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販売台数ランキングで3位に躍進 ルーミーは何がそんなに受けているのか!?

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販売台数ランキングで3位に躍進 ルーミーは何がそんなに受けているのか!?

 2020年10月の登録台数を見ると、トヨタ「ルーミー」が1万1487台を登録して小型/普通車の3位に入った。1位はトヨタ「ヤリス」の1万8592台だが、このなかには約6900台のトヨタ「ヤリスクロス」も含まれる。実質的に別の車種だから差し引くと、ヤリスの正味台数は約1万1690台だ。

 そうなると、2位にランクされているトヨタ「ライズ」の1万3256台が、実質的に小型/普通車のトップになる。1位:ライズ、2位:ヤリス、3位は約200台の僅差でルーミーとなった。

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 ヤリスの発売は2020年2月と新しく、ライズも2019年11月だから、ようやく1年を経過した程度だ。ところが、ルーミーの発売は2016年11月に遡る。発売から4年後の車種が、新型車に混ざって小型/普通車販売ランキングの上位に喰い込んだ。しかもルーミーの売れ行きは、前年に比べて1.7倍に増えている。この理由を探りたい。

文/渡辺陽一郎
写真/TOYOTA、編集部

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■好調な軽自動車に対抗して生み出されたルーミー

 ルーミーが好調に売れる背景には、複数の理由がある。まずは日本のニーズに合っていることだ。全長は3700mm(カスタムは3705mm)、全幅も1670mmとコンパクトで、最小回転半径は4.6m(カスタムは4.7m)に収まる。狭い裏道や駐車場でも運転しやすい。

 そのいっぽうで全高は1700mmを超えるから、ボディが小さい割に車内は広い。大人4名が快適に乗車できて、後席を畳むと自転車も積める。後席側にはスライドドアが備わって乗降性もいい。

 現在の価格は、ベーシックな「X」が衝突被害軽減ブレーキを装着して155万6500円、装備の充実した「G」は174万3500円だ。外観を上級化した「カスタムG」は191万4000円になる。

2020年9月にマイナーチェンジした「ルーミー」(写真はカスタムG-T、204万6000円)。カスタムはこちらのフロントフェイスデザインとなる

マイナーチェンジ前は「タンク」として販売していたが、マイナーチェンジを受けてベーシックなグレードはこちらのフロントフェイスデザインとなった(写真はG、174万3500円)

 プラットフォームは「パッソ」などと共通の小型車用だが、外観はダイハツ「タント」やホンダ「N-BOX」など、好調に売れる背の高い軽自動車に近い。価格は同等の装備を採用したタントと比べて15~20万円の上乗せだ。つまりルーミーは、売れ筋の軽自動車に似たボディスタイルと機能を採用したことで、好調な売れ行きを達成できた。

 ルーミーがこのような商品になった理由は、好調な軽自動車の売れ方にストップを掛けるべく開発されたからだ。開発を始めた2014年には、スズキ「先代ハスラー」のヒットによって軽自動車の販売合戦が激しくなり、新車として売られたクルマの41%を軽自動車が占めた(2020年1~10月は37%)。

 小型車から軽自動車に乗り替えるユーザーも急増したので、顧客の流出を防ぐことも視野に入れて、トヨタの主導でルーミー(姉妹車のトヨタ「タンク」/ダイハツ「トール」/スバル「ジャスティ」を含む)を開発した。

■車種統合と遅咲きだったことが好調の要因に

 好調に売れる軽自動車に似た小型車を投入する戦略は見事に当たり、売れ行きを伸ばした。トヨタ「ルーミー&タンク」の1カ月における平均登録台数は、以下のように推移している。

●ルーミー&タンクの1カ月平均登録台数の推移
2017年 ルーミー:6556台 タンク:5904台(合計:1万2460台)
2018年 ルーミー:7189台 タンク:6150台(合計:1万3339台)
2019年 ルーミー:7638台 タンク:6210台(合計:1万3848台)
2020年1~10月 ルーミー:6934台 タンク:3585台(合計:1万519台)

 1カ月平均の販売推移からわかるとおり、ルーミー&タンクは発売直後から今まで安定的に売れている。特に注目されるのは、2017年、2018年、2019年と、時間の経過に従って登録台数が増えていることだ。2020年の1カ月平均台数は減少したが、コロナ禍の影響を考えれば納得できる。

 そして時間を経過するほど売れ行きを伸ばす車種には、以前のホンダ「フィット」「N-BOX」、スズキ「ワゴンR」などがある。息の長い人気を獲得した車種に共通する売れ方だ。

 トヨタ「C-HR」のように注目を浴びて一気に売れ行きを伸ばした車種は、その後の衰退も早く訪れる。逆に最初は精彩を欠いても、少しずつ売れ行きを伸ばした場合は、長期間にわたって好調な販売を維持できる。ルーミー&タンクは後者の典型になる。

注目を浴びて一気に販売台数を伸ばした「C-HR」だったが、最近は一巡し急減速している。さらに「ライズ」「ヤリスクロス」といった身内に登場したライバルに押され、厳しい状況となっている

 また直近の10月に、ルーミーが前年の1.7倍に相当する1万台以上を登録して小型/普通車登録台数ランキングの上位に喰い込んだ理由は、2020年9月に行われたマイナーチェンジにある。

 フロントマスクを存在感の強いデザインに改めるなど、改良を施すいっぽう、タンクを廃止してトヨタブランドをルーミーに統合したからだ。ルーミーの登録台数は、タンクの需要を吸収したことでさらに増加した。

2020年9月のマイナーチェンジで「ルーミー」に統合された「タンク」。2019年までは1カ月における平均登録台数がルーミーと大きく違ってはいなかった

 トヨタは2020年5月以降、国内の販売体制を見直して、全国の全店ですべてのトヨタ車を扱う体制に移行した。そのために販売系列に応じて設けていた姉妹車を存続させる必要がなくなり、ルーミーに統合している。

 以前からルーミー+タンクの登録台数を合計すると、上に示したとおり、1カ月平均で1万3000台以上に達していた。タンクを廃止すれば、ルーミーが1万台を超えるのは当然の成り行きであった。

 それにしてもルーミーの売れ行きは、新型車のヤリスに匹敵するから、息の長い人気車であることに変わりはない。販売店ではルーミーの人気に関して、以下のように述べている。

「ルーミーは販売が好調で、今は納期も長いです。2020年11月中旬に契約して、納車は2021年3月頃になります。ボディがコンパクトで視界もよいために運転しやすく、スライドドアで乗降性も優れています。車内の広さも人気の理由です。先ごろのマイナーチェンジで、フロントマスクの存在感も強めました。そのためにノアのようなミニバン、ヴィッツやパッソのようなコンパクトカーなど、いろいろな車種のお客様がルーミーに乗り替えています」

軽スーパーハイトワゴンからの乗り換え層にニーズの高いスライドドアを採用、軽自動車と比較してゆとりのある室内空間を確保するなど、売れる要素はしっかり押さえている

 軽自動車のスーパーハイトワゴンを小型車に拡大したようなルーミーは、運転のしやすさ、快適な居住性、使いやすい荷室などを兼ね備えて、もともと人気が高かった。直近ではマイナーチェンジを行って外観の存在感を強め、タンクを廃止したから、ルーミーの需要がますます増えた。これらの相乗効果で、10月の登録台数が1万台を超えたわけだ。

 ルーミーは、外観の似ている軽自動車のN-BOXやタントと同様、日本のユーザーを見据えた商品開発で売れ行きを伸ばした。海外向けの車種が売れず、日本向けのクルマが好調なのは、当然の結果だ。

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