりに乗ったこともあり、乗り出したときは”おっとっと”と思った。でも、クロカンSUVであることを思い起こしてからは、コーナーでは(いつも以上に)適切なタイミングで操舵することを心がけるようにした。ステアリング・ホイール操作が遅れてしまうと、きれいなコーナリングラインがとりにくい。
これが悪いというのではない。きれいなコーナリングラインをとろうとか、ほかの乗員のひとたちに不快な横揺れを感じさせないようにとか、心して操縦するのが、楽しみになってくるはず。自分のクルマとして日常的に接していれば、すぐ慣れる操舵感でもあるし。
これに似た乗り心地ってあったかなぁ……と、つらつら考えていたら、1980年代の、アンチロールバーをそなえていないランドローバー「レンジローバー」を思い出した。まあ、あちらはそのぶん、岩場などで信じられないぐらい”脚”が伸びて、接地性を失わなかった。なので、まあ、極端な比較をあえてすれば、ということですが。
今も新鮮!
思い起こすと、C-HRに初めて接したとき、キャラクターがしっかりあったので、“いいなぁ、自分のクルマにしたらどうだろうなぁ”と、考えたものだ。ただし障害になるのは、若々しすぎるスタイリングだった。
あいにくというか、その点は、いまもおなじ。ちょっといい歳をした、運転好きに乗ってもらいたい。でも、各所にエッジがたちまくったスタイリングは、すんなり受け入れてもらえるだろうか……好みがわかれるはず。
もっとも、(トヨタとしては)個性的すぎるスタイリングだったせいか、今見ても斬新だ。古臭さは感じない。販売開始から5年目、と、聞いて驚いたほど。てっきり、まだ2~3年目ぐらいかと思っていたのだ。
価格は、今回のハイブリッド・前輪駆動仕様で274万5000円から。ハイブリッド車に4WDの設定はない。1.2リッター・ターボ車では、前輪駆動で238万2000円から、4WDでは261万3000円から。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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