日本じゃお目にかかれない「珍車」
陸上における大量輸送の1つの手段として、今や欠かせない存在となっているのがトレーラーです。日本で最も普及しているのは、セミトレーラーと呼ばれるタイプで、運転席とエンジンが載ったトラクター(トレーラーヘッド)が、荷台部分となるトレーラー(セミトレーラー)を牽引する形です。
【まるで大蛇!】オーストラリアの「ロード・トレイン」運転席からの視界も
しかし世界には、モンスター級ともいえるような大きさのトレーラーも存在します。その1つがオーストラリアで活躍する「ロード・トレイン」と呼ばれる巨大トレーラーです。
これは、その名のとおり地上を走る列車のような長い車体が特徴であり、かつては日本でも「カンガルー」や「エアーズ・ロック」などと並んで、同国の“名物”としてテレビなどでも紹介されていました。実際、筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)もそれらで存在を知ったうちの1人です。
「ロード・トレイン」はセミトレーラーを2台牽引したトレーラーのことを指し、ドライバーの間の通称ではセミトレーラー2台で「ダブル」、3台で「ロード・トレイン」(もしくは「トリプル」)、4台で「クワッド」とそれぞれ呼ぶそうです。
なお、オーストラリアの法令では、タイヤと車軸の数でさらに細かく種類分けされていますが、その中の最大サイズは18車軸で全長53.5m、最大重量は135.5tにもなるんだとか。
ちなみに、これまでで一番長い「ロード・トレイン」の記録はなんと1474.3mにもなり、その時に牽引されたセミトレーラーの数は113台にもなるとのこと。この記録は2006年にイベントの一環としてジョン・アトキンソン氏が行ったもので、走行距離も150mほどだそう。しかし、この記録はギネス世界記録にも認定されています。
豪州でロード・トレインが重宝される理由
では、なぜオーストラリアでは、このような巨大トレーラーが多用されるようになったのでしょう。
その理由は、この国の国土と交通インフラの状況が挙げられます。オーストラリアの国土面積は世界第6位で、日本の約20倍もの広さがあります。しかし、内陸部の大部分は砂漠や乾燥した草地で、そこに点在する町や集落は道路が唯一の交通インフラになっていることが多いです。ゆえに、そのような遠隔地では、この「ロード・トレイン」が物流の要を担っているからです。
オーストラリア国内でも、とりわけ多くの「ロード・トレイン」が活躍しているのが北部準州(ノーザンテリトリー)です。彼の地は2000年代まで南北を横断する鉄道網が整備されていなかったため、多くの地域において今も「ロード・トレイン」が唯一の物流インフラとなっています。
そのため、北部準州の州都であるダーウィンには、この「ロード・トレイン」の運転の仕方を専門に教えるドライビングスクールまであるほど。そこで、「ロード・トレイン」の特徴や現状などについてハナシを聞くべく、訪問してみました。
伺ったのは、「クーラウル・トレーニング&アセッシング」(KULLARU TRAINING & ASSESSING、以下クーラウル社)です。ここでは業務ドライバーの育成以外にも、一般観光客向けに「ロード・トレイン」の同乗や運転を体験させる観光アクティビティー「ロード・トレイン・エクスペリエンス」も提供しています。
インストラクターを務めるライアン氏によると、クーラウル社が保有する「ロード・トレイン」は、セミトレーラー3台を牽引するといいます。
大型バンパーとライト、フェンスが必須なワケ
先頭のトラクターはボルボ社製のFH16というモデルで、エンジンは600馬力。巨大な「ロード・トレイン」を牽引するので特別仕様の車両かと思いましたが、エンジンなどは特に改造されていないそうです。
ただ、重量物を輸送するので高馬力・高トルクの海外メーカー車両が定番となっており、ボルボ以外にスカニア社(スウェーデン)や、アメリカントラックの代名詞とも言えるケンワース社が人気だといいます。ちなみに、一般的にトレーラーの牽引車両は「トラクター」と呼ぶことが多いですが、オーストラリアでは「プライム・ムーバー」という独自の呼び方をしています。
運転席(キャブ)は大型サイズとなっており、運転席後方には睡眠用のベッドも備わっていました。「ロード・トレイン」の運行は数日間に渡る長距離運行が基本で、車内で睡眠を取ることが多く、車内スペースが広いトラックが人気だといいます。なお、前出のライアン氏は「妻とケンカしたときは、仕事以外の時もここにきて1人で過ごす」と笑って言っていました。
車体前部には追加パーツとして、大型のバンパーとライト、それにフロントガラスの前方下部には網状のフェンスが追加されています。
バンパーの正式名称は「カンガルー・バー」で、これは文字通り走行中にカンガルーなどの野生動物を跳ねてしまった時に車体を守るための装備です。ライトも夜間、ロード・トレインの存在を野生動物に知らせるためのものだとか。
また、網状のフェンスは「ストーン・ガード」と呼ばれ、路上での飛び石からフロントガラスを守るためだといいます。
これらのパーツ類が必要なことからも、オーストラリアの道路事情の厳しさがわかります。
長くても右左折は数えるほどって!?
前出のライアン氏は、「ロード・トレイン」の運行が独特であることを示す、もうひとつのエピソードを話してくれました。それが、この車両にはカーナビ(英語圏ではGPSと呼ぶ)がないという点です。
日本人の感覚からすれば、長距離を運行するのであればドライバーにとってカーナビは必須の機器だと思いますが、彼いわく「どんなに長距離でも実際には右左折は数回程度しかないんだよ。荷積み場を出る時に1回。途中の道路はほとんど直線で数回くらい。そして目的地の荷下ろし場に入るのに1回。これなら、GPSの指示はいらないね」とのこと。
「ロード・トレイン」は入り組んだ都市部は走行できず、荷物の積み下ろし場はその郊外の工業地域にあります。そして、都市間を結ぶ幹線道路は、ほぼ直線であり信号で停車することもありません。
まさしく「ロード・トレイン」のような巨大な車両が活躍できるのは、オーストラリアの道路事情と、その広大な国土があってこそだと言えそうです。
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みんなのコメント
走る別荘だな。