■歴代の「プリウス」を(ほぼ)買い続けた自動車評論家が25年の歴史を振り返る
2023年を代表する1台として、トヨタ「プリウス」(5代目)が12月7日に「2023-2024 日本・カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」を受賞しました。
ハイブリッドを世界に広めた「エコカー」のパイオニアであるプリウスも、近年は存在感を失いつつあったなか、1月に発表された5代目では、一体どのようにして再び蘇ることができたのでしょうか。
【画像】めちゃカッコいい! 斬新すぎる5代目「プリウス」を画像で見る(30枚以上)
2023年のCOTYはプリウスが獲得した。
プリウスがCOTYを獲得するのは初代と3代目に続く3回目。COTY獲得率ということで考えたら、ホンダ「アコード」と並んでTOPクラスとなる。
かくいう私(国沢光宏)も、COTYを獲得した3回は全て満点を入れている。
ちなみに2代目も良いクルマだったものの、大いに迷った末、4代目のスバル「レガシィ」に10点満点。4代目プリウスについていえば、デザインからしてお話になっていない。
また、私自身プリウスのパワーユニットに激しく共感し、初代モデルは初期(10型)と後期(11型)と2台乗り継いだ。
さらに2代目と3代目も購入してます。4代目は見た瞬間に購買意欲をなくした。
ここで改めて、25年以上の歴史を持つプリウスというクルマについて考えてみたい。
1997年に登場した初代は、説明するまでも無く世界初の複数のパワーソースを使う「ハイブリッド」というパワーユニットを実用化した。
プリウスに積まれるハイブリッドシステムの面白さはふたつ。
ひとつめは、1.5リッターで58馬力という、単独では使えないような低パワーながら圧倒的に熱効率の良いエンジンを開発し、必要な時にパワーを補うモーターを組み合わせ、使い勝手の良いパワーユニットに仕上げたこと。
ふたつめは、ブレーキ時に走行エネルギーを電気に変換して貯め、それを加速時に使うというエネルギーのリサイクルを行うことである。
あまりに革新的なパワーユニットで、発売当初は大容量走行用バッテリーやインバーターのノウハウも少なかった。
インバーターは漏れなく壊れ、充電出来なくなって「亀マーク」が点灯したり、電源をオフにすると走らなくなるというトラブルが発生するなどし、走行用バッテリーも寿命が短かった。
されどトヨタの対応は万全。私は羽田空港で動かなくなってしまったときに、旅行中に引き取りに来てくれ、帰ったら修理されていました。
走行用バッテリーも初代前期型に限り、非公式ながら「乗っている間は無償交換」という異例の対応を取る。
先日「このあたりで終了します」となったものの、26年間も無償交換を続けたのだから素晴らしい。
こうした初期トラブルを受け改良を加えた初代・後期型以降の走行用バッテリーは、普通に使っている限りクルマの寿命と同じくらい使えます。
30万kmとか15年とかで交換する場合でも、中古バッテリーなどもあるため高くない。
■再び蘇った5代目「プリウス」! 開発チーム奮起のきっかけは「4代目」!?
2003年に登場した2代目プリウスは、キャビンスペースを確保しながら空気抵抗を減らすため、4ドアセダンから5ドアハッチバックに変更。基本的に初代後期型と同じパワーユニットを使う。
改めて2代目プリウスを振り返ると、インテリアなどにお金をしっかり掛けており、良心的なクルマ作りだった。
また、2代目からアメリカへの輸出も始まり、折からのガソリン高騰を追い風に、途中から販売台数を一気に伸ばす。
決定的なヒット作となるのが、2009年登場の3代目プリウスだ。
ボディはさらに大型化し、それに見合った動力性能を持たせるべくエンジンも1.5リッターから1.8リッターへ拡大した。
それだけだと燃費が落ちてしまうことから、モーターの効率を高めるリダクションギアを使う第2世代のハイブリッドといえる「THS(トヨタハイブリッドシステム)-II」になった。
併せてパワーユニットの原価低減を行い、実質的に値下げ。デザインも高い評価を得て、世界的なヒットを飛ばす。
3代目プリウスは、6年間の総生産台数227万台。月間4万台近く売れた年もあったほど。
しかしその流れを受けて2015年にデビューした4代目が、徹底的に酷かった。
デビューから2年くらいはプリウスという“バッジ”で売れたが、そこから急降下。最終的に3代目の10分の1くらいの台数になってしまう。
この流れを受け「プリウスの寿命は終わった」と判断する人がトヨタ内部で多かったそうな。「タクシー専用車にしたらいい」という意見もあったほど。
しかしトヨタの中嶋副社長(当時はプリウスクラスのプレジデント)や開発陣が「どうせ売れないのなら思い切りクルマ好きに振ってやる!」と開き直り、5代目の超スタイリッシュなデザインを選択。
しかもパワフルな走りを追求したクルマになった。
開発チームは、唸りを上げる「空振り」となることも覚悟したという。
欧州仕様など、4代目プリウスの売れ行きが酷かったため、PHEVしか用意しなかったほどである。
しかしフタを開けてみたら、5代目プリウスは世界中から圧倒的な評価を受けた。
直近では販売に生産が全く追いつかない状況。やはりクルマって「デザイン」だ。
※ ※ ※
先日、タイで耐久レース仕様の5代目新型プリウスが出てきた。
写真を見て頂ければ解る通り、クーペルックのボディシルエットで、サーキットにもめっちゃ似合う。
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