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【20世紀名車】ハートを射抜くV8プランシングホース、’97フェラーリF355ベルリネッタの華麗なる世界

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【20世紀名車】ハートを射抜くV8プランシングホース、’97フェラーリF355ベルリネッタの華麗なる世界

レーシーにして鮮烈なベストパッケージ

 フェラーリF355は、1994年5月に登場したV8フェラーリの代表モデルである。355は、それまでの348を全面的にブラッシュアップした新世代モデルだった。ラインアップは固定ルーフのベルリネッタと、タルガトップのGTS、そしてオープンのスパイダーが選べた。

【20世紀名車ギャラリー】ハートを射抜くV8プランシングホース、1997年式フェラーリF355の肖像

 注目ポイントは、たくましさを増したパワーユニットである。縦置き搭載するF129B型・V型8気筒DOHCは、1気筒当たり吸気3/排気2の5バルブ構成を持つ新世代エンジン。3495ccの排気量から380ps/8200rpm、37.0kgm/6000rpmを生み出し、マーレー製の鍛造アルミピストンや、348比で30%もの軽量化に成功したチタン製コンロッドなど、各部の作りは贅沢そのものだった。レブリミットは実に8500rpmの設定である。

 チューニングも絶妙だった。吸気側中央のインテークバルブの作動タイミングを他の2本よりやや遅らせる工夫で、シリンダー内に強烈な渦を生成、急速燃焼を狙った。そして左右バンクごとにバルブタイミングをわずかにずらし、微妙なトルクの波を作りトラクション能力を稼ぐF1マシンと同様のセッティングも与えられている。それまでのフェラーリV8と比較して格段にレーシーでトルクフルに仕上がっている背景には、フェラーリ技術陣のこだわりがあった。

 F355は、信頼性の面でも万全だった。エンジンマネージメントは初期型がモトロニック2.7、1997年秋からの後期型では同5.2を組み合わせている。市街地の渋滞走行からサーキットでのハードランまで、つねに安定した性能を発揮するタフネスぶりは355の大きな美点だった。

 ドライバーとクルマの対話性も大きく進化。パワーステアリングが初採用され、ブレーキのABS制御は緻密さが増した。電子制御ダンパーを組み込み、ベストなフットワークを選べるようになった。当初は6速MT専用だったトランスミッションは、後期型では2ペダルのF1マチックも設定。スーパースポーツの世界にフールプルーフな走りを開拓した。

 取材車は1997年のMT仕様。各部は、いつでも全開走行が楽しめる良好な状態だった。ミッドシップエンジンをアピールする「トンネルバックデザイン」は、どことなく最新の296GTBに通じる。F355は、「永遠のサラブレッド」という呼称が似合う名作である。

1997年フェラーリF355ベルリネッタ主要諸元

モデル=1997年式/フェラーリF355ベルリネッタ
全長×全幅×全高=4250×1900×1170mm
ホイールベース=2450mm
車重=1440kg
エンジン=3496cc・V8DOHC40V
エンジン最高出力=380ps/8200rpm
エンジン最大トルク=37.0kgm/6000rpm
トランスミッション=6速MT
サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン
タイヤ&ホイール=フロント:225/40ZR18/リア:265/40ZR18+アルミ
駆動方式=MR
乗車定員=2名

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みんなのコメント

5件
  • toi********
    この辺りから金持ちのおもちゃになっていったのは至極残念。
    いくら金持っててもマトモに乗れない、公道を乗る気にならないのがスーパーカーたる所以だったのに。
    やはりATと、街乗りサスセットになったのが原因か。
  • ハンフリー
    前期型は額面通り、後期型は340馬力程度だったそうだ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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