大排気量のカワサキらしく!!
カワサキが1975年の開発凍結以来、しっかり保管していた「X-99 プロトタイプ」。たいへん貴重な車両を目の当たりにすることができましたが、なんと、ロータリーエンジン搭載車なのです。
バイクでロータリーエンジンは馴染みがありませんが、四輪ではマツダがコスモスポーツからRX-8まで長らく採用し、その仕組みや構造はネットを検索すれば動画で見れたりしますので、よりわかりやすいと思いますので説明は割愛させていただきますが、国産のオートバイではスズキが1974年に「RE-5」(水油冷シングルロータ式497cc)を発売しています。ちなみにヤマハも「RZ201」というネーミングで2ローター式660ccを開発していました。
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「X-99」は排気量ではそれらを凌ぐ2ローター式896.8ccで開発が進み、吸気方式はエンジン左右方向から吸気するサイドポートを主ポートとし、エンジン前後方向から吸気するペリフェラルポートを補助ポートとした、クロスポートを採用しています。
サイドポートを採用することでアイドリング・低速域での安定性が確保され、高回転域ではエンジン左側にあるスロットルケーブルリンクを介してバルブが開き、ペリフェラルポートからも吸気する仕様でした。
冷却はハウジング本体を水冷。ローターは周辺装備をコンパクトにするため、混合気の気化潜熱を利用した空冷としています。
谷田部でのテストにも漕ぎ着けていた!!
試作エンジンは1974年6月の性能テストで、最高出力85.1ps、最大トルク9.96kg-mを記録。その後、谷田部テストコースで実走テストを実施。レシプロエンジンに比べ、振動の低さやスムーズさは予想どおりでしたが、テストでは低回転域でのメカノイズ、エンジンブレーキの弱さ、熱問題のほか、想定以上の燃費の悪さが露呈したといいます。
大きな市場であるアメリカでEPA(アメリカ環境保護局)の排気ガス規制強化、そして当時のオイルショックによる原油価格高騰もあり、このテストを契機に「X-99」の評価は修正され、75年に開発を保留。完成度は高かったにもかかわらず、開発は事実上の凍結となりました。
なお、開発保留時のエンジン性能は、最高出力87.8ps、最大トルク10.78kg-mにまで達していたそうです。車体は当時評価の高かった「Z1」の技術が継承されていますが、よく見るとフレームや外装、シート、マフラーなど専用設計だったことがわかります。
時代にマッチしなかった
もし、このまま開発が続けられて、アメリカの排ガス規制強化やオイルショックがなければ……。考えただけでワクワクしてきます。「Z1」の82ps/8,500rpm、7.5kgmを上回るモンスターマシンが誕生していたかもしれません。
おしまい。。。
文:青木タカオ/画像提供:カワサキモータースジャパン
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