今や日本車では希少な後輪駆動スポーツであるスバル「BRZ」の魅力とは? 個人的にも購入を考えている今尾直樹が考えた!
たかが7mm、されど7mm
“最高級セダン”と呼ぶにふさわしい乗り味とは──新型メルセデス・ベンツS580 4MATIC試乗記
じつは私、86かBRZを買おうかな……と思っているのです。でも、2021年に発売となった2代目には乗ったことがない。だから、ぜひ一度、試乗してみたかった。そこで今回、86/BRZのうち、スバルBRZに試乗させていただいた。今回のBRZ試乗は、じつに個人的な動機からだったことを告白しておきます。
特にスバルにこだわっていたわけではない。GR86でもよかった。広報車の都合で、たまたまスバルBRZになった。テスト車は、RとS、2グレードあるうちの、高いほうのSの6MTで、スバルのWRC参戦時代のイメージを引き継ぐ「WRブルー・パール」というボディ色をまとっていた。
巷で見かけるのは86のほうが圧倒的に多くて、それは白か赤、オレンジだったりするから、少々違和感があった。
でも、「ボクサー4」に代表されるようにスバルの技術が詰まっているのだから、あえてBRZを選ぶのもエンスーらしいこだわりになる。価格は326万7000円と、思っていたより安い。単に350万ぐらいすると私が勘違いしていたこともある。350万円というのはGR86のAT車の値段だった。
恵比寿にあるスバル本社で試乗車に乗り込み、その際、着座位置の低さに驚いた。筆者の日常の足は2ボックスのFWDだから、なおさらである。水平対向4気筒、別名ボクサー4エンジンをフロントに搭載する後輪駆動の2+2のスポーツカーである86/BRZは“低重心”を初代以来のテーマにしている。
2代目では、そのテーマをさらに深掘りし、全高を先代より10mm、乗員が座るヒップ・ポイントを同5mm、地面に近づけている。運転席と助手席との距離、いわゆるカップル・ディスタンスを7mm近づけることで、回答性を向上させてもいる。自動車がモテるアイテムだと考えられた時代だったら、メチャクチャ大ニュースになったことだろう。たかが7mm、されど7mm。フロントのフェンダーとエンジン・フード、エンジンのアンダー・カバー、ルーフにアルミ材を使用し、軽量化を徹底してもいる。アルミのルーフは低重心化にも貢献しているにちがいない。
景色が違って見えたエンジンはスタートさせた瞬間から存在を主張する。記憶のなかの2.0リッター時代より、目覚めるときのサウンドからして力強い。ボア×ストローク=86×86mmから、ボアだけ94mmに広げることで、排気量を1998ccから2387ccに拡大。キャパシティ・アップに優るチューンはいまもってない、ということだろう。
最高出力は200ps/7000rpmから同回転数で235psに、最大トルクは205Nm/6400~6600rpmから250Nm/3700rpmに向上している。
トルクが低回転から大幅にアップしていることは、運転していてはっきりわかる。そもそも発進が楽ちんになっている。初代の初期型は、私、何度かエンストさせた気がする。
もうひとつ印象的なのはボディの剛性感である。記憶のなかの初代より、かなりカッチリしている。おそらくペダル類のタッチも先代よりカッチとしているのではあるまいか。単に排気量とパワーが増しただけではなくて、クルマがスポーツカーとして成長、成熟している。
初代から始まったワンメイクレースをはじめとするモータースポーツ参戦が開発に生きている。よろこばしいことに、サラブレッドスポーツカーの育成方法が86/BRZでは採用されており、2代目ではそれが実感できるのである。
ボディのサイズはほぼ先代を踏襲している。細かく見ると、スペック上のホイールベースは5mm、全長は10mm延びている。ホイールが17インチから18インチにアップしていることもあって、車重は若干増えている。
初代トヨタ86GTリミテッドのMTの車重1230kg、GR86RZのMTは、BRZの試乗車と同じ1270kgである。装備の違いもあるだろうから、あくまで参考地だけれど、おそらく40kgの重量増のなにがしかはボディの補強に使われていると想像される。
乗り心地ははっきり硬めだ。でも、低速でも嫌な感じはまったくない。路面が荒れていても、215/40R18のタイヤとホイールが暴れることもない。標準装着のミシュラン・パイロット・スポーツ4もいい仕事をしているのだろう。首都高速の目地段差でも直接的なショックは伝わってこない。細かいことを申し上げると、ピッチング方向の揺れが若干ある。
