■クルマに関する変な法律や規制を振り返る
クルマを運転する際には遵守すべき道路交通法があり、ほかにも各都道府県や市区町村が定める条例や規制、運転だけでなくクルマの製造に関係する道路運送車両法などがあります。
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こうした法律や規制は時代によって変化を繰り返し、新たに制定されたり、撤廃されることも珍しくありません。
そこで、これまで定められたクルマに関わる法律や規制のなかから、変わったものを5つピックアップして紹介します。
●軽自動車の64馬力自主規制が撤廃されないワケ
1989年に発売された日産「フェアレディZ」は、最高出力280馬力を達成し、それまでの国産車ではトップとなる出力でした。
また、それよりも前の1987年に、高性能な軽自動車スズキ「アルトワークス」が発売され、550ccの排気量から最高出力64馬力を誇りました。
そして、登録車では280馬力、軽自動車では64馬力という馬力に関する自主規制が始まり、以降は各メーカーともこれが上限になります。
この自主規制は当時の運輸省の指導によるもので、さらなる高出力化は事故を誘発するので危険という判断があったためです。しかし、自主規制はあくまでも国産車に限っており、輸入車には適応されませんでした。
そこで、次第に各国産メーカーから馬力自主規制廃止の声が上がり、登録車については2004年に規制を撤廃。2004年10月に発売されたホンダ4代目「レジェンド」が最高出力300馬力を発揮したことで、初めて280馬力を超え、現在に至ります。
一方で、軽自動車の64馬力自主規制は現在も続いていますが、なぜなのでしょうか。
あるメーカーの担当者の見解によると、軽自動車は日本独自規格のため、海外メーカーのクルマと競合しないことから、登録車のような馬力格差が存在しないこと。
もうひとつは、軽自動車の安全面を考えた場合、馬力が上がっていくとボディ剛性や安全装備などが登録車と同レベルになる必要があり、登録車とのサイズ感や価格での差別化がなくなり、軽自動車そのものが必要なくなる可能性もあるようです。
このような理由から、未だに軽自動車の馬力自主規制は残っていますが、最新モデルでは安全性はかなり向上しているので、64馬力自主規制は論理的とはいえなくなってきたのかもしれません。
●ドアミラーは違法改造だった!?
2018年10月に発売されたレクサス「ES」は、量産車世界初となる「デジタルアウターミラー」が採用され、ドアミラーの代わりにデジタルカメラがドアに装着されています。
また、2020年10月に発売予定のコンパクトEVホンダ「ホンダe」も、「サイドカメラミラーシステム」が全車標準装備され、ドアミラー車は設定されていません。
ドアミラーは、いまではすべての乗用車に装着され、トヨタ「ジャパンタクシー」が唯一フェンダーミラーを採用しています。
1983年にマイナーチェンジされた日産「パルサーEXA」が、国産車で初めてドアミラーを採用。それまで国内ではドアミラーの装着が認められておらず、フェンダーミラーからドアミラーへの改造は違法行為でした。
ドアミラーはフェンダーミラーとくらべて視線の移動量が大きくなってしまいますが、ドライバーと鏡の距離が近く、確認しやすいということと、なによりも車体のデザインへの影響が少ないという大きなメリットがあり、欧米車では古くから一般的でした。
しかし、日本ではフェンダーミラーの装着が道交法で定められており、これは輸入車にも適応されましたが非関税障壁になることで、国産車よりも早い時期に輸入車はドアミラーが解禁されています。
一方、違法改造ながらも1980年になると、フェンダーミラーからドアミラーに改造することが、一部の車種で流行。それがマツダ5代目「ファミリア」で、輸出仕様の「323」がお手本になりました。
そして輸入車との格差や、輸出仕様と国内仕様で異なるのは合理的ではないことから、1983年にドアミラーが解禁され、以降は、日産以外の各メーカーでもドアミラーが普及しました。
解禁後もしばらくは不慣れなユーザーのために、フェンダーミラーもメーカーオプションで用意されていましたが、現在は前述のジャパンタクシー以外のモデルでは、完全に廃止されています。
●オーバーフェンダーはパテ埋めせよ!
