ダイハツ タントの新たなバリエーションとして登場した「タント ファンクロス」。クロスオーバーテイストのスーパーハイトワゴンは走りも使い勝手も十分な1台で、軽スーパーハイトワゴンの新たな可能性を感じさせてくれた。
軽乗用車の4割以上を占めるスーパーハイトワゴン
かつて(たぶん1990年代前半まで)、軽自動車といえば、トラックやバンを除けば、いわゆる2BOX型のものが主流だった。だが1993年にスズキが、決められたサイズの軽自動車の空間を広げるために車高を高めた「ハイトワゴン」のワゴンRを登場させると、主流が変わった。そして2003年、ダイハツからさらに車高を高めてリアサイドドアにスライドドアを採用した「スーパーハイトワゴン」のタントが登場。
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その後、他の軽自動車メーカーも追従してスーパーハイトワゴンをラインナップし、その代表格となったホンダ N-BOXが登録車も含めた販売台数でトップの座を維持し続けているのはご存じのとおり。軽乗用車全体は今後も安定した需要が予測されているが、中でもスーパーハイトワゴンは全体の4割以上を占めており、今後も年間約60万台の需要で推移すると予測されている。
そんなスーパーハイトワゴンは、いままでの標準系とカスタム系に、新たに「アウトドア系」が加わりつつある。その発端はスズキが2018年末に発売したスペーシア ギアだが、ダイハツも今回タント シリーズのマイナーチェンジを機に、アウトドア系のタント ファンクロス(以下、ファンクロス)を登場させたというわけだ。
優しすぎないけれど、押し出し感も強すぎないスタイルがいい
前置きが長くなってしまった。ファンクロスの実車はショールームなどで見ていたが、実際に路上で見ると、けっこう存在感は強い。マイナーチェンジされたタント カスタム(以下、カスタム)とフードやフェンダーは共通だが、ヘッドランプやグリル、バンパーは専用デザインで、ルーフレールやロッカーモール、幅広のサイドモールなどでアウトドアテイストを高めている。
デザイン的には巧くまとまっており、最近流行しているアースカラーのサンドベージュメタリックも、このクルマの雰囲気に似合っている。ノーマルのタントでは、少しデザインが優しすぎるし、かといってカスタムは押し出し感が強すぎてね・・・なんて悩んでいた人には、ちょうどいいスタイリングかもしれない。
ファンクロスのパワーユニットには、ターボとNAが設定されているが、今回の試乗車は前者。軽の自主規制値である64psと100Nmを発生し、金属ベルトと遊星歯車によるD-CVTと組み合わせるのはカスタムなどと同じ。車重もカスタムRSより10kg重いだけだから、走りっぷりに変わりはない。街中でも高速道路でも、発進から加速までストレスを感じることはない。
ハイウエイクルージングは静かで快適
高速クルージングでのエンジン回転数は、80km/hで約2000rpm、100km/hで約2500rpm。静粛性はけっこう高い。加速時もCVTによくあるラバーバンドフィーリング(エンジン回転数が上がってもすぐに車速が伸びない現象)は少なく、ターボのおかげでスムーズに車速を伸ばしていく。急な上り坂などでは、ステアリングホイールの「パワー」スイッチを押せば効果的だ。
1800mm近い車高にボディサイドはフラットだから、横風の強い高速道路などは直進性が気になるが、怖さを感じるレベルではない。また、コーナリングを楽しむようなクルマではないけれど、DNGAによるボディはしっかりしており、乗り心地も良い。
だが、ファンクロスは「アウトドア系」とはいっても、内外装にアウトドアテイストを加味しているだけで、4WDこそラインナップしているものの最低地上高はカスタムと同じだし、ラフロードでの走破性を高めたモデルではない。そんな走りを楽しみたい人は、ダイハツならタフトをチョイスしたほうがいい。
軽スーパーハイトワゴンは、アウトドア系が主流になるか?
インテリアでは、カモフラージュ柄のシートが思った以上にサポートが良く、長時間ドライブでも身体が痛くならなかったのが好印象。オレンジ色のアクセントや本革巻きのステアリングホイール&シフトノブもいい感じだ。助手席側のミラクルオープンドアや豊富な収納スペース、操作性が向上したシートのアレンジや取り外し可能なデッキボードなど、使い勝手の高さは他のタントと同様だ。
リアシートにも乗ってみたけれど、乗り心地も悪くないし、ヘッド&フットスペースは十分すぎるほど。ただし、これは他のタントでも同様だが、リアシートをいちばん後ろに下げるとスピーカーの位置がパッセンジャーのすぐ脇となるので、ドライバーはオーディオの音量に注意してあげたい。
安全装備のスマートアシストはもちろん標準装備だが、ACCはパッケージオプションとなる。高速道路を使う機会が多いなら、装着を勧めたい。街中使用が中心なら、ノンターボでも走りに不満はないだろう。
タントは、そのCMなどのイメージからファミリーユースが中心に思われるが、このファンクロスは幅広い年齢層に似合いそうだ。2人以下なら趣味のギアを多く積み込んで出かけるのもいいし、もちろん家族での買い物や旅行にも最適。平日は仕事の足にだって使える。
タントのマイナーチェンジとともに登場した、このファンクロスの人気は上々のようだ。三菱も2023年にはデリカミニの発売を予定しているし、アウトドア系の軽スーパーハイトワゴンは、第3のバリエーションとして増殖していくことは間違いなさそうだ。(写真:Webモーターマガジン編集部)
タント ファンクロス ターボ 主要諸元
●全長×全幅×全高:3395×1475×1785mm
●ホイールベース:2460mm
●車両重量:940kg
●エンジン:直3 DOHCターボ
●総排気量:658cc
●最高出力:47kW(64ps)/6400rpm
●最大トルク:100Nm(10.2kgm)/3600rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:レギュラー・30L
●WLTCモード燃費:20.6km/L
●タイヤサイズ:165/55R15
●車両価格(税込):180万9500円
[ アルバム : ダイハツ タント ファンクロス 試乗 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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