日本車の当たり年の1989年にモデルチェンジして登場したR32型スカイライン。5月に標準モデルのGTSシリーズが発売されるも、8月にGT-Rが復活するとその話題性の大きさからGTS系はちょっと陰に隠れ気味に……。
現在は、GT-Rのあまりの人気ぶりに、よりいっそう地味な存在になってしまっている。
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しかし、ターボのGTS-tタイプMなどの人気モデルもあったR32スカイラインの基準モデルとなるGTSシリーズは走りのスカイラインGTの復活ともいわれていたモデル。そんなスカイラインGTSシリーズはどれほどの走りの性能を持っていたのか?
モータージャーナリストの片岡英明氏が当時を振り返る。
文/片岡英明
写真/NISSAN、Porsche
【画像ギャラリー】コンパクトで滑らかなボディにはGT-Rにはない気品がある「R32スカイラインGTS」を写真でチェック!!
■GT-R登場の3カ月前にR32はデビュー!
第8世代は「超感覚スカイライン」のキャッチフレーズで1989年5月にデビューを飾った。
1989に誕生したR32型スカイライン 2ドア スポーツクーペ GTS-t タイプM。FRの素直な操縦性とGT-Rより軽い車重で操縦性は高い
スタイリングは7代目が直線基調のウエッジシェイプだったのに対し、8代目のR32スカイラインはウエッジシェイプに柔らかい面を組み合わせている。無駄のないデザインで、フロントだけでなくリアのオーバーハングも大胆に削り取った。
2ドアスポーツクーペだけでなく、4ドアスポーツクーペと名付けた4ドアセダンもキュートなデザインだ。歴代のスカイラインのなかで、もっとも躍動感あふれるデザインといえるだろう。
1989に誕生したR32型スカイライン 4ドア スポーツセダン GTS-t タイプM。2ドアより全高が15mm高く車重が30kg重いが、ほかのスペックはほぼ同じ
5月に発売されたのは、スカイラインの伝統を受け継ぐ5ナンバー小型車枠のFR車だ。スカイライン初となるアテーサE-TS(4WD)採用のGTS-4と16年ぶりの復活が告知されたGT-Rの発売は8月21日だった。
パフォーマンスだけを見ればGT-Rに目がいく。晴れの日も雨の日も驚くほど速かったし、サーキットでも敵なしの活躍を演じている。だが、オーバー2Lで、専用設計のGT-Rはイレギュラーだ。
■ポルシェ944ターボをターゲットに開発されたスカイラインGTS
長年に渡ってスカイラインの開発に携わってきた櫻井眞一郎さんは、ずっと2Lの排気量と直列6気筒エンジンにこだわり続けてきた。R31とR32の開発主管を託された伊藤修令さんも、多くのファンを持つベース車のポテンシャルを高めることに力を入れている。
それまでの流れをいったんゼロに戻し、原点回帰を図った。そして新たな評価基準を作ったのである。
エンジンは1800GXiが積む1.8LのCA18i型直列4気筒SOHCをボトムに設定する。だが、主役であり、多くの人がスカイラインらしいと感じるのは、大ヒットした2000GTの血を引く2000GTSシリーズだ。
心臓には改良を加えたRB20DE型直列6気筒DOHC4バルブとRB20DET型直列6気筒DOHCハイフローセラミック/ボールベアリングターボが選ばれた。トランスミッションは2種類だ。2速ギアと3速ギアをダブルコーンシンクロとした5速MTと電子制御4速のE-ATを用意している。
GTSシリーズが性能目標の仮想ライバルとしたのは、メルセデスベンツ190Eの2.3-16とBMWのM3、そしてポルシェ944ターボだった。繰り返して言うが、GT-Rの仮想ライバルではない。
ポルシェ944ターボ1985年登場、2.5L直列4気筒エンジン220ps。1988年に大径タービンを採用したターボSが登場し250psを発揮した
当時、ロードゴーイングカーとして世界の頂点に君臨し、サーキットでも大暴れしていたスポーツカーをGTSのライバルに据えたのである。いかに設計陣の志が高かったかわかるだろう。だから今でも熱狂的なファンに愛されている。
■スカイライン神話のはじまりは3代目 GC10型2000GTから
1967年7月、「愛のスカイライン」のキャッチフレーズで登場し、いつしか「ハコスカ」と呼ばれて親しまれたのが3代目のC10スカイラインだ。2代目のときに2000GTは誕生したが、これはひと握りのマニアとレース好きの走り屋だけのスポーツセダンだった。
1968年のモデルチェンジで誕生した「スカG」ことGC10型スカイライン2000GT。4気筒モデルがC10型、6気筒モデルがGC10型(2ドアハードトップは頭にKがつく)
直列6気筒エンジンを積む2000GTが認知され、多くの人に知られるようになるのは、このスカイラインからである。9月にL20型直列6気筒SOHCエンジンを積み、4輪独立懸架のサスペンションを採用した型式GC10の2000GTが登場した。これがのちのGTSのルーツといえるだろう。
