中国には同国専売のSUV、「クラウンクルーガー」というモデルがあるのをご存じだろうか? もちろん、例のクラウンエンブレムを持つれっきとしたクラウンなのだ。今回、中国現地で試乗する貴重な機会を得たので紹介しよう。
文/ベストカーWeb編集部・渡邊龍生、写真/mewcars編集部、トヨタ
俺も中国では立派なクラウンシリーズなんだぜ! さすがの静粛性!! クラウンクルーガー試乗!!
■中国国内では「クラウン」の名はブランド?
威厳のある顔つきと言っても過言ではない!? やはりクラウンエンブレムは押し出し感がある
現地メディアの人間によると、中国では「クラウン」と聞くと特別な感情があるのだという。「それって日本でのことじゃないの?」と思って聞いてみると、中国現地でクラウンシリーズが販売されたのは意外にも歴史が古く、2代目クラウンの頃の1964年からとのことだ。
1990年代には少数が輸入された8代目クラウン以後は、徐々に中国国内での評判が上がっていき、輸入台数を増やしていった経緯を持つ。
その後、トヨタは1998年に四川トヨタ(のちの四川一汽トヨタ)、2000年に天津トヨタ(のちの天津一汽トヨタ)などの合弁会社を設立。また、2005年に「皇冠」の名で現地生産が12代目のゼロクラウンから始まっている。
以後、クラウンには憧れめいた感情から、中国国内ではクラウンは日本車の成功ブランドとして確立されたのだという。しかし、近年は高級車需要がミニバンのアルファードとヴェルファイアなどに移ったことから、一汽トヨタは2020年4月に先代クラウンの生産と販売を終えていた。
■クルーガーといえばかつて日本でも販売されたあのモデル?
2000年に登場した初代クルーガー。モデル途中にはハイブリッドモデルも追加されている
このクラウンの名が中国で復活したのが2021年の上海モーターショーで、ミニバンのクラウンヴェルファイア、SUVのクラウンクルーガーだった。クラウンヴェルファイアの日本仕様ヴェルファイアのマイチェンモデルにクラウンの名を与えたもので、一方のクラウンクルーガーは広汽トヨタが販売している「クルーガー」の姉妹車なのだ。
このクルーガーという名前を聞いてピンときた方も多いだろう。2000年に登場したSUV、初代クルーガー(海外名:ハイランダー)は2007年まで日本国内でも販売され、2代目ハリアーハイブリッドの姉妹車としてクルーガーハイブリッドも存在していた。
その後、2007年に2代目ハイランダー、2013年に3代目ハイランダーにFMCされ、2019年に現行型となる4代目モデルが登場していた。中国市場では前述のようにハイランダーの姉妹車として2021年に現行モデルの導入が開始された。
基本的にはTNGAプラットフォーム(GA-K)を採用し、2列シートの5人乗り、3列シートの7人乗り仕様を設定。パワートレーンは直4、2.5Lハイブリッドを設定し、FFと4WDを設定するが、2022年8月には2L直噴ターボモデルも追加されている。
■クラウンエンブレムを備え、スポーティ仕様の外観に
全長5015×全幅1930×全高1750mm、ホイールベース2850mmという大型の重量級ボディすらもクラウンシリーズにふさわしい……のか?
今回、現地で用意されていたのは2.5Lハイブリッドの4WD車だ。姉妹車のハイランダーとの違いだが、フロントグリルの中央に鎮座するクラウンエンブレムを備えているほか、3連仕様のLEDヘッドライト、北米でのハイランダーのスポーティモデル「XSE」フロントグリルを装着しており、スポーティ感が強調されている。
直4、2.5Lハイブリッドを搭載する。システム出力は250ps
クラウンクルーガーのボディサイズは全長5015×全幅1930×全高1750mm、ホイールベース2850mm。全長4825×全幅1885×全高1835-1850 mm、ホイールベース2790mmのランクル300より全高以外はかなり大柄なボディを持っていることがおわかりいただけるだろう。
ちなみに中国市場でのクラウンクルーガーの販売価格は27万5800~35万中国元(日本円で約550万~約700万円)となっている。
■静粛性こそクラウンクルーガーの真骨頂!
クラウンクルーガーのインテリア。トヨタハイブリッド車特有となる操作性への安心感は左ハンドル仕様車でもそう変わらなかった
前段が長くなってしまったが、クラウンクルーガーの試乗にいきたい。北京市郊外の駐車場内などを走行したのだが、左ハンドル仕様とはいえそこはトヨタ車の方程式に則って操作感などはトヨタ製ハイブリッドSUVと何ら変わるところはなく、安心感を持ってドライブできた。
かなり大柄なボディのクラウンクルーガーだが、重量級ボディをスムーズに走らせるシステム出力250psの2.5Lハイブリッドはさすがの完成度。もちろん、走りはギンギンなものではなかったのだが、必要十分な動力性能。意外に取り回しも悪くなく、Uターンする時もさほど苦労はしなかった。
何よりも特筆すべきはその静粛性だ。フロントガラスには遮音ガラスが採用されているほか、遮音材と制振材を多用したことで快適性は上々だし、乗り心地も非常にいい。また、ADASもトヨタセーフティセンスのほか、パノラミックモニタリングやパークアシストの採用などで抜かりなし。
一汽トヨタのねらいどおり、クラウンのブランドをセダンとして限定にするのではなく、SUVなどほかのカテゴリーをも視野に入れることでクラウン伝統のブランドに磨きをかけている1台だと言えるだろう。
クラウンクルーガーのリアビュー。ランクル300よりも車高は100mmほど低く、伸びやかなボディラインはスタイリッシュだ
全長5m超えというボディを持つこのクラウンクルーガー、「クラウン」という名に恥じぬ実力を持っていると感じた。でも、やはり日本市場で売るにはボディが大きすぎるのは否めないかな(笑)。
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みんなのコメント
本当はライズかRAV4あたりにクラウンエンブレム貼ったやろ?