福祉施設からは感謝の嵐! 5ヶ月間で、のべ400人を送迎
毎年8月に放送されるチャリティ番組の『24時間テレビ』。43回目を迎える今年は、8月22日~23日にかけてお茶の間に流れたばかり。番組としてはたくさんのテレビ用プログラムが組まれているが、募金活動によって集められた寄付金を、福祉、環境、災害復興に役立てるという「愛は地球を救う」が24時間テレビの主たるテーマだ。そのなかでも、第1回の24時間テレビから続けられているのが、訪問入浴車やリフト付やスロープ付きの車いす移動車の福祉施設などへの寄贈である。
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さて、ここでは24時間テレビの福祉車両が、実際にはどんなところへ寄贈されているか、さらには、その福祉車両がどんな使われ方をしているかなど、24時間テレビから贈られたスロープ付き車いす移動車のエブリイを利用している福祉施設の方に直接、話をうかがったのでレポートしていきたい。
24時間テレビのチャリティー活動
みなさんがよくご存知の「24時間テレビ」。第1回の放送は1978年から。2020年の今年は43回目の放送。その間、ずっと変わらず続けられてきた募金活動だが、集まった寄付金は「24時間テレビチャリティ委員会」を通じて、「福祉」「環境」「災害復興」に活用されてきた。
このなかでも、24時間テレビの象徴とも呼べるのが福祉車両の寄贈。2O20年度分の寄贈(納車)はこれからだが、昨年までの寄贈台数はなんと1万1000台を超えている。
24時間テレビ特別仕様の福祉車両は、毎年、車両メーカーとの研究・改良が加えられ、リフト付きバス(ハイエースやキャラバン)、スロープ付き自動車(ステップワゴンやエブリイ)、訪問入浴車(ハイゼットやNV200バネット)、そして電動車いすがラインナップされている。
24時間テレビ福祉車両はどのように寄贈されるのか?
そんな24時間テレビの福祉車両だが、素朴な疑問として「どんな人たちや施設 に?」「どうすれば寄贈されるんだろう?」と思っていらっしゃる方も大勢いるこ とだろう。
そこで、24時間テレビの福祉車両を実際に所有し、毎日使っているという、奈良県にある「社会福祉法人 長生会 桃寿園(とうじゅえん)」の施設長の南本さん (写真左)、副施設長の長谷川さんに話をうかがった。
桃寿園は老人福祉法と社会福祉事業法に則して、特別養護老人ホーム、ショー トステイ、グループホーム、デイサービスなどの事業を行っている福祉施設。場所は奈良県の橿原市にあり、まわりには古墳もたくさんあるなど歴史の古い街で、施設が建っているエリアは保存地区にも指定されているそうだ。
「24時間テレビの福祉車両の寄贈を受けるには、24時間テレビチャリティ委員会に申し込む必要があります」と教えてくれたのは桃寿園の長谷川さん。申し込み用紙 などは、同チャリティ委員会のホームページからダウンロードできる。
今年の例で見ていくと、4月中旬に申し込み開始、5月20日で申し込みは締め切られ、6月~8月が選考・審査、11月に寄贈先が決定、12月から順次各施設などに納車され、贈呈式が行われる流れだ。
リフトやスロープ付き車いす移動車の寄贈対象となるのは、社会福祉法人、NPO法人、地方公共団体、医療法人、学校法人、ボランティア団体など「営利目的の企業や団体以外」になっている。審査に関しては、必要性が高いこと、さらにはその緊急性、そして法人や団体の財務内容が健全であること、車両の維持管理が可能かどうかなどがポイントになるという。
「我々のような福祉施設は、事業で儲かる仕組みになっていないので、どの施設でも経営が潤っているということはないと思います。福祉車両に関しては、24時間テレビからの寄贈のほか、日本財団からも支援を受けています。これらのサポートな かったらとしたら『いったいどうすれ良いのだろう?』と困ってしまいます。24時間テレビからエブリイの寄贈が決まったタイミングぐらいに、以前から長年使って いた古い車両がちょうど廃車になり、少しでも早く納車してほしいとお願いしたぐらいなんですよ」。
ちなみに、日本財団とは、競艇の収益金をもとに船舶関連事業の支援、公益・福祉事業、国際協力事業などを行っている公益財団法人のこと。福祉車両の助成についてもたくさんの実績がある。「みんながみんなを支える」という意味の、両手を上にあげた顔がイラストになったマークが入った福祉車両を、街中で見かけたこと があるという人も大勢いらっしゃることだろう。
24時間テレビも日本財団も主旨や目的は同じだが、どこでも寄贈(日本財団は助成)が受けられるということではなく、申込み後、非常に厳しく選考&審査された上で当選先が決まる。寄贈されても、ガレージでほこりをかぶって止まったままになっているようでは、あまりにも意味がない。むろん、勝手に転売するなどは許されるはずもないからだ。
桃寿園では約5ヶ月で317回も使われていた!!
