二輪ブームに沸いた2021年におけるバイクの推定販売台数が明らかになった。251cc以上でベストセラーに輝いたのは、ラストモデルとなったSR400。超人気車のZ900RSを抑え、販売トップを奪取した要因を探ってみた。
文/沼尾宏明、写真/YAMAHA、HONDA、データ出典/二輪車新聞「2022年新年特別号」
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400クラスが久々の快挙、SRが有終の美を飾った!
カワサキのZ900RS/カフェは、2017年末に登場し、2020年まで3連連続で251cc以上のクラスで販売1位に輝いたベストラー。例年、CB400SF/SBがトップに君臨していたが、高額な大型クラスながら1位を獲得し続けた。
2021年もZ900RSがトップセールスを記録して4連覇を飾るか……と思いきや、ヤマハのSR400が首位を奪取。2017年のCB400SF/SB以来、久々に400ccクラスがトップに立った。
SRは、以前から生産終了の噂があり、2020年の販売台数は251cc以上で4位、251~400ccクラスで2位と人気が上昇していた。さらに2021年3月にファイナルエディションが発売となり、同3~8月まで6か月連続で251cc以上の販売1位に君臨。前年の2450台から約3倍となる6966台に伸長した。
一方のZ900RS/カフェは4853台で、昨年の4046台を上回る健闘を見せたが、SRの勢いには及ばず。特別仕様の「Z900RS SE」が販売延期になった面もあるだろう。
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噂にはなっていたが、ついにヤマハが2021年1月、SR400の生産終了とファイナルエディションを発表。特に写真の限定版は圧倒的な人気を博した
Z900RSは、往年のZ1スタイルと軽快な走りが人気。2021年11月に特別仕様のSEを販売予定だったが、コロナ禍に伴う部品調達の遅れで2022年1月21日に発売延期となった
3月の発売以来、争奪戦が展開されたファイナルSR
SR400は、1978年の初代から続く流麗なスタイルと、空冷+キックスターターなどの基本構成を維持したまま熟成。43年目の2021年型で生産終了がアナウンスされ、2021年1月21日にファイナルエディションが発表された。
通常販売のファイナル仕様のほか、1000台限定のファイナルエディションリミテッドを用意。こちらは、サンバースト塗装や本革調シート、真鍮製エンブレムをあしらった豪華仕様だ。
発表から数日で年間販売計画の6000台(ファイナル5000台、リミテッド1000台)を超える受注が殺到。これは従来の年間国内生産量に対し2倍を上回る数字で、リミテッドに関しては即日完売の人気ぶり。まさに争奪戦が繰り広げられたのだ。
1000台限定のファイナルエディションリミテッド(74万8000円)。プレミアがついており、バイクの大手販売サイトでは160万円程度が中心相場。中には200万円のタマも
通常販売のファイナルエディションは青、グレーの2色設定(60万5000円)。全車とも3月15日に発売開始された。新車は安くても80万円程度で取引され、100万円もザラ
レアな装備を満載、いい意味で“生きた化石”
SRが販売トップを獲得した最大の要因は、やはり超ロングセラーのラストモデルだからだろう。これまで正直、人気に浮き沈みがあったとはいえ、43年もの間、親しまれてきたバイクが買えなくなるとなれば、SRにさほど興味がなかったライダーでも欲しくなるのは至極当然だ。
生産終了の理由は、2021年10月に導入が迫っていたバイク用ABSの義務化や、2022年11月から始まる次期排ガス規制が原因だ。
2018年にはキャニスターなどの追加で平成28年排ガス規制に対応したが、昔ながらのSOHC2バルブ空冷単気筒で厳格な新規制に対応するのはコスト的にも技術的にも難しい。また、シンプルな車体ゆえにABSユニットの搭載スペースを確保するのも困難。
