納期はもちろん値引きも6月のほうが好条件になる
新車販売の世界では、値引きを引き出しやすい“増販期”というものがある。年度末商戦がその代表格ともなるが、まもなく6月と7月がメインとなる“夏商戦”が本格スタートする。
【今さら聞けない】新車は買ってすぐにコーティングしたほうがいい?
増販期というものは、2月と3月の年度末、6月と7月の夏商戦、9月の半期決算、10・11月の秋商戦、12月の年末商戦があり、その多くは2カ月にわたって、いわゆる“セール”が実施される。一般的に増販期では年度末商戦なら3月というように、後半月のほうが各ディーラーはこぞって値引き拡大のデッドヒートを行い盛り上がるのだが、夏商戦に限って言えば、前半6月のほうが盛り上がるのである。その理由はおもにふたつあるようだ。
まずひとつ目は、7月は全国の学校が下旬から夏休みに入るので、上旬からすでに世の中がレジャーモードに入っており、なかなか商談が盛り上がらないことがある。そのため販売実績予測も難しいので、“早いうちに”と、6月に“とれる(受注)ものはとる”とのスタンスで値引き拡大なども進みやすくなっているのである。
そしてもうひとつの理由が、おもにメーカーとなるのだが、四半期決算を強く意識する傾向があるので、四半期決算の締め月となる6月がここ最近は夏商戦の販売ノルマ消化も意識しながら、結構派手な値引きや用品特典などが目立ってきているのである。
とくに大きいのが、“見えない販促キャンペーン”である。これはおもに下取り査定額の上乗せとなる。今どきは車両本体価格における車両本体価格からの値引き余力はそれほど多くなく、“粘り勝ち(粘れば粘るほど値引きが拡大する)”とういことはほとんどない。交渉余地が少ないので、本体値引きは早いうちからほぼ限界値が提示されるのである。
カーナビなどの用品値引きも、総額から約20%ほどが引き出せる値引きの目安となっており、こちらも粘り勝ちというものは期待できない。そこで値引き上乗せの“調整弁”となるのが、“下取り査定額の上乗せ”である。下取り査定額は、本来は査定対象車の現状価値を厳密に値踏みするものだが、今では査定額算出において中古車市場の相場状況なども加味されるようになってきている。そのようななか、車両本体値引きや用品値引きだけでは、お客の希望予算にまだ沿えないというときに、値引き不足分を下取り査定額に上乗せして、高取りするのである。
「下取り査定の傾向としては、初回提示する査定額は極めてシビアなものとなります。これはのちに、値引き不足分を上乗せすることを前提にしたものです。せっかちなお客様などは初回提示時点で買い取り専業店などへ売却してしまうようですが、焦らずに下取り車は最後まで手元に残しておく(買い取り店への売却はすぐ車両回収が大前提)ことをおすすめします」とは業界事情通氏。
さらに増販期には、“一律査定額アップキャンペーン”というのが、多くのディーラーで展開される。これは初回査定時から、対象車の年式やコンディションに関係なくどんな下取り車でも一律査定額を5万円アップ、つまり底上げするというもの。「たかが5万円、されど5万円です。これがあると値引き条件も拡大しやすくなり、受注までのスピードが加速していきます」(事情通)。最近ではこの一律アップ額が10万円となるディーラーもあるようだ。
この査定額アップは、広く告知するケースと、内密に進行させるケースがある。後者の場合は、時期によってアップ幅が変更になる流動性があるのが特徴。
同じ夏商戦でも6月は10万円アップだが、7月からは5万円になるといったケースだ。6月に頑張ったけど、目標に達しなかったといった場合には逆に7月のほうが査定アップ幅が増えることもあるのだ。
このような査定額アップの幅が四半期決算を意識した結果6月のほうが手厚いケースが多い。用品無料装着特典なども6月の方がメニューが奢っていることも多い。
2月・3月ほど盛り上がらない夏商戦は、7月は夏休みが絡んできてなかなか読みにくい商戦でもある。そのためもあるのか、6月にニューモデルを投入するメーカーも多い。今期ならば、新型クラウンや新型フォレスター、ニューカマーのカローラ・ハッチバックなどが“大物”として6月デビュー予定となっている。
“客寄せパンダ”的役割もあるのだが、少しでも納期遅延が発生すると、お盆休みも絡んでくるので新型車の納車が秋風が吹くころになることも目立つ。メーカーとしては、6月よりもノルマが多く、年度末の次に盛り上がる事業年度締めでの9月の半期決算セールの販売実績に結び付けようとする動きもあり、このタイミングでニューモデルを投入してくるのである。
夏休みは新車で出かけたいと考えている人は、5月下旬から事実上の夏商戦が始まるので、早めに行動開始して欲しい。
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