話をうかがった 桃寿園 には、スロープ付き車いす移動車のスズキ・エブリイが今年の3月に24時間テレビから寄贈された。納車から165日が経過したわけだが、わずか5ヶ月で317回出動し、なんとのべ400人の利用者を送迎してきたという。走行距離にして4400キロ。平均で1日あたり約2回、毎日毎日、活躍しているそうだ。利用者の送迎以外にも、職員が荷物を運んだり、銀行に行くなどの機会を合わせると、簡単に見積もっても、それ以上という計算になる。
「エブリイは、ショートステイやデイサービス、グループホームの送迎や外出をメインに使っています。ほとんど市内の移動がほとんどですから、いかに活躍しているかが分かると思います。24時間テレビさんからは、どんどん活用してどんどん宣伝して欲しいと言われています。寄贈車両は24時間テレビの宣伝カーの役割も果たしているんですよね。事故などでドアをぶつけてステッカーが剥がれたら、有償で買って貼り直さないといけないなど、手引書にも明記されています。車両は寄贈ですが、修理やメンテはもちろん弊社の負担になります。日々の運行記録をつけたり、1年後には運用実績も提出しなければなりません」。
軽自動車のエブリイを選んだ理由
ーなぜエブリイを選んだのですか?ー「以前からもエブリイは所有していて、使い勝手の良さを十分知っていることも大きな理由です。荷物もたくさん積めて、小回りも効きます。そして、利用者さんの送迎以外にも施設全体で使うので、たくさんの職員が運転します。軽自動車なら女性でも運転しやすいですが、ハイエースなどになってくると特定の職員しか運転できません。あとは、大きなクルマだと予算もかかってしまいます。24時間テレビの募集でも、軽自動車の方が台数が多くて当選する確率も高そう、ということもありますね(笑)」。
ーエブリイ(軽自動車)の良さはどんなところですか?ー「スロープと自動ウインチがついているのはもちろんですが、車いすのまま乗車したときの3点シートベルトや調整式の手すりなどの装備が充実していることもポイントです。エブリイは後部座席を倒すだけで車いすのスペースがつくれて、車いすの方以外にも付き添いの人間が座れる後部(補助)シートも確保されています。軽自動車でも車いすの方も含めて4人乗れるのは他にないと思います。後部座席も簡単にもとの通常どおりに戻せます」。ー実際に運用してみての体験談は?ー「施設の近くも坂道が多いですが、パワーも十分です。それからこのあたりは街が古く、サイドミラーを倒さないと通れない細い道が多いので軽自動車だと助かります。あとは利用者さんのお宅にうかがうときにも(道を渡ったりすることがないように)玄関にベダ付けするのが基本です。そんなときも、軽自動車ならまわりにご迷惑がかからないことも挙げられます」。
24時間テレビには心の底から感謝している
「24時間テレビに関わったり、特別な関係でもないのに、私どもに福祉車両を寄贈いただけたことに、大変感謝しています。今回当選したので、あと5年間は申込みできませんが、チャンスがあればその都度応募したぐらいです。本当に助かっています」と、スロープ付き車いす移動車のエブリイの寄贈に対して、心の底から感謝の気持ちが溢れていた 桃寿園 のお二人。利用者さんの送迎はもちろん、使い勝手の良いエブリイが施設全体で大活躍しているのがよく理解できた。
桃寿園のとなりには、高校が建っている。学生たちが施設にやってきて、利用者さんたちの話し相手になってくれるというほのぼのエピソードも聞くことができた。学生たちや地元住民との交流も積極的に行っていて、最近のギクシャクしたニュースが多いなか、こちらの心が洗われた気分だった。
最後にメッセージ。
「車いすを平坦な道で押してもらうだけでも、じつは本人にとってはとても怖く感じることもあります。車いす移動車のスロープを登ったり降りたり、車いすのままでクルマに乗るのは目線が高くなるので、それ以上に怖いものなんです。自分自身も利用者の立場になって、車いすのままで乗ってみるとどれだけ怖いかが分かると思います。なので、アクセルやブレーキは優しく……です」と施設長の南本さんが教えてくれた。
【取材協力】◆社会福祉法人 長生会 桃寿園http://www.choseikai.or.jp/
◆24時間テレビチャリティ委員会https://www.24hourtv.or.jp/
◆24時間テレビ番組ホームページhttps://www.ntv.co.jp/24h/
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