GC10スカイラインは初めて2ドアハードトップを設定したし、高性能なDOHC4バルブのS20型直列6気筒エンジンを積む2000GT-Rも送り出している。GC10は新たなスカイライン神話と伝説を築いたのだ。
これ以降、代を重ねるごとに2000GTの存在感は薄くなっている。販売はそれなりに好調だったが、これはハコスカの神通力に支えられてのものだった。昭和の時代を代表する傑作と言えばGC10スカイラインで、これを凌ぐオーラを放つスカイラインはない。
■GT-Rを復活すべく誕生したR32型は平成の「スカG」
平成の傑作、それはR32スカイラインだ。再びスカイラインをメジャーブランドに引き上げ、日本専用モデルなのに世界に名を轟かせている。原点回帰と言っているが、その原点はGC10スカイライン2000GTなのだ。だからGT-Rも復活させた。
ボディは先代のR31スカイラインよりダウンサイジングし、スポーティ感覚が強い。小型車枠いっぱいの全幅にとどめながら、痛快な走りを実現している。眼を三角にしての攻めの走りだけでなく、流して走っても楽しい。
R32スカイラインが今も愛されているのは、今も新鮮味を失わないキュートなルックスと気持ちいい走りにある。ベース車でも走りの質は驚くほど高いレベルにあった。
1991年にマイチェンしたR32型スカイライン 2ドア GTS-t タイプM。R31のフォルムからコンパクトで丸みを帯びたスポーティなデザインに変更され、GTSはRにはない気品がある
だからGT-Rが登場しなくても魅力的だったと思う。その秘密のひとつは、全グレードに採用した革新的なサスペンションだ。サスペンションの専門家である伊藤修令さんは、スカイライン伝統のサスペンションと決別し、前輪だけでなく後輪にもマルチリンクを採用した。
これはアッパーマウントを持つダブルウイッシュボーンと似た形式だが、リンクを追加するなど、随所に工夫を凝らしている。4輪すべてをマルチリンクにするのはスカイラインが初めての試みだ。
これに2段絞りバルブ付きのショックアブソーバーを組み合わせ、優れた接地フィールと卓越した旋回コントロール性を実現した。しかも後輪駆動だから、意のままに操る楽しさに満ちている。
また、主力グレードのリアサスペンションには位相反転制御のスーパーHICASとスタビライザーを採用した。新設計のツインオリフィス式電子制御パワーステアリングとリアビスカスカップリング式LSDと相まってシャープで気持ちいいハンドリングを実現している。
GXi以外のグレードは4輪ディスクブレーキだし、GTS-tタイプMはフロントが4ポットの4輪ベンチレーテッドディスクだから止まる性能も超一級だ。まだABSはオプション扱いとなっていたが、コントロールできる領域は驚くほど広い。
■4WDのGT-Rを凌ぐ魅力を秘めていたGTSモデル
パワーユニットも上質なパワーフィールだ。自然吸気のDOHCエンジンは低回転のトルクが細く、小まめな変速を強いられるが、操る楽しさは格別だった。その気になれば7000回転まで実用になり、回転を上げるほどにパワー感が増す。
大改良を施したRB20DET型DOHCセラミックターボも過給が始まるまではトルクが細い。だが、そこから上の応答レスポンスは鋭く、こちらも7000回転手前まで気持ちよくパワーとトルクが上乗せされていく。
R32型スカイラインGTS-tに搭載されたRB20DETエンジン。直列6気筒2.0Lターボで215ps/27.0kgmを発揮する
家族と乗る時は上質なパワーフィールを味わえ、高速道路では直進安定性に優れ、乗り心地も良好だ。そしてワインディングロードでムチを入れれば、気持ちいいハンドリングと安定した制動性能を披露する。
GT-Rを追加することを考えて開発していたため、エンジンパワーにシャシーとサスペンションが負けていない。雑な運転をしていた人は、運転が上手くなったように感じられたはずだ。
峠道を飛ばすだけでなく、かつての2000GTのようにグランドツアラーとしての資質も高かった。多くの人を魅了した2000GTの血を受け継ぐ平成の2000GTがR32の2000GTSである。
トップグレードのタイプMでなくても操る楽しさにおいて、4WDのGT-Rを凌ぐ魅力を秘めていた。だから今も長く乗り続けているファンが多いのだろう。稀代の名車といえる。
1991年に追加されたGTS25タイプSは直6 2.5L NAエンジン180ps/23.0kgのRB25DEを搭載。セド/グロについで世界発の5速ATを採用しグランドツアラー性を向上した
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みんなのコメント
スクラップにされちまった・・・
いい車でした。
懐かしい~