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ついに生産終了! ホンダの頂点に君臨したレジェンドの「伝説」と命運

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ついに生産終了! ホンダの頂点に君臨したレジェンドの「伝説」と命運

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

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 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ レジェンド(1985-2021)をご紹介します。

文/伊達軍曹 写真/HONDA

[gallink]

■ホンダ初のV6エンジン搭載 3ナンバー…フラッグシップサルーンとして登場したレジェンド

 ホンダのフラッグシップサルーンとして1985年に誕生。ラグジュアリーなサルーンでありながら、ホンダらしい「ドライバーズカーとしての資質」は常に意識されてきた。

 2004年発売の4代目は280ps自主規制解禁1号車として最高出力300psの3.5L V6エンジンを搭載し、前後輪と後輪左右の駆動力を自在に制御する世界初のシステム「SH-AWD」も採用。

 しかし歴代モデルは、高額なフラッグシップカーには必須の「ブランディング」が上手くいっていたとはいえず、販売は低迷。そして結果として2021年いっぱいでの生産終了が決定したラグジュアリーサルーン。

 それが、ホンダ レジェンドです。

 初代ホンダ レジェンドは1985年10月、ホンダ初の3ナンバー仕様もラインナップする新たなフラッグシップモデルとして、そして北米で展開する高級車ブランド「アキュラ」向けの専用車種として、発売されました。

ホンダ 初代レジェンド(1985-1990)

 搭載エンジンは2Lおよび2.5LのV6SOHCで、途中から2.5Lを2.7Lに変更。1988年のマイナーチェンジで2Lターボエンジンを追加するとともに、4ドアセダンのリアサスペンションをマクファーソン・ストラットからダブルウィッシュボーンに変更しました。

 1990年10月には初のフルモデルチェンジが行われ、2代目へと進化。2代目レジェンド国内仕様のエンジンは縦置きの3.2L V6「C32A」に一本化され、先に発売されていたインスパイアやビガーが採用していた「FFミッドシップ」というレイアウトを採用。

 一部のジャーナリストからは強く批判されたFFミッドシップでしたが、結果として1991年には年間約1万9000台を売るという好成績を記録しました。

 1996年から2004年まで販売された3代目を経て、2004年10月には4代目のレジェンドが登場。

 排気量はそれまでと同じ3.5Lでしたが(2008年9月からは3.7L)、軽量コンパクトなJ35A型に変更され、レイアウトも縦置きから横置きに変更。

 そして冒頭で触れたとおり4代目レジェンドの3.5Lエンジンは、当時の280ps自主規制解禁の第1号として最高出力300psをマーク。さらには新開発の四輪駆動システム「SH-AWD」を採用するなど、意欲的でスポーティなサルーンではありました。

280ps自主規制解禁の第1号として最高出力300psをマークした4代目レジェンド(2004-2012)

 しかし販売は振るわず、2011年には1年間に360台しか売れないという状況になり、翌2012年6月に生産終了となりました。

 結果的に最後のレジェンドとなった5代目は、北米ではアキュラ RLXとして2013年春に発売されましたが、日本ではやや遅れて2015年2月に発売となりました。

 5代目の日本仕様は3モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID SH-AWD」を搭載。新開発されたV6 3.5L直噴i-VTECエンジンと、合計3つのモーターを最適に制御するコントロールユニットおよび高出力リチウムイオンバッテリーを組み合わせたシステムで、世界初となる歩行者への衝突回避を支援する「歩行者事故低減ステアリング」なども採用されました。

約2年半振りの名称復活となった5代目レジェンド(2015-2021)。世界初の3モーターハイブリッドシステム 「SPORT HYBRID SH-AWD」を搭載する

 そして2018年2月にマイナーチェンジを行い、2021年には自動運転レベル3に適合する「Honda SENSING Elite」を搭載する「Hybrid EX・Honda SENSING Elite」を100台限定で生産すると発表して話題になりました。

