現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 990S 人気の今、あらためて考える。「ロードスターRF」はロードスターの脇役なのか 【ロードスターRF試乗記】

ここから本文です

990S 人気の今、あらためて考える。「ロードスターRF」はロードスターの脇役なのか 【ロードスターRF試乗記】

掲載 16
990S 人気の今、あらためて考える。「ロードスターRF」はロードスターの脇役なのか 【ロードスターRF試乗記】

エレガントなクーペフォルムが美しい

2015年5月に発表された現行4代目FDロードスターに遅れること1年半、「RF」は、翌2016年11月に追加された。もともと筆者は「クーペ」とか「大人の~」的なものに弱く、マシーングレー(=ガンメタリック)の渋さも気に入った。あれからすでに5年半、RFに触れるのは久しぶりだ。借り出した試乗車は、RSの6速MT車。スポーツグレードのRSにはMTしかラインナップがなく、車両価格は3,977,600円である。発売当初の3,736,800円から24万円程度上がっている。

マツダ・ロードスター990S 軽さは正義。カンペキなスポーツカー

現行FDロードスターは四世代目で、2015年5月に登場した。FDロードスターは、ボディサイズもコンパクトで、排気量も1.8Lから1.5Lへと小さくなり、ロードスター本来の軽快感、ライトウエイトスポーツらしさを徹底的に突き詰めたことでロングヒットにつながった。1.5Lへの排気量ダウンを選択してまで、ボディの肥大化やパワーアップを路線を避けたわけだ。参考までに北米向けの「MX-5」は“さすがに1.5Lでは”、ということで発売当初より2.0Lを積んでいた。国内向けロードスターの1.5Lには、少なからずパワー不足を懸念する声が上がったのも事実である。

そして、その後に追加された「RF」は、ロードスターとは差別化されて、日本向けにも2.0Lエンジンが積まれた。開閉式のハードトップと2.0Lエンジン。このふたつがロードスターとの最大の違いである。RFとは「リトラクタブル・ファストバック」を意味する。ハードトップであっても、何よりも「ロードスターらしさ」を守り抜くことを最優先して開発、デザインされた。つまり、余計な重さも、美しさを損なうような造形も排除されてデザイン、設計されたということだ。結果、ソフトトップと比べて約45kg増に抑えた電動開閉ハードトップを開発し、クーペとしてのスタイリングとオープンエアの爽快感を見事に両立したのである。

三代目ロードスターに追加されたロードスターRHT(パワーリトラクタブルハードトップ)。ロードスターに初めて追加された電動開閉式ハードトップであり、ロードスターファンの間口を広げるきっかけになった。ロードスターRFの電動ルーフ機構の完成度の高さには、RHTの経験が存分に生かされたと思われる。クラシカルで落ち着くインテリア

RFに、乗り込んでみる。低くタイトなポジションは想定どおり。ロードスターならではの特徴はといえば、どこかクラシカルな雰囲気や、落ち着きが感じられるところだろう。意匠が古臭いというわけではないのに、スッと馴染んで気持ちが安らぐ。ウエストライン(サイドウインドウ下端の位置)も高過ぎない。囲まれ感と開放感のバランスが秀逸。上半身を少し外気に晒して座る感じのポジションがロードスター流だ。

RSの6MTは、ストロークが短くてコクコクと入りやすく、シフトをいじっているだけで笑顔になる。レザー貼り、ゴルフボール状の形状だけでなく、サイドブレーキレバーやステアリングに非常に近い位置にあって、ついついシフトノブに手がいってしまう。GR86/BRZもシビックもMTは気持ち良いが、個人的にもっともMTが似合うのはやはりロードスターかなという印象がある。RFは、ATとのマッチングも良いし、大人のクーペとしてはATが良く似合う。ただ、たとえそうだとしても、RFの「スポーツカーの部分」では、MTも楽しまないともったいないな、そんな感じだ。

