■トヨタの全店併売化以降も、タンクよりルーミーが売れているのは何故?
トヨタは2020年5月に全車種の全店併売化を開始しました。これまでは系列によって扱い車種が異なっており、そのための兄弟車も用意されていましたが、今後は兄弟車も同じ販売店で比較検討できるようになりました。
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しかし、同じ販売店で購入できるようになったにも関わらず、兄弟車間で売れ行きの差が大きくなった車種も存在します。いったいなぜなのでしょうか。
トヨタの国内販売における強みは、昭和の時代から整備した全国各地の販売網です。
そして、販売店の系列(チャネル)ごとに売り分けられる、シャシやボディが共通で一部デザインなどが違う兄弟車を数多く送り出してきました。
しかし、トヨタは2020年5月から全国すべてのトヨタ系販売店で全車種の併売化を実施すると2019年5月に発表。そして、予定どおり2020年5月に全国で実施となりました。
今後は車種整理がおこなわれるといわれていますが、2020年7月時点ではミニバンでは「ヴォクシー/ノア/エスクァイア」や、「アルファード/ヴェルファイア」などの兄弟車が存在。
ユーザーは同じ販売店で兄弟車同士を比較検討できる環境となりました。
そんななか、兄弟車の組み合わせのひとつに、2016年11月発売のコンパクトトールワゴン「ルーミー/タンク」が存在します。
ルーミーとタンクはともにダイハツ「トール」のOEM車両で、スバルからは「ジャスティ」としても販売されています。
グレード体系や車両価格は同一で、一部のデザインが異なること以外に大きな差別化要素はありません。
もともと、前出の販売系列ではルーミーがカローラ店とトヨタ店、タンクはネッツ店とトヨペット店での取り扱い車種で、これまでの実績を見ると、ルーミーの売れ行きはタンクを上回っていました。
日本自動車販売協会連合会が発表する販売データを見ると、発売翌年の2017年にルーミーは7万8690台、タンクは7万839台の販売台数を記録。
その後、両車は毎年販売台数を伸ばしましたが、2017年から2019年のいずれの年もタンクよりルーミーが約1割から約2割ほど販売台数が多い状況でした。
2020年の1月から4月の平均販売台数はルーミーが7170台、タンクは5801台。タンクよりルーミーは2割ほど販売台数が多い結果となりました。
そのうえで、全国での全車種併売化がおこなわれた2020年5月と6月の平均販売台数はルーミーが4472台、タンクは2627台と、これまでより販売台数差の比率が大きくなったのです。
同じ販売店で兄弟車を比較可能になったことで、差が縮まる可能性もありましたが、差が広がった要因はどこにあったのでしょうか。
かつてトヨタ系ディーラーの営業を経験した人に、考えられる要因を聞きました。
「ルーミーのほうが売れる要因として、まず考えられるのは外見です。トヨタの新車を購入する層が、最近のトヨタのミニバンに似た大型フロントグリルを装着したルーミーに惹かれる、ということは十分に考えられます」
ルーミー/タンクで最大の違いとなるフロントグリルについて、ルーミーは縦長の大型タイプを装着。これは、同社のミニバンラインナップにある「ノア」などにも近いデザインで、車格以上の存在感を与えるパーツとなります。
一方、タンクはフロントグリルが横長で、フロントバンパーの開口部の方が台形で大きくデザインされ、すっきりした印象を受けます。
■販売網の事情もルーミー/タンクに影響している?
実際の販売面ではどのような声が聞かれるのでしょうか。
現在両車を取り扱っているカローラ店の販売店スタッフは、ルーミーとタンクの特徴について次のように話します。
「もともとルーミーを取り扱っていたこともあり、ルーミーのほうが人気です。とくに、ウインターレジャーに頼もしい4WD仕様でも、価格が手ごろなのがおすすめの部分です」(カローラ店の販売店スタッフ)
また、前出の元営業マンは次のようにも話します。
「販売店側や、各販売スタッフ側の事情もルーミーとタンクの販売に影響があると思います。
販売スタッフからすると、従来販売していた売り慣れたクルマのほうがすすめやすく、兄弟車とはいえ、ある日突然別のクルマをすすめることはないでしょう。
また、2019年に各チャネルでの併売化を発表してから時間が経っていますので、メーカーと各ディーラーでの販売目標台数の擦り合わせもできているはずです。
そして(旧取り扱い車種の)価格帯、顧客層や市場動向などから考えれば、今までの主力扱い車種に近いカローラ店が比較的優位となることも考えられます」
※ ※ ※
今後トヨタは車種の統廃合をおこなっていくと噂されていますが、販売実績も含めどの車種が継続となるのか注目されます。
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