クルマの購入を考えた時に中古車は、新車よりもグッと予算が抑えられたり、新車と同じ予算ならずっと上のクラスの車種を選べるのが魅力。
しかも、見た目がほとんど同じ現行型でも買い得感のある価格の中古車がいろいろあるから見逃せない。
それでは今、現行型中古車はどんな車種が安くなっているのか? 中古車事情に詳しい自動車ライターの萩原文博氏が、2016年式、走行距離2万km以内の現行型中古車を調査し、そのなかから格安物件をピックアップ。
なんでこんなに安いのか? その安さの秘密にも迫っていきたい。前編は「国産車中古車編」と、「輸入車編」をお届けしよう。
文/萩原文博
写真/ベストカー編集部、Adobe Stock
初出/ベストカー2018年11月10日号
※本記事は2018年9月下旬当時のものです。
■「現行型国産中古車編」/なぜこれほどまでに安いのか?
新車の購入では、販売店の決算期に値引き額が大きくなることがある。しかし、中古車は定価がないため値引きができないし、中古車の値引きは二重価格となり禁止されている行為だ。
したがって、中古車販売店に行った時に、百円単位の端数をなくすのは歓迎だが「今日決めてくれれば、○万円引くよ」と言ってくる店は避けたほうがいい。
やや話がそれてしまったが、中古車購入は新車購入と違う点がある。新車購入では人気車の場合、納車までの期間が長くなることはあっても、価格が高くなるということはない。
しかし、中古車の場合は違う。現在中古車の売買はオートオークションが主流となっており、ユーザーの需要が高い人気車で人気ボディカラーとなると欲しい人が集中するので、ドンドン価格が上がってしまう。その逆となる、いわゆる不人気車では走行性能は差がないのに、グンと価格が安くなってしまうのだ。
では、中古車特有の価格を左右する要素である「人気」がどれくらい影響するのか? それは国産中古車、輸入中古車ともに共通なのか? を検証してみたい。
まずは国産車の現行型中古車から見ていこう。
今回、国産車、輸入車ともに、新車価格から値下がりが大きな現行車種を15車種ピックアップした。設定した条件は年式が2016年式、走行距離が0~2万km、修復歴なしという3点。登録から3年目となると、最初の車検サイクルを迎えてしまう。
そして、走行距離が長くなったり、修復歴車を含んでしまうと、中古価格のブレが大きくなってしまう。そのため3点の条件を設定し、現在販売されている中古車のなかから選んだ結果、値下がりが大きかったのが下表の15車種だ。
■最大の値落ち率だったのは燃料電池車のMIRAI
そのなかでも最大の値落ち率だったのは、世界初の燃料電池量産車のトヨタMIRAI。補助金を除いた車両本体価格は723万6000円だが、なんと2016年式、走行距離1万kmというMIRAIの中古車には298万円というものまであった。
MIRAIの中古車は日本国内にわずか17台しか流通していないが、中古車全体の平均価格も329万円と大幅にダウンしている。MIRAIはとにもかくにも、燃料である水素ステーションのインフラ整備の遅れなどが致命傷となり、値を下げているのだろう。
[usedcar-search carname="MIRAI" limit="2"]
次に値落ち率53.19%とほぼ半額になっているのが、コンパクトカーの日産マーチ。そのほかにもスペイド、ミラージュ、ポルテの3車種は大きく値を下げている。新車販売がいまひとつなことと同様に、不人気なのが安くなっている大きい要因だろう。
※マーチの中古車はこちら!
一方、値落ち率3位のマツダデミオは前出の4車種とは違う理由が考えられる。マツダは年次改良で安全装備やパワートレーンなどがドンドン進化している。
デミオは2018年8月の一部改良で、ガソリンエンジンは1.3Lから1.5Lへ変更されたばかり。このアップデートによって型遅れとなった中古車の値落ちが加速しているのだと考えられるのだ。
※デミオの中古車はこちら!
※アテンザセダンの中古車はこちら!
このデミオと同じ理由で安くなっているのがマツダのフラッグシップ車、アテンザセダンの中古車だ。直近で行われた一部改良はフルモデルチェンジかと思うほど手が加えられており、高年式の中古車が大幅に値下がりした。現行型でも大幅に安くなっている中古車の安い理由はいろいろあるのだ。
※スペイドの中古車はこちら!
以下、値落ち率の4位スペイド、5位アクアと続いている。スペイドは兄弟車ポルテの6.87~44.77%(8位)に比べ、値落ち率が26.03~47.32%と激しく4位。値落ち率が6.71~47.16%の5位のアクアはさすがにモデルチェンジサイクルが長くなってきて、流通台数が多いというのが要因。
※アクアの中古車はこちら!