1970年代初頭頃の国産車は、レーシングカーからフィードバックされた技術が投入されたことで、高性能化が始まりました。
そうした技術のひとつがエアロパーツで、空気抵抗の低減や、クルマを路面に押し付ける力である「ダウンフォース」を得ることを目的に開発され、ドレスアップにも有効なパーツとして広まりました。
純正装着された代表的な例では日産2代目「スカイラインGT-R」、「フェアレディ240ZG」、トヨタ初代「カローラレビン/スプリンタートレノ」、三菱「ギャランGTO」などがあり、とくに印象的だったのがリベット留めのオーバーフェンダーです。
オーバーフェンダーはレーシングカーの定番アイテムのひとつで、より幅の広いタイヤを装着することが可能でした。
しかし、オーバーフェンダーなどのパーツは暴走行為を助長するという運輸省の指導があり、次第に装着が認められなくなりました。
これは輸入車も同様で、1973年に発売されたBMW「2002ターボ」は、前後スポイラーとリベット留めのオーバーフェンダーが標準で装着されていましたが、日本に輸入した際には、オーバーフェンダーはパテ埋めされ、フェンダーと一体化させなければなりませんでした。
また、前述のオーバーフェンダーを標準装着した国産車でも、一部の地域では警察官による取り締まりで違法改造と指摘され、パテ埋めせざるを得ない状況となった逸話もあります。
いまでは容易に取り外しができないようにすれば、構造変更の申請によってオーバーフェンダーの装着は認められています。また、全幅の拡大が20mm未満のオーバーフェンダーは、構造変更の申請は必要ありませんが、軽自動車や5ナンバー車などは、全幅の拡大によってそれぞれの枠に収まらなければ、構造変更が必要です。
■法律でボディカラーが規制されていた!?
●赤や白いクルマは違法だった!?
新車を購入する際に悩みどころなのが、オプション装備とボディカラーではないでしょうか。なかでもボディカラーは購入の最終段階まで悩む人が多いといわれています。
近年は屋根を異なる色とする2トーンカラーが軽自動車を中心に流行していたり、限定車のみで採用する特別な色、追加料金を払って塗装してもらうオプションカラーなど、さまざまな選択肢があります。
また、一部の高級車では、オーナーの好みによってどんな色でも調合して塗装するオプションが用意されるケースもあります。
現在は自由にボディカラーが選べますが、1950年代には赤や白といったボディカラーは、法律で禁止されていました。
理由としては消防車や救急車などの緊急車両に見えるからというものでしたが、1960年代には撤廃されています。
その撤廃に尽力したのがホンダで、スポーツカーの「S500」を発売する前に「小さいクルマだから赤にカラーリングして目立たせたい」と決まり、開発の担当者が運輸省に何度も足を運んで交渉したといいます。
最初は門前払いの状態だったそうですが、最終的に認められ、赤いS500の発売が可能になりました。
ほかのメーカーもホンダに追従して赤いクルマを発売し、現在に至ります。
●クルマは宝石と同じく贅沢品だった!?
最後はクルマに関わる税金の話です。1989年の法改正で消費税が導入されましたが、それ以前はクルマの車両価格には「物品税」が上乗せされていました。
物品税は別名「贅沢税」ともいわれ、贅沢品とみなされたクルマや、ゴルフクラブ、化粧品、宝飾品、テレビ、ユニークなところではコーヒーにも物品税が課せられており、いまでは考えられないような状況でした。
またクルマの場合、3ナンバー車が23%、5ナンバー車が18.5%、軽乗用車が15.5%と、かなり高い税率となっており、1988年度の物品税の税収のうち、自動車関連だけで約50%にあたる1兆円が収められていました。
そして、平成になって消費税が導入されると物品税が廃止され、なかでも3ナンバー車は数十万規模で値下げされたモデルもあり、爆発的に普及。
しかし、消費税導入当初は3%の税率でしたが、クルマ関連は税収が下がることを危惧して税率は6%でスタートし、段階的に下げられ、1994年に3%となりました。
クルマは人生で2番目に高い買い物といいますが、30年ほど前までは贅沢品とみなされていたのは、ずいぶんと時代遅れな考え方だったのではないでしょうか。
※ ※ ※
もうひとつクルマに関わる自主規制といえば、国内モデルの180km/hリミッターがあります。
日本の高速道路の制限速度は乗用車で100km/h、一部区間で120km/hになると話題になりましたが、じつは180km/hリミッターの根拠は曖昧です。
そんななかボルボは今後、世界で販売するクルマすべてに180km/hリミッターを設定し、さらに180km/h以下の速度に任意で設定できるようにすると発表しました。
これは、先進安全技術が作動する速度限界があるためで、ボルボ車に起因する事故をゼロにするという目標に対しての処置です。
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