Mモデルの核心 自然吸気の直列6気筒
E24型BMW M635 CSiとE28型BMW M5は、現在のBMW M社、BMWモータースポーツ社が注文の数だけ生産した特別なモデルだった。当時のBMWの頂点に君臨したクラシックといえる。
【画像】完璧なスピリット M635 CSi(E24)とM5(E28) 3.0 CSL(E9)に現行M5、M8も 全81枚
牙が削がれ、角が落とされたモデルが増えるなかで、この2台は今でもシリアスな雰囲気を放つ。実用性を備えた、後輪駆動の高性能モデルという1つの完成形に到達していた。Mというブランドを確立させたともいえる。
BMWは、自慢のモータースポーツ社が秘めた能力を知らしめる方法として、もっと尖ったモデルを生み出すこともできたはず。だが、それは彼らのスタイルには合致しなかった。
どちらも登場は1980年代初頭だから、既に40年近くが経過し、若々しい香りは失っている。軽量化や空気力学が当時のデザインの最優先項目ではなかったという事実が、スタイリングに表れている。
しかし、サメのように先が尖ったフロントマスクの奥には、Mモデルとしての核心が潜んでいる。特別なBMWには欠くことのできない、自然吸気の直列6気筒エンジンだ。
バイエルンのエンジン製造企業として、質素な直列4気筒でも平均点以上を狙ってきた同社。技術者のポール・ロッシュ氏が設計したユニットは、ダブル・オーバーヘッド・カム(DOHC)のM88型へ進化。特別なBMW、M635 CSiとM5に搭載された。
M1へ搭載されたユニットの量産版
M88/3型を名乗る24バルブ直列6気筒エンジンは、シングルチェーンで2本のカムを駆動。ミドシップ・スーパーカーのM1へ搭載されたM88型ユニットの量産版といえる内容ながら、職人による手作業で組み立てられていた。
先代のE9型に搭載されていたシングルカムのM49型をベースにボアアップされ、排気量は3.5Lへ拡大。ストロークが短く、8500rpm以上まで吹け上がる素質を備えていた。
そもそもBMW M1は、180名のモータースポーツ社のスタッフによって開発され、グループ5カテゴリーで台頭するポルシェへ挑むことが目的だった。ランボルギーニの協力も得ながら。
M1のM88型エンジンはドライサンプ化され、機械式燃料インジェクションでガソリンを供給していた。一方のM88/3型ではウェットサンプ化。点火タイミングと燃料インジェクションは、ボッシュ社のシステムで電子制御されている。
最高出力は当初の280psから向上し、M88/3では290ps/6500rpmを発揮。扱いやすいトルクカーブも得ていた。同じユニットをターボを化したM88/2型でグループ5を戦った、M1 ターボは900ps以上を発揮していたから、まだ余裕は残っていた。
ほかにも、10.5:1の圧縮比を生む鍛造ピストンや、カウンターウエイト付き強化クランクシャフト、吹けのいいエグゾーストなどを採用。当時量産されていた直列6気筒エンジンとして、最も刺激的だったといっていい。
マニアの心をくすぐった控えめな差別化
そこへ組み合わされたトランスミッションは、クロースレシオ化されたゲトラグ社製の5速マニュアル。ブレーキはフロントにベンチレーテッド・ディスクを装備し、ABSと、リアにはリミテッドスリップ・デフも搭載している。
タイヤはミシュランTRXメトリック。BBSのリムが別体となったマルチピース・アルミホイールが容姿を引き締めた。流線型とはいいにくい6シリーズは空気抵抗が低くなく、Cd値は0.39もある。それでも、M635 CSiの最高速度は254km/hに届いた。
そんなM635 CSiが発表されたのは1983年のフランクフルト・モーターショー。ベロア内装の現地価格は、8万9000マルクだった。
右ハンドル仕様も追加され、英国へは1985年から正式に導入。エアコンとサンルーフ、レザー内装を装備し、通常の6シリーズ・クーペより7000ポンド高い価格が与えられた。V型12気筒のジャガーXJ-Sより、1万ポンドも上回った。
僅かに広げられたフェンダーや小さなスポイラー、3色のMエンブレム以外、外観上の目立った差別化は得ていなかったが、それがマニアの心をくすぐった。ポルシェやフェラーリのトップモデルに対抗できるBMWとして、財布の大きいドライバーを惹きつけた。
E9型3.0 CSLの後継モデル的に、E24型6シリーズ・クーペを仕上げたBMWモータースポーツ社が、次に目を向けたのはE28型5シリーズ。1985年のアムステルダム・モーターショーでM5が発表されると、これも小さくない関心を集めた。
当時は世界最速の4ドアサルーン
発表時には25台が納車済みで、初期の限定モデルとしてBMWモータースポーツ社が独自に商談を進めたらしい。大人4名がゆったり座れる車内に、おしとやかなプロポーションを持つ4ドアサルーンは、ひと回り大きいM635 CSiより動的能力も高かった。
サスペンションやパワートレインなど、ボディの内側は基本的にM635 CSiと共通。アンチロールバーは太くなり、バッテリーは荷室側に移設され、当時は世界最速の4ドアサルーンでもあった。
フロントタイヤのネガティブキャンバーと、セミトレーリングアームが支えるリアのポジティブキャンバーによって、コーナリング時のタイヤは路面に対し垂直を維持。ややフロントが重かったが、優れた運動神経を披露した。
そんなE28型の初代M5は、1989年までに2241台しか生産されておらず、BMWの量産モデルとしてはかなり希少。M635 CSiも5855台で、M5より多いとはいえ貴重なモデルといっていい。
さらに右ハンドル車は数が少ない。M635 CSiは102台。M5は187台となっている。
今回の2台を持ち込んでくれたのは、デビッド・ラポポート氏。金額の折り合いが付けば、M5は売却しても良いらしい。「M6(M635 CSi)の方が好きですね」。と本音を明かす。
「自分の考えや年齢には、M6の方が合っています。純正のレカロシートは、M5より快適ですしね。73歳なので、コレクションを減らそうと考えているんです。距離の浅いポルシェのタルガを買ったばかりなんですが」
といいながら、この2台もCOVID-19のロックダウン中に購入したらしい。
この続きは後編にて。
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