■現行型輸入中古車編/さらに爆安! なぜこんなに安いのか?
※BMW7シリーズの中古車はこちら!
続いては、輸入車の現行型で値落ち額の大きな中古車をピックアップしてみる。設定した条件は国産車と同じ、2016年式、走行距離0~2万km、修復歴なしの3点だ。
国産車で値落ちの大きい中古車は不人気車が上位を占めている感が強かったが、輸入車はそうではない。BMWやメルセデスベンツ、フォルクスワーゲンといった人気ブランドが多くなっている。
なぜそのようなことになるのか? それは、新車の販売台数を増やすために納車期間を短くするのに、見込みで本社に発注をしていることが大きな要因となっている。
見込みどおりに売れればいいが、それが長期在庫になってしまうと、その在庫車は大幅に値を下げて中古車市場に流通させることになるのだ。
これが現行型中古車の価格に影響を与え、その結果、人気ブランドのBMWやメルセデスベンツ、フォルクスワーゲン、ボルボといった人気ブランドで、大きな値落ちが発生しているのだ。
■特にBMWの6モデルの値落ち率が激しい!
なかでも、これから購入する人にとっては嬉しいが、新車で購入したオーナーにとっては少しショックなのがBMW。値落ちの大きな現行型の輸入中古車15選のなかになんと、BMWは6モデルもランクインしているのだ。
コアモデルであるBMW3シリーズセダンも値落ち率49.26%と最も安い中古車では新車価格の約半分で販売されているというから驚きを隠せない。
しかも、その3シリーズを上回り、上位4モデルまでがすでに新車価格の半額以下で手に入るというのだから、バリュー感は相当高いといえる。
そのなかでも値落ち率55.02%でトップに立つのが、BMW740iMスポーツ。新車価格1374万円というフラッグシップセダンが、走行距離1.9万kmで618万円というものがあった。また、走行距離0.7万kmで628万円という物件もあるなど、新車価格の半額以下の中古車がズラリと並んでいる。
現行BMW7シリーズの中古車は、現在241台流通しており、中古車全体の平均価格も3カ月前の780万円から今月は765万円と15万円も値落ちしているのでBMW7シリーズは買い時を迎えていると判断できる。
※BMW640iグランクーペの中古車はこちら!
7シリーズに続いて、新車価格からの値落ちが大きいのがBMW6シリーズグランクーペ640iMスポーツ。新車価格1216万円だが、調べると値落ち率は54.9%で548万円というプライスのついた中古車が見つかった。
6シリーズグランクーペの中古車全体の平均価格の推移を見ても、3カ月間で40万円近い値落ちを記録するなど、値落ちが目立っている車種のひとつだ。このBMWの2車種は大量に仕入れたということもあるが、昨今の大排気量離れが大きく影響しているとも考えられる。
※VWパサートの中古車はこちら!
■新型が発表されたBMW3シリーズの値落ちはさらに進む!
現行、F30型BMW3シリーズは2012年にデビュー。次期G20型3シリーズは2018年10月に発表された。日本導入は2018年前半と予想されるため、今後値落ちが進むだろう。熟成された最終型、現行F30型3シリーズのスタイルが好きな人には狙い目だ。
なかでも2L、直4のクリーンディーゼルモデル、320dがオススメ。人気が高いのはスタイリッシュなMスポーツだが、スポーツやラグジュアリーラインと比べると相場が高く、乗り心地が少し固めなので、じっくり検討してほしい。
※BMW3シリーズの中古車はこちら!
■最も中古車が売れない8月と11月は値下がりする!
新車の場合はハイパワーな大排気量エンジンを搭載したモデルのほうが、価格が高くなるのは当然のこと。しかし、最近の中古車では、燃料高騰の煽りを受けて、大排気量エンジンが敬遠される傾向がある。
例えば、ひと世代前のメルセデスベンツEクラスでは燃費性能が優れて、税金の安いE350のほうがE550より中古車相場が高くなるという現象が起きているのだ。
1000万円以上の高額車ばかりかと思えば、メルセデスベンツAクラスや、ボルボV40、BMW1シリーズといったエントリーモデルも格安な現行型中古車がある。なかでもプジョー208は軽自動車と同じような価格の中古車が見つかる状況だ。
というわけで、現行型中古車は、国産車では人気のありなし、輸入車では新車在庫の流出が中古価格に大きな影響を与えていることが見えてきた。
それ以外でも現行型中古車の価格に影響を与える要素として挙げられるのが、マイナーチェンジや一部改良。実施後は改良前の中古車が値下がりする。
さらに、最も中古車が売れない8月と11月は値下がりするという要素も知っておいて損はない。これらを知っているだけで、簡単に中古車購入の攻略法を立てることができる。
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