■コンパクトカーの王道車種、ホンダ「フィット」とトヨタ「ヴィッツ」
ホンダは2001年に1.3リッターエンジンを搭載するコンパクトカー「ロゴ」の後継となる初代「フィット」を発売し、燃料タンクを前席床下に配置する「センタータンクレイアウト」による広い室内空間や、低燃費化・低排出ガス化を可能にした「i-DSI」などにより高い評価を得て、同年に「グッドデザイン賞」や「2001 – 2002日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。2002年には日本国内でトップだったトヨタ「カローラ」を超える年間販売台数を記録しました。
日本のコンパクトは「ノート」「アクア」の2強時代? なぜ「フィット」は加われないのか
対するトヨタは、1999年に「スターレット」の後継として1リッターエンジンを搭載するコンパクトカーの初代「ヴィッツ」を発売し、それまでのコンパクトカーと一線を画する外観デザインと優れたパッケージングで人気を博し、「1999 – 2000日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。さらに「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」も受賞するなど、日欧で認められたコンパクトカーでした。
その後のモデルチェンジにより、「フィット」も「ヴィッツ」も現在は3代目となりました。販売台数では日産「ノート」、トヨタ「アクア」に水を開けられていますが、「フィット」「ヴィッツ」両車ともに5ナンバー枠に収めたコンパクトハッチバックで、日常の取り回しが楽なボディサイズでありながら広い室内空間を持ち、まだまだ人気を保っています。この積年のライバル2台について比べてみましょう。
■室内空間は「フィット」がややリード、狭い道の走行には「ヴィッツ」がオススメ
「フィット」のボディサイズは全長3990mm、全幅1695mm、全高1525mm(4WD車は1550mm)、ホイールベースは2530mm、トレッドは1480mm(フロント)。
「ヴィッツ」は全長3945mm、全幅1695mm、全高1500mm(4WD車は1530mm)、ホイールベースは2510mm、トレッドは1460mmとなっていますので、外観の寸法的にはほぼ互角ですが、最小回転半径は「フィット」の4.9m(4WD車は5.2m)に対して「ヴィッツ」は4.7mですので、市街地の狭い路地を走るケースが多い方や、駐車スペースが狭小な場合は「ヴィッツ」を選んだほうが良いかも知れません。
ただし、「フィット」は初代から続く「センタータンクレイアウト」によって広い室内空間が売りのひとつになっています。室内寸法(長さ/幅/高さ)は1935/1450/1280mm。対するヴィッツは1920/1390/1240mmですので、内装のデザインなどの嗜好もありますが、少しでも広い室内が欲しい場合はフィットのほうが良いでしょう。
また、両車ともに2BOXコンパクトハッチバックとしては、容量の大きな荷室スペースを持っており、ヴィッツは荷物の高さに応じた使い方ができる「アジャスタブルデッキボード」の設定もありますが、この部分でも「センタータンクレイアウト」の恩恵で、リアシートを格納して荷室がフラットになる、「フィット」のほうが使い勝手の面でも有利です。
■燃費とパワーでハイブリッド車では「フィット」優位も、ガソリン車では「ヴィッツ」
フィットのエンジンバリエーションは、直列4気筒1.5リッター「i-VTEC+i-DCD」のハイブリッドシステムと、直列4気筒1.5リッターと1.3リッターの「i-VTEC」ガソリンエンジンをラインナップ。
ハイブリッド車は最高出力110PS/最大トルク13.7kgmのエンジンに、最高出力29.5PS/最大トルク16.3kgmのモーターが組み合わされ、エンジンとモーターを合わせた最大出力は137PS、最大トルクは17.3kgmです。燃費はJC08モード37.2km/L(4WD車は29.4km/L)になります。
1.5リッター車は最高出力132PS/最大トルク15.8kgmで燃費はJC08モード22.2km/L(4WD車は19.4km/L、RS Honda SENSINGの6MT車は19.2km/L、AT車は21.0km/L)です。
1.3リッター車は最高出力100PS/最大トルク12.1kgmで燃費はJC08モード24.6km/L(4WD車は20.2km/L、5MT車は21.8km/L)です。