触り心地の良いシフトノブ。シフト、サイドブレーキ、ステアリングが極めて近い。RFのルーフ開閉時間は、全自動でわずか13秒。あまりに速いので調子に乗って、信号待ちの途中から開閉を試みて、青信号に間に合わないこともあった。オープンカーの中には50km/hでも開閉できるクルマがあるが、RFは5km/h程度まで速度が上がると作動がストップする。高速道路でのオープン走行は、100km/hプラスアルファ程度の速度では、アタマの先を風がやや撫でていく感じ。高速でのオープン巡航も平穏で快適だが、これ以上の速度域や、長距離巡航の場合は風切り音で疲れてしまうから、途中で閉めた方がいいだろう。運転中、ヨコを向けばBピラーが視界に入るから、開放感は「ロードスター」とイコールではない。ただ、真正面を向いている限り、視界は「ロードスター」とまったく一緒だ。

RFの開閉機構も「RF」だけの特典だ。Cピラーが持ち上がり、ルーフトップとリヤウインドウが3分割されながらシート後方に格納され、持ち上がったピラーが定位置に戻る。ここまでわずか13秒。狭いスペースに収まるギヤやリンク機構の作動状態を見ているだけで、オーナーなら何度でもニヤリとしてしまうはずだ。

開閉スイッチを操作すると、まずは、格納するルーフを覆うカバーの部分が持ち上がる。左右B、Cピラーやクオーターウインドウをブリッジのように繋ぐ大きなパーツだ。リヤウインドウは持ち上がらず、ボディ側に残る。▶︎ルーフが2分割で折れ曲がる。短いルーフパネルは、リヤウインドウの外側(後ろ側)に重なるようにスライドしていく。▶︎リンクによりメインルーフと向かい合わせに3枚が重なって収納される。ルーフカバー部分が元の位置に戻り、終了。ここまで13秒だ。芸術的なルーフ開閉動作を動画でも見てみよう。

1.5Lでも不満はないが、2.0Lの速さは邪魔にならない

ロードスターには21年12月の商品改良でKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)が装着されている。旋回中にリヤ内輪にわずかな制動を掛けて浮き上がりを防ぐ機能だ。「KPCの効果は、(幌の)ロードスターや、とくに990Sなどよりも、やや重めでパワーもあるRFの方が違いが分かりやすいですよ」とクルマを借りる際にレクチャーを受け、ワインディングを楽しみにしていたのだが‥‥、芦ノ湖スカイラインに到着すると、急な雨と濃霧で前が見えない! KPCの有る無しを試すようなことも、残念ながら出来なかった。

ただし、手前の一般道までは、雨に見舞われずに済んだ。有料道路と同じペースでは走れないけれど、それでも自然にペースは上がる。この小ささがいい。この軽さがいい。エンジンが速過ぎないのもいい。タイトな山道をリズミカルに駆け抜けていく瞬間がロードスター(RF含め)のハイライトなのは間違いないということを思い出した。屋根は閉じているほうが、運転に集中できる。GR86や新型BRZと比べても、車体は小さく、軽く、なおかつ速すぎない。狭い道でも、ロードスターならではの利点は、それほど高くない速度域でも、運転行為自体を、肩の力を抜いて存分に楽しめるところだろう。

ロードスターRFの2.0Lエンジンは、135kW[184ps]/7000rpm 205Nm[20.9kgm]/4000rpmというスペック。RFデビュー当初の116kW[158ps]/6000rpm 200Nm[20.4kgm]/4600rpmから比べると、出力がかなり上乗せされ、上まで回るようになるとともに、最大トルク発生回転数が下げられている。エンジンスペックロードスター   直列4気筒DOHC 1.5L  97kW[132ps]/7000rpm 152Nm[15.5kgm]/4500rpmロードスターRF 直列4気筒DOHC 2.0L  135kW[184ps]/7000rpm 205Nm[20.9kgm]/4000rpm

RFは、ロードスターそのものである

もともとは、クーペ好きが高じてRFのファンになった。しゃかりきに攻めるというより、屋根を閉じたときのクーペとしてのエレガントさや、余裕の2.0L+ATでゆっくり流す、という使い方に憧れた。もちろんそうした使い方も、ロードスターとは違ったRFならではの楽しみ方だろう。