「現行型をベースにSRらしさを維持することはできない」(関係者筋)とし、43年に及ぶ歴史に幕を降ろすことになった。
伝統の空冷シングルは2010年にFI化。さらに2018年、タンク内の蒸発ガスを吸着するキャニスターをエンジン左下部に追加するなど延命を図ってきたが、ついにラストへ
加えて、現代のバイクにはないレトロな装備も希少価値を高めている。空冷エンジンはもちろん、キックスターター、シリンダー内の圧縮を抜くデコンプレバー(!)などのメカを有する現行バイクは、少なくとも国内外の主要メーカーでは皆無。まさに1970年代バイクならではの“生きた化石”は、新車でもう手に入らない可能性が高い。
近頃、“密”を避けられる趣味として、新車中古車ともバイクが大人気だが、こうしたブームの中、名車であるSRが絶版となれば、販売トップも当然と思えてくる。
SR恒例の儀式がキックスタート。小排気量クラスでは今だにキック採用車は存在するが、セルスターターもない潔さはSRぐらいだ
1978年の初代SR400。オフ車のXT500をベースに誕生した。現行型よりタンクがややスリムだが、イメージは不変。最高出力は現行より+3psの27psだ
残念ながら、この人気には“転売”目的の購入もありそう。ゲーム機など様々なホビーで問題になっているが、定価で購入し、高額販売して利ざやを稼ぐ投資目的の購入も相当数あると見られる。転売のために、SRファンやバイク好きに車両が行き渡らないのであれば、実に悲しむべき事態だ。
名車が続々と終売、次はあの国民的ロングセラー車?
排ガス規制のため、SRのほかにも“名車”が次々と姿を消している。現行唯一の空冷直4を積むCB1100シリーズは、2021年10月にファイナルエディションが発表。10月8日~11月25日まで予約期間を設けたものの、あまりの人気に10月24日で予約を締め切った。
CB1100も生産終了(写真はEXファイナルエディション)。2021年の販売台数ランキング(251cc以上)では14位。大型クラスとしては8位だった
さらに同12月、ハーレーダビッドソン・フォーティエイトのファイナルエディションが発表された。フォーティエイトを含むスポーツスターシリーズは、国内市場で一番人気。入手困難でプレミア化していたこともあり、日本専用にファイナル仕様が設定された。
スポーツスターシリーズはこれまで空冷Vツインを搭載してきたが、次期排ガス規制に対応せず生産終了。新たに水冷エンジンのスポーツスターSが登場している。
フォーティエイトのファイナル仕様は限定1300台で発売。専用シートやシリアルナンバー入りサイドカバーなどを追加した。昨年12月の時点で早期に完売した模様だ
さらに今後も名車の生産終了が相次ぐことなりそうだ。
これまたロングセラーのCB400シリーズが、ついに「絶版」との情報だ。水冷直4エンジンを搭載し、クラスの盟主として一時代を築いた名車ながら、2022年限りで規制に対応せず“殿堂入り”することが決まったようだ。
理由はコストと考えられる。CB400シリーズはほぼ国内専用モデルとなっており、日本での人気は高いものの、グローバル展開によるスケールメリットがない。
また、400クラスながらネイキッドのCB400SFは車両価格が約90万円、カウル付きのCB400SBは100万円超となっており、クラス最高額となる。エンジンの基本設計も古く、排ガス規制を通すため大幅なメスを入れる必要がある場合、車両価格は200万円近くに達するとも言われているのだ。
1992年の初代以来、何度も販売トップを獲得してきたCB400SF。現行型は可変バルブのハイパーVTECレボを搭載する。残念ながらファイナル仕様は用意されない模様だ
CB1300SFは、2021年型で電子制御スロットルなどを採用し、令和2年排ガス規制に対応。だが、これ以上の延命はしない方針が決まったという情報だ
50ccを除く全ての新車に排ガス規制が適用される2022年11月までに、一体どれだけの名車が消えてしまうのか……!? 今後の動向に注目したい。
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