一方、「ヴィッツ」は直列4気筒1.5リッターのハイブリッドシステムと、直列4気筒1.3リッターと直列3気筒1リッターガソリンエンジンの3種が用意されています。
ハイブリッド車は最高出力74PS/最大トルク11.3kgmのエンジンに、最高出力61PS/最大トルク17.2kgmのモーターが組み合わされ、エンジンとモーターを合わせた最大出力は100PSです。燃費はJC08モード34.4km/Lになります。
最高出力99PS/最大トルク12.3kgmの1.3リッター車は25.0km/L(Honda SENSING非装着車)、最高出力69PS/最大トルク9.4kgmの1リッター車は24.0km/Lとなっています。
両車ともどのモデルでも低燃費を実現していますが、燃費とパワーを考えるとハイブリッド車であれば「フィット」、ガソリン車では「ヴィッツ」1.3リッター車がわずかに優位です。
■「ASV++」獲得の「フィット」とセーフティ・サポートカーS〈ワイド〉の「ヴィッツ」
先進安全装備について「フィット」は「HYBRID・S Honda SENSING」が平成29年度自動車アセスメントの予防安全性能評価において、最高ランクの「ASV++」を獲得。交通事故防止対策の一環として政府が普及啓発している「セーフティ・サポートカーS〈ベーシック+〉」(対車両自動ブレーキ、ペダル踏み間違い時加速制御装置)に該当しています。
「ヴィッツ」は「ASV+」ですが、「セーフティ・サポートカーS〈ワイド〉」(対車両自動ブレーキ、ペダル踏み間違い時加速制御装置、車線逸脱時警報、先進ライト)に該当しています。
カタログデータ的には「ヴィッツ」のほうが優れているように思えますが、「フィット」は「歩行者事故低減ステアリング」、「路外逸脱制御機能」、「車線維持支援システム」などの機能も備えていますので、総合的に安全装備は「フィット」のほうが優れているといえます。
もちろんそれぞれの機能の認識能力・制御能力には限界がありますので、機械の能力を過信せず安全運転を心掛けてください。
■コストパフォーマンスでは「フィット」が有利も、ニーズに応えた「ヴィッツ」
まず、排気量を統一して最も安価なベーシックグレードで比較してみます。「フィット」の1.3リッター車「13G・F」で142万8840円(消費税込、以下同様)。ヴィッツは1リッター車の「1.3F」で148万1760円になります。基本的な装備に大きな差はないのですが、「フィット」は「スマートエントリー」を全グレードで標準装備していますが、「ヴィッツ 1.3F」ではオプション装備になりますので、お買い得なのは「フィット」となるでしょう。
次にハイブリッド車の最も安価なグレードでは、「フィット HYBRID」が169万9920円になり、「ヴィッツ HYBRID F」が181万9800円です。 この2車も大きく装備は変わらないので、やはり「フィット」に軍配が上がります。
最後にハイブリッド車で先進安全装備を標準装備した安価なグレードでは、「フィット HYBRID・L Honda SENSING」が207万9000円、「ヴィッツ HYBRID U」が207万6840円と同等の価格になります。「ヴィッツ HYBRID U」では「スマートエントリー」が標準装備になるので、装備も同等です。ただし、カタログ燃費では「フィット」が優位ということもあり、「フィット」にお買い得感があります。
総合的なコストパフォーマンスでは「フィット」が有利な状況ですが、「ヴィッツ」で最も安価な「1.0F“Mパッケージ”」の価格は118万1520円と、軽自動車並か、それ以下の価格なっています。一方で「フィット」の最安価は前出の「13G・F」で142万8840円ですから、ニーズに対して幅広く対応できているという点で「ヴィッツ」の方がユーザーにはありがたいのかもしれません。
※ ※ ※
上記のようにコンパクトクラスで購入比較対象となりやすい「フィット」と「ヴィッツ」ですが、安価なグレードでは先進安全装備などがオプション装備になります。ほかにもオプション品によって大きく購入金額が変わりますので、購入される際は必要な装備品の検討や、試乗してみたフィーリングなども含めて選択してはいかがでしょうか。
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