■背の高さが人気を左右する!?
トヨタのLサイズミニバン「アルファード/ヴェルファイア」(以下、アルヴェル)の販売が好調です。2019年上半期(2019年1月から6月)の登録台数は、2モデル合わせて5万6027台と、価格が割安なコンパクトカーのトヨタ「アクア」、日産「ノート」に迫る勢いです。アルヴェルの売れ筋グレードが400万円以上という価格を考えると、相当な人気車といえるでしょう。
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Lサイズミニバンは注目度の高いカテゴリーですが、すべてのモデルがアルヴェルのように数多く売れるわけではありません。ホンダ「オデッセイ」と日産エルグランドも、アルヴェルと同じく後席側にスライドドアを備えるLサイズミニバンですが、売れ行きは伸び悩んでいます。
オデッセイの2019年上半期の登録台数は7887台なので、アルヴェルの合計に対して約13%、エルグランドは約4000台と、アルヴェルの約7%ほどしか売れていません。なぜここまで差が付いたのでしょうか。
複数の理由が考えられますが、まず外観の違いが挙げられます。
販売比率の高いエアロパーツを備えたグレード同士で全高の数値を比べると、アルヴェルは1935mm、エルグランドは1815mm、オデッセイは1685mmです。背が低いオデッセイと比較すると、アルヴェルは250mmも背が高くなっています。
そうなるとアルヴェルの室内高も、オデッセイを250mmくらい上まわりそうですが、実際はそこまで差が付きません。室内高はアルヴェルが1400mm、オデッセイは1325mmなので、75mmしか差がないのです。
アルヴェルの全高が1900mmを超えるのに、室内高が1400mmにとどまる理由は、オデッセイに比べると床を高く設定したからです。オデッセイは燃料タンクの形状などを工夫して、床を低く抑えて天井の位置も下げましたが、アルヴェルはそうなっていません。
機能的に考えると、必要な室内高と最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)、床面形状が確保されれば、クルマの床は低いほどメリットが生じます。床が低ければ乗り降りがしやすく、オデッセイのように必要な室内高を確保した上で、天井も低くできるからです。
そうなれば重心も下がり、走行安定性と乗り心地が向上します。ボディが軽くなって空気抵抗は減りますから、動力性能や燃費にも良い影響を与えます。
それなのにアルヴェルは床を高くし、小さなサイドステップを介して乗り降りするので、オデッセイに比べると乗降性が悪いです。重心も高く、走行安定性と乗り心地の確保も難しくなりました。トヨタはミニバンの開発能力が低いのでしょうか。
この点について、アルヴェルの開発者は次のように説明します。
「現行型のアルファードとヴェルファイアは、プラットフォームを刷新しました。従って床を低く抑えることも可能でしたが、あえて高く設定しています。理由はその方がお客様のニーズに合うからです。
アルファードやヴェルファイアのような価格の高いミニバンには、立派な外観も求められます。そこで全高を1900mm以上に設定したいと考えました。
また、シートに座ったときの見晴らし感覚も大切です。床の位置を下げたら着座位置も低くなり、見晴らしの良さは得られません。そこでプラットフォームを刷新しながら、低床設計は採用しなかったのです」
アルヴェルは、外観を立派に見せて観光バスのような視界も得るために、床や着座位置、天井を高くしたというわけです。
■立派なクルマに乗りたいというアルヴェルユーザーの心理
オデッセイは、「必要な室内高、最低地上高、床面形状が確保されれば、クルマの床は低いほど良い」というクルマ造りの合理的な考え方に基づき、低床設計を実現しました。そのために走行安定性は、アルヴェルよりも格段に優れています。
また床が低いため、3列目シートに座っても、床と座面の間隔が十分に確保されているのが特徴です。アルヴェルの3列目は、床と座面の間隔が不足気味で足を前側に投げ出す座り方になりやすいですが、オデッセイは3列目も快適。
オデッセイは、多人数乗車時の居住性が最も優れたミニバンといえますが、オデッセイの売れ行きはアルヴェルの13%です。
アルヴェルは、クルマの機能よりも「周囲を見渡せる立派なミニバンに乗りたい」という顧客の希望を満足させて、好調な売れ行きを達成しました。
最近はメーカーの考え方を色濃く反映したクルマが減っていますが、アルヴェルとオデッセイには、トヨタとホンダの特徴が明確に表現されています。
トヨタは顧客の目線で、好調に売れる商品を開発するのが得意で、ホンダは顧客に対して新しいクルマのあり方を提案する傾向が強いため、オデッセイの価値観も新鮮です。
これは両社の考え方の違いであるため、アルヴェルは好調に売れていますが、それによってオデッセイの価値が下がることはありません。オデッセイにはアルヴェルでは得られないメリットがあるからです。
そういう意味では、エルグランドは中途半端です。全高は1815mmとアルヴェルに比べて120mm低いですが、オデッセイのような低床設計ではないので、室内高も1300mmにとどまってアルヴェルより100mm下まわります。
初代エルグランドの全高は1940mmから1955mm、2代目のエルグランドの全高は1910mmだったので、現行アルファードと同等でした。しかし、2010年に3代目にモデルチェンジした際に、全高が1815mmと10mm近く低くなったため、車内が窮屈になり外観の存在感も乏しくなりました。
現行エルグランドは、床が高く天井は低いため、3列目は床と座面の間隔が大幅に不足しています。膝が持ち上がって腰は落ち込み、ミドルサイズミニバンの日産「セレナ」の3列目よりも窮屈になりました。
荷室の床も高く、3列目を前側に倒して畳むため、荷室高が不足してセレナよりも自転車などを積みにくいです。これでは背の高いミニバンのメリットが得られません。
オデッセイは、外観の見栄えがアルヴェルに劣っても、機能では勝負できますが、エルグランドは機能でも負けてしまいます。
またエルグランドは、アルヴェルやオデッセイと違って、ハイブリッドをラインナップしていないのも痛手です。
販売体制の違いも、アルヴェル人気に拍車をかけています。アルファードを扱うトヨペット店は、もともと法人営業が強く、社用車として使うニーズもあります。トヨペット店の販売スタッフは「政治家や企業のトップがアルファードを使っている様子が報道され、法人のお客様の人気をさらに高めました」といいます。
法人ユーザーの多いアルファードは、以前はフロントマスクがヴェルファイアに比べて大人しい印象でした。現行アルファードは派手なデザインに変更して、売れ行きを伸ばしています。
アルファードを扱うトヨペット店が1000店舗、ヴェルファイアのネッツトヨタ店は1600店舗で、店舗数が少なくても、いまはアルファードの方が売れています。
このほかトヨタにはクラウンやマークXといった上級セダンが多く、そこから乗り替えるユーザーが増えたことも、とくにアルファードが売れ行きを伸ばした要因といえます。
なお、トヨタのミドルサイズミニバン「ヴォクシー」「ノア」「エスクァイア」は、アルヴェルとは違って低床設計です。
全高を1825mmに抑えながら、室内高はアルヴェルと同じ1400mmを確保。乗降性が優れ、空間効率が高いために、ボディはミドルサイズでも3列目シートは意外と快適です。
ラグジュアリー指向のアルヴェルと実用重視のヴォクシー、ノア、エスクァイアとで、クルマ造りの手法を大きく変えているところもトヨタの商売上手なところでしょう。
アルヴェルの人気はこれからも続くでしょう。外観は豪華で立派ですから、それに相応しい優しい運転を心がけてほしいと思います。
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