でも、箱根のワインディングに足を踏み入れたときのRF RSは、エレガントなクーペの顔ではなく、ピュアスポーツカーそのものだった。クローズドのクーペボディも2.0Lエンジンも、実際の走りに効く。そもそもロードスターは、速くなくても楽しいクルマだから、1.5Lでも文句はない。ただその一方で、「速さ」も、スポーツカーの楽しさの一要素であることは疑いない。コーナー出口や立ち上がりで2.0Lの太いトルクが邪魔になるはずもない。そのトルクは、ターボでもモーターでもなくて、NAエンジンのそれなのだ。中速域でも、アクセルをボン、ポンと煽ると、ピックアップ良く反応して気持ち良い。アクセルで姿勢をつくる、なんてこともやりやすいんではないかな。

残念ながら、箱根取材は雨に祟られた。スポーツとエレガンスの妥協なき両立こそ、ロードスターRFの真骨頂だ。「パワーはあるけれど、RFは重いでしょ。重心も高いでしょ」という意見もあるだろう。それは、その通り。幌のロードスターには、パワーが小さくても、より軽快で開放感に満ちた魅力がある。でも、それはあくまで「ロードスター」と「RF」を比べればという話。RFは、それ単体で乗ったときに、十分に軽くて軽快で、ピックアップの良いNAエンジンを積んだ、生粋のピュアスポーツカーだ。RFも、あくまでもロードスターなのである。ロードスターの魅力に加えて、エレガントなクーペフォルムや気軽なオープンエアドライブも楽しめる。ガンメタリックのハードトップボディは目立たず、悪戯の心配も少ない。ピュアスポーツとエレガントなクーペ&オープンを全部持つ贅沢な一台で、なおかつどの部分にも一切の妥協がない。果たしてこれでもRFは脇役だと言えるだろうか。

とくにリヤから見たときのエレガントなフォルムとは別の、カフェレーサーのような「スポーツカー」の表情もRFの魅力のひとつ。BBSとレッドキャリパーがさらに雰囲気を盛り上げる。ラゲッジの開口部は広くないが、たとえばアルピーヌA110などに比べても、断然深さがあって実用的。ハードルーフを収めるにあたって、ラゲッジ容量は犠牲になっていない。一方、室内の物入れは皆無に近い。シート間後方の収納ボックスは、500mlボトルが何本か入る容量でとても助かる。マツダ ロードスターRF RS全長×全幅×全高 3915mm×1735mm×1245mmホイールベース 2310mm最小回転半径 4.7m車両重量 1100kg駆動方式 後輪駆動サスペンション F:ダブルウイッシュボーン R:マルチリンクタイヤ 205/45R17エンジン 水冷直列4気筒DOHC16バルブ総排気量 1997ccトランスミッション 6速MT最高出力 135kW(184ps)/7000rpm最大トルク 205Nm(20.9kgm)/4000rpm燃費消費率(WLTC) 15.8km/l価格 3,977,600円

こんな記事も読まれています

円急落、38年ぶり一時160円台後半、自動車株は全面安[新聞ウォッチ]
円急落、38年ぶり一時160円台後半、自動車株は全面安[新聞ウォッチ]
レスポンス
夏のカーエアコンで燃費が悪化! 「25度設定」が良い理由は? 押すと燃費が悪くなる“意外なスイッチ”とは?
夏のカーエアコンで燃費が悪化! 「25度設定」が良い理由は? 押すと燃費が悪くなる“意外なスイッチ”とは?
くるまのニュース
バイクのウインカーの謎! クルマみたいに自動で戻らないのはなぜ?
バイクのウインカーの謎! クルマみたいに自動で戻らないのはなぜ?
バイクのニュース
BYD『シール』、欧州ではEVモード80kmの電動SUV設定 9月発売
BYD『シール』、欧州ではEVモード80kmの電動SUV設定 9月発売
レスポンス
日々の暮らしに笑顔をもたらすニューモデル!ホンダ、三代目「フリード」を「エアー」と「クロスター」の2シリーズ構成で発売
日々の暮らしに笑顔をもたらすニューモデル!ホンダ、三代目「フリード」を「エアー」と「クロスター」の2シリーズ構成で発売
LE VOLANT CARSMEET WEB
フェルスタッペン、2025年のレッドブル残留を明言「すでに来年のマシン開発にも取り組んでいる」
フェルスタッペン、2025年のレッドブル残留を明言「すでに来年のマシン開発にも取り組んでいる」
motorsport.com 日本版
ヤマハとJAF、電動ゴルフカートで「移動支援」と「地域活性化」へ 広がる低速モビリティの輪
ヤマハとJAF、電動ゴルフカートで「移動支援」と「地域活性化」へ 広がる低速モビリティの輪
レスポンス
【セミナー見逃し配信】※プレミアム会員限定「池田直渡の着眼大局セミナー」第4回 ティアフォーにおける自動運転事業と開発の現場
【セミナー見逃し配信】※プレミアム会員限定「池田直渡の着眼大局セミナー」第4回 ティアフォーにおける自動運転事業と開発の現場
レスポンス
日本を代表するハーレー・エンジニアと所ジョージさん 2人の深い関係を示す1台のカスタムバイク
日本を代表するハーレー・エンジニアと所ジョージさん 2人の深い関係を示す1台のカスタムバイク
バイクのニュース
5速MT搭載! 三菱が新型「軽トラック」を発表! ワイルドな「角張りボディ」採用した商用モデル「新型ミニキャブ」に反響続々!
5速MT搭載! 三菱が新型「軽トラック」を発表! ワイルドな「角張りボディ」採用した商用モデル「新型ミニキャブ」に反響続々!
くるまのニュース
【人とくるまのテクノロジー展2024 NAGOYA】過去最高の389社が出展して開催 7月17-19日
【人とくるまのテクノロジー展2024 NAGOYA】過去最高の389社が出展して開催 7月17-19日
レスポンス
BYDの日本導入モデル第3弾で、“e-スポーツセダン”を謳う「シール(SEAL)」が発売
BYDの日本導入モデル第3弾で、“e-スポーツセダン”を謳う「シール(SEAL)」が発売
カー・アンド・ドライバー
ホンダ、新型フリード発売 8年ぶりフルモデルチェンジ 6グレード展開で価格は250~343万円
ホンダ、新型フリード発売 8年ぶりフルモデルチェンジ 6グレード展開で価格は250~343万円
日刊自動車新聞
スバルBRZを含め人気モデルがどんどん市場から消えていく・・・ スバルBRZの特別仕様車「ファイナルエディション」登場!
スバルBRZを含め人気モデルがどんどん市場から消えていく・・・ スバルBRZの特別仕様車「ファイナルエディション」登場!
AutoBild Japan
F1参戦250戦目。RBダニエル・リカルド、F1オーストリアGPに特別ヘルメットで挑む「状況を好転させたい」
F1参戦250戦目。RBダニエル・リカルド、F1オーストリアGPに特別ヘルメットで挑む「状況を好転させたい」
motorsport.com 日本版
福岡の大動脈「八木山バイパス」有料化へ秒読み!? 4車線化工事がNEXCOへ移管 2024年度中に「普通車280円」徴収開始へ
福岡の大動脈「八木山バイパス」有料化へ秒読み!? 4車線化工事がNEXCOへ移管 2024年度中に「普通車280円」徴収開始へ
くるまのニュース
トヨタのサブスク[KINTO]がARを使ったスマホアプリの新サービス開始 ほんとに使えるか実際に試してみた!
トヨタのサブスク[KINTO]がARを使ったスマホアプリの新サービス開始 ほんとに使えるか実際に試してみた!
ベストカーWeb
写真で見るニューモデル ホンダ「フリード」
写真で見るニューモデル ホンダ「フリード」
日刊自動車新聞

みんなのコメント

16件
  • FDロードスターって…
    しかも1箇所ではなく何箇所も誤記…
    その時点で既に中身読む気失せた。
  • いいこと書いてるのにFD型で台無し。
    RX7と記憶が混ざっているのだろうか?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

379.6430.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

138.6486.0万円

中古車を検索
ロードスターRFの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

379.6430.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

138.6486.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村