 しかし相変わらずセールス状況は低迷したままで、2021年の平均月販台数は「約30台」という衝撃的な数字に。

 そのためホンダは2021年6月15日、2021年度中に予定されている狭山工場の閉鎖に合わせ、2021年いっぱいでレジェンドの生産を終了することを発表しました。

■ブランディングの失敗? レジェンドが消えざるを得なかった理由

 日本市場では若干の空白期間もありましたが、それでも都合36年にわたって作り続けられたホンダ レジェンドが、あっけなく生産終了となってしまう理由。

 それは、例によっての「セダン人気の凋落」や、それに伴う「ブランドおよび生産体制の整理のため」ということでしょうし、各方面から手ひどく批判された5代目レジェンドの「デザインのマズさ」も、息の根を止めるタイミングを早めたのかもしれません。

 しかしそれら以上に根本的な理由となったのは、「レジェンドはブランディングに成功できなかったから」にほかならないと、筆者は考えます。

 安い商品、例えば台所で使う洗剤などは「機能の良し悪し」によって選ばれます。また同時に「値段が安いから」とか、「ただなんとなく」といった理由でも選ばれるのが、洗剤などの低価格なプロダクトです。

 しかしモノというのは単価が高くなればなるほど、「機能」や「値段」はあまり重要ではなくなってきます。いやもちろん高価格帯の商品であっても、機能性や、競合と比しての価格優位性も重要ではあるのですが、「絶対に重要」というわけでもなくなるのです。

 高価格商品にとってもっとも必要なものは「ブランド」です。

 そしてブランドとは何かといえば、「それを買えば(それを使えば、そこに行けば)、100%確実に○×という高い機能や、良い気分が味わえるだろう」という信頼または約束です。

 高級な車で言うと、日本ではレクサス ISよりもBMW 3シリーズのほうが圧倒的によく売れるわけですが、その理由は「3シリーズの機能がISより圧倒的に優れているから」ではありません。両者の機能など、広い視点で見ればほぼ同等です。場合によってはISのほうが上な部分もあるでしょう。

 しかしBMWには「BMWの車を買えば、○×な機能や気分を絶対に味わえるはず」という信頼=ブランドがあります。

 それは幻想かもしれませんが、仮に幻想であったとしてもいいのです。消費者が「裏切られた!」と思わない限り、企業が長い時間をかけて作り上げた「ブランド」は機能するのです(※その代わり、企業が消費者の信頼を裏切るようなことをすると=約束を反故にすると、ブランドはあっけなく崩壊します)。

 で、ひるがえってホンダ レジェンドです。

 歴代ホンダ レジェンドのブランド、つまり「レジェンドを買えば、○×という機能や、△□という良い気分を絶対に味わえる」という一文が合った場合、○×や△□に入るべきフレーズは何でしょうか?

「フラッグシップサルーンでありながらスポーティである」というのはあるかもしれませんが、そこを含めてやや茫漠としており、世代によって個性も異なるため、「これぞ!」という答えを出すことができません。またデザインにも一貫性がないため、「レジェンドといえばこのカタチ!」という像も浮かびません。

世界で初めてレベル3の自動運転を実現した最新技術「ホンダセンシングエリート」を搭載したレジェンド(2021年3月登場)。もしかするとレジェンドの存在は、「ホンダの最先端技術を味わえる」という意味での「フラッグシップ」「ラグジュアリーサルーン」であったのかもしれない

 そんな高額品が、つまりブランディングができていない高額商品が、売れるはずがないのです。

 しかし、この点においてホンダ レジェンドのみを責めるのは卑怯というものでしょう。

 なぜならば、日本のラグジュアリーサルーンにおいては、筆者が知る限りでは「トヨタ クラウン」以外のすべてが、ブランディングに(今のところ)失敗しているように思えるからです。

 ホンダ レジェンドの失敗は「レジェンドのせい」という部分ももちろんあるのでしょう。

 しかし根本的には、「高額な商品=ブランドが必要になるプロダクトを作り続けるのは、決して簡単な仕事ではないから」といった理由に収斂されるべき話なのです。

■ホンダ アコード レジェンド(5代目) 主要諸元
・全長×全幅×全高:5030mm×1890mm×1480mm
・ホイールベース:2850mm
・車重:2030kg
・エンジン:V型6気筒SOHC+モーター、3471cc
・最高出力:314ps/6500rpm
・最大トルク:37.8kgm/4700rpm
・燃費:12.4km/L(WLTCモード)
・価格:1100万円(2021年式 Hybrid EX・Honda SENSING Elite)

[gallink]

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