■30年経っても変わらない初代NSXのボディ剛性
初代NSXが出たころには普通の大学生だった筆者にとっては、ホンダがすんごいクルマを出したけど無縁という認識だった。
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なにせR32「スカイラインGT-R」の445万円だって当時は相当に高価だと感じていたのに、NSXは800万円からだったから。でも街で見かけると、どんな人が乗ってるのか気になって思わず目で追ってしまったものだ。
そんな筆者は、やがて自動車メディアの世界に身を投じた。すると、当時は280ps勢がもてはやされた時代だったこともあり、NSXに乗る機会もけっこう頻繁にあった。無縁だとばかり思っていたのに、じつはけっこう縁があった。
初めて乗ったときに印象的だったのは、まず運転席に座った景色が独特なこと。ほかのどのクルマとも違う雰囲気を感じたことを覚えている。
そしてもちろんエンジン。あまりの吹け上がりの鋭さに、さすがは当時F1でも大活躍していたホンダのVTEC!と思ったものだ。あとはステアリングがちょっと重いかなと感じたはず。でも、こんなカタチのスーパーカーなのに、意外なほど“普通”に乗れることに驚いたように記憶している。
時間の経過とともに、やがてNSXに乗る機会も徐々に減っていき、次期NSXはFRになるという情報もちらほら聞かれたころに出てきた、後期型のNA2のタイプRをドライブしたのが、筆者の記憶では初代NSXに乗った最後の機会。タイプRが出て間もなかったはずなので、これはおそらく2002年のなかばごろのことだ。
その後は急激に初代NSXとは縁がなくなり、もう乗れることなどないだろうなと思っていたら、あるじゃないか!
胸躍る思いで向かったのは、箱根は仙石原にある「fun2drive(ファントゥドライブ)」だ。こちらでレンタルできるという情報をつかみ、ぜひ行ってみたいとかねがね思っていたのだが、ようやくその思いが叶ったのだ。
※ ※ ※
低く構えた赤いNA1とご対面。初代NSXをドライブするのは、実に18年以上ぶり。シンプルなボディラインは当時、話題騒然だったアルミボディだからこそ。長いテールはトランクにゴルフバッグを積める広さを確保するためでもあったはずだ。
ドアを開けてシートに収まると、これこれ! 低めのベルトラインとドライバーめがけて斜めに下降してくるダッシュにより開けた視野の得られるドライビング環境が、初めて乗ったときのことを思い出させる。その向こうに見えるリトラクタブルヘッドライトも懐かしい。
キーひねると、軽やかなクランキング音で3リッターV型6気筒VTECが目を覚ます。横方向が短いMTのシフトフィールや、アシストのない初期のNA1のちょっと重めのステアリングも、もうなにもかもが懐かしい!
ワインディングを走らせてみると、さらに懐かしい! いまどきクルマのようにやたらとクイックではなく、じわっと曲がり、ステアリングを通して路面の状況をダイレクトに伝えてくる。3リッターV6 VTECの吹け上がりも素晴らしいのひとこと。エンジンもハンドリングも、いまどきのクルマにはない“素”の感覚の味わいがある。
30年経っても変わらない高いボディ剛性にも感心する。かねてから、初代NSXの車体はオーバークオリティだと聞いていたが、本当にそうだとあらためて実感した。ミッドシップならではのトラクションの感覚も当時のままだ。
■初代NSXだけでなくR32GT-Rも乗れる!箱根にあるfun2driveレンタカー
やけにクルマの調子がよいと思ったら、最近、ブッシュも含め足まわりを新調したばかりらしい。
「スポーツカーでレンタカーとしてのクオリティを維持するのはけっこう大変です。でも、対価をいただいて乗っていただくので、そこはしっかりやらなければと考えています。楽しみにしているみなさんの夢を壊したくありませんからね」とfun2driveの渡邉義章店長。
なるほど、聞けばやはりメンテナンスには相当に気を使っているようで、納得である。
短時間ではあるが、初代NSXをドライブしてあらためて感じたのは、極めて乗りやすいことだ。高性能を誰しもイージードライブで味わうことができるという、当時、世界が歓迎した所以が30年たっても変わらない。タイトなコーナーよりも高速コーナリングが楽しい。
それにしても、初代NSXのような昔憧れたクルマに乗るのって、どうしてこんなに楽しいんだろう。なんだか異様にハイな気分に自然となってしまう…。
※ ※ ※
こちらのFun2Driveは2011年にスタートし、当初はハコスカ、R32、R35の3台体制だったところ、評判が評判を呼んで車種のラインアップがどんどん増えていき、やがてその評判は国境を越えて、海外からも大勢のスポーツカーファンが訪れるようになったとか。
もっとも人気が高いのはR35 GT-Rで、やはり最新のGT-Rに乗りたいという声がずっと変わることなく多いそうだが、2番人気としてはこの初代NSXと、R34スカイラインGT-Rがほぼ同等で並ぶらしい。
しかも、NSXに乗るのは初めてという人が多く、当時抱いた憧れを胸に、30年のときを経て、その思いを確かめるためにやってくるのだとか。衝撃的な存在だった初代NSXに強い思い入れを持っている人はいまでも少なくなく、いつか乗りたいと思ってもなかなか機会を得られずにいたところ、Fun2Driveで乗ることができるということを知って、喜びいさんで来店するそうだ。
今回は天気もよくなかったし、撮影の都合もあり短時間だったが、いずれ筆者もプライベートであらためて、ほかにも気になる車種がたくさん用意されていることだし、じっくり楽しませてもらうことにしたい。
芦ノ湖スカイラインや箱根ターンパイク、伊豆スカイラインなど、すぐ近くに日本有数のワインディングがいくつも点在する箱根の玄関口で、初代NSXと現行NSXを乗り比べることもできるし、バブル期に名をはせた数々の名車や、登場する漫画で描かれた仕様を模したスポーツカーも何台も用意されていて、時間の許す限りいくらでも楽しむことができるのだから。
クルマ好きにとって、こんなにありがたい場所はない。
NSXのほかにもどんな魅力的なクルマがスタンバイしているのか、まずはぜひWEBサイトを覗いてみてほしい。
HONDA NSX(NA1。1990年当時のスペック)
・車両価格:800万3000円(消費税含まず。東京)
・全長:4430mm
・全幅:1810mm
・全高:1170mm
・ホイールベース:2530mm
・車両重量:1350kg
・エンジン形式:V型6気筒DOHC
・排気量:2977cc
・駆動方式:MR
・変速機:5速MT
・最高出力:280ps/7300rpm
・最大トルク:30.0kgm/5400rpm
・ブレーキ前/後:Vディスク/Vディスク
・タイヤ前後:前205/50ZR15、後225/50ZR16
・10モード燃費:8.3km/L
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みんなのコメント
人間とゆーのは無い物ねだりで、一昔前のクルマの方が刺激や官能性は高く感じるから不思議なものです。
個人的には、初代NSXは名車だと思います。
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