印象的なのは繊細なステアリング・フィールである。これぞ日常レベルでわかる、後輪駆動車の最大のメリットであると筆者は思う。ドリフトは非日常の世界で、今回も私はまったく、ドリフトのドの字も味わっていない。
コーナーでは、といっても首都高しか今回は走っていないのですけれど、いかにも低重心、ワイドトレッドという印象の姿勢を維持する。ロールはごくごく軽微で、横Gだけ発生している感じ。こういう感覚はフロント・エンジン/後輪駆動のスポーツカーでしか味わえない。しかも、それをマニュアルで、ということは自分が主体的に操っているという感覚でもって堪能できるのである。だから、いいよなぁ。いつも通る首都高速の向島線が、たまさか空いていたこともあって、景色が違って見えた。
彼らの奮闘努力に貢献したい気になったことがふたつあるので、細かいことですけれど、書いておきたい。ひとつは、5000rpm以上まわしたときのエンジン・サウンドである。これはASC(アコースティック・サウンド・コントロール)が音を強調しているようだけれど、もうちょっと色気があるといいなぁと思った。筆者はケチだからやらないだろうけれど、アフター・パーツの出番かもしれない。
もうひとつは、せっかく全長の短いフラット4を搭載しているのだから、エンジンの搭載位置をもうちょっとキャビン寄りにして、つまりフロント・ミドシップにしてもよかったのではないか? という点である。ボクサー4とFFの長い経験を持つスバルは、前後重量配分50:50を理想としていないのだろう。フロントを重くしたほうが高速での直進安定性の面で有利だとか、あるいは後ろを軽くしたほうがドリフトしやすいというような理由があるかもしれない。ちなみに車検証の数値にみる前後重量配分は、BRZ SのMTの場合、700kg:570kgで、55:45となる。
55:45はイケナイわけではないことは前述のごとくである。ただ、せっかくのボクサー4をパッケージ面で生かしたら、50:50の後輪駆動のスポーツカーがわりと手軽に実現したのでは……と、思ったのでした。
走るだけでなく、日常生活でも使ってみた。拝借中、ニトリに買い物に行ったのである。ミニバンやSUV、軽自動車であふれる街中だと、みなさんの腰から下を見ている気になる。ロング・ノーズで着座位置が低いところは、1980~1990年代のスペシャルカーを思い出させた。
トヨタとスバルは86/BRZでワンメイク・レースだけではなくて、オーナー対象の走行会を開いたりもして、モータースポーツとスポーツ・ドライビング、ドリフトの普及につとめている。ハードだけでなく、ソフト面も用意することで、ニッポンのスポーツカー文化を盛り上げようとしている。
なんとも素晴らしいことだけれど、これは自動車メーカーの危機感のあらわれでもある。私は微力ながら、86/BRZのいちオーナーとなることで、彼らの奮闘努力に貢献したい。
と、思いつつ、まだ買っておらんです。われながら決断が遅い。新車じゃなくてもよいのではないかと思ったり、それなら選択肢は俄然広がり、あれやこれやと夢想したりして。それと、そもそも86/BRZを買いたいと思ったのは、現在の愛車の、2016年に中古で買った2002年初度登録のルノーの「ルーテシア2.0ルノー・スポール」の電子スロットルの調子が悪いから、なのだけれど、ルーテシアのヤツ、スクラップにされようとしていることに気づいたみたいで、ここのところエンジンの警告灯がともらなくなり、調子がよいフリをしている。
というわけで、私の決断はいまも先延ばしになっている。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
マジか…? 新制度導入で「車検」通らないかも!? 10月から始まった“新たな車検”何が変わった? 覚えておきたい「OBD検査」の正体とは
ついにその瞬間がやってきた!!!!! シビックベースの70年代風GTカー[ミツオカM55]が限定100台800万円で販売!!!!! 即売必至か?
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
ついにトヨタ「新型セリカ」復活!? 次期8代目登場か… 中嶋副社長「セリカ、やっちゃいます。」宣言! 会長も後押し!? ラリージャパンで語られたコトとは
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
レクサス新型「小型スポーツカー」がスゴい! “テンロクターボ”×初の6速MTを搭載! 最小SUV「LBX MORIZO RR」どんなモデル?
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント