マフラーの保安基準はどんどん厳しくなっている
クルマの保安基準は時代とともに変わり続けている。中には「10ミリ未満のタイヤのはみ出しがセーフになる」といった緩和的な内容もあるが、おもには厳しくなる方向。特に排ガスや騒音などの問題から、マフラーに関する保安基準は昔に比べるとかなり厳しくなっている。かつては合法とされていたモノが、現在のクルマでは違法だったりするのだ。
スーパーカーはマフラーの音量がうるさいのに合法的に公道走行できるワケ
控えめな音なら大丈夫なんでしょ、と思うかもしれないが、そうでもないのがまた厄介。年式にもよるものの、ここ10年ほどのクルマであれば、「性能等確認済表示」がないとその時点でアウト。仮に純正以下の静かな音であったとしても車検NGになってしまう。逆に「性能等確認済表示」があれば基本OKになるのだが、いつの間にそんな仕組みができていたのか。
そのあたりの詳しい話と、現在の車検対応マフラーの開発事情などを、チューニングパーツでお馴染み、ブリッツの小林さんの解説を交えて紹介していこう。
2010年4月以降のクルマは加速走行騒音も計測される
まず排気騒音に関する乗用車の保安基準について。これはクルマの製造時期により異なる。まとめると以下の通りで、騒音(音量)は表記の既定値以下にすることが求められ、クリアできないと車検には通らない。
◆1997年(平成9年)までのクルマ↓近接排気騒音は103dBまで
◆1998年(平成10年)~2010年(平成22年)3月までのクルマ※定員6名以下↓近接排気騒音は96dBまで(後部エンジン車は100dBまで)
◆2010年(平成22年)4月以降のクルマ↓近接排気騒音は96dBまで(後部エンジン車は100dBまで)なおかつ加速走行騒音防止性能を義務付け
◆2016年(平成28年)10月以降の新型車↓近接排気騒音は91dBまで(後部エンジン車は95dBまで)ただし交換用マフラーは新車時の近接排気騒音+5dBまでなおかつ加速走行騒音防止性能を義務付け※継続生産車は2021年(令和3年)9月以降の生産車に上記基準が適用される
のっけから何やらややこしいが、ポイントは2010年4月以降のクルマ。ココから「加速走行騒音防止性能」の義務付けが追加された(適用車は車検証に記載される)。以降は合法と認められるためのハードルが1つ増えたということ。
「簡単に説明すると、加速走行騒音は50km/hの巡航状態からアクセルを一気にベタ踏みにして、そこから約11m走った地点で計測する数値。私たちがお願いしている確認機関では82dB以下が基準値になっており、これを超えるとアウトです。ちなみに近接排気騒音の方は、所定の位置で最高出力回転数の75%までエンジンを回して計測します」とブリッツの小林さん。
近接と加速、条件が異なるため単純に比較はできない。しかし「加速走行騒音は82dBまで」というのは「近接排気騒音は96dBまで」よりもかなり厳しい数値。
2016年10月以降の新型車を除き、1998年以降は近接排気騒音の上限は変わっていない。だが加速走行騒音の規制が加わったことで、2010年4月以降は実質的に大幅な音量ダウンを強いられている。近頃の車検対応マフラーが静かなのはこれが理由。さらに…。
事前認証制度の導入で性能等確認済表示が必須に
近接排気騒音と違い、加速走行騒音のチェックにあたっては実際にクルマを走らせなくてはならない。また正確に計測するための条件も非常に細かく設定されている。全国各地の車検場で、それを1台1台やるのは不可能だろう。そこで、事前にテストしたらいいんじゃないの? ということになった。
「いわゆる『交換用マフラーの事前認証制度』ですね。具体的には国土交通省の定めた『登録性能等確認機関』にて各騒音をテスト。クリアできた商品は『性能等確認済』の証として認証プレートを付けることができる。それが車検対応マフラーの証にもなるというわけです」。
その認証プレートには登録性能等確認機関名や識別番号、エンジン型式が刻印されおり、車検時にはもれなくチェックされる。そして2010年4月以降のクルマであれば、認証プレート(プレートではなくマフラーに直接刻印されることもあり)が付いていれば基本的には車検OKだが、なしの場合は問答無用で落とされる。
つまりこういう三段論法。
(1)加速走行騒音の規定が加わった(2)それに伴って事前認証制度が導入された(3)結果、性能等確認済マフラー以外は車検NGになった
なお、認証プレートは2010年3月までの生産車両対応のJASMAプレートとは異なるのでご注意を。四輪車用の認証プレートには、登録性能等確認機関名を表す「JQR」「JATA」「JARI」のいずれかが刻印されている(加えてJASMAロゴが入っているケースもあり)。
認証を得るためにはかなりの手間とコストが掛かる
この事前認証を取得するには、相応の手間とテスト1回につきウン十万円単位のお金が必要。各メーカーの開発期間や開発費も膨らんでしまっているのが実情だ。
「しかも認証は1車種につき1種類ではない。排気量やNA/ターボといったエンジンの違いはもちろんですが、二駆と四駆でも、ATとMTでも異なり、それぞれで認証を得なくてはならない。1車種だけでも全グレード分を揃えるのはかなり大変なんです」。
おのずと開発するマフラーは人気車種に偏ってしまうし、その中でも適合はメイングレードに絞られたりもする。そう考えると、今はマイナーな車種、マイナーなグレードでは、合法的にマフラー交換できないケースが多いかもしれない。
「人気車種であっても作りにくい車種もあります。たとえばDBスープラやレクサスLC、BMW MINIといった車種は、純正マフラーでもすでに際どい音量。厳しい保安基準を守りながら、社外マフラーのメリットであるプラスαの音やパワーを引き出すのは技術的に大変です」とブリッツの小林さん。
車検対応マフラーでも楽しめる余地は十分にアリ
といった感じでなかなか厳しい社外マフラー業界。しかし、今もマフラー交換の需要は少なくないし、保安基準の範囲内で楽しめる余地はまだ残されている。「認証プレートが付いていなければNG、付いていればOK」と分かりやすくなったことで、初心者でも安心してマフラー交換できる環境が整ったともいえる。絶望するのはまだ早い!
「ダウンサイジングターボ系やハイブリッド車は元の音量が小さめなので、上限は低くとも純正との違いは出しやすいです。またメーカーとしては、限られた条件下でいかに『いい音』を出すかが腕の見せどころ。最近だとカローラスポーツの1.2Lターボや、RAV4の2.5Lハイブリッドなんかは、すごくバランスのいいサウンドに仕上がったと自負しております」。
そもそも最近はマフラー音の大きなクルマは忌避される傾向にある。スポーティなカスタマイズを楽しみながらも、音はジェントルというのが今どきだ。クルマ好きとしては少し寂しい気がしないでもないが、もはや公道で『ブオォォォォン!』と大音量を響かせて走る時代ではない。
「あとはルックスを変えられるのもマフラー交換のメリット。現行車は純正マフラーレス仕様が多いので、それを4本出しにグレードアップしたり、センター出しにしてレーシー感を演出したり。当社では扱っていませんが、2017年からはマフラーのサイド出しも解禁されています。またチタンやカーボンなど、テールエンドのカラーや素材でさり気なくアクセントを付けるのもオススメですよ」。
【取材協力】BLITZ(ブリッツ)tel.0422-60-2277https://www.blitz.co.jp
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みんなのコメント
これらに改造マフラーはアホの極み
バイクのマフラーは、どんどんうるさくなってる気がするけど。
スクーターの爆音は、耐えられない。