長期修理のため昨年の半分以上は乗る事が出来なかった筆者の愛車セリカLB2000GTですが、もしかしたら部品取りを丸ごと一台、いわゆる「丸車(まるしゃ)」で買い付けたり、先の見えない修理という話に触れた時点で、聡明な読者の方ならピンときたかと思います。実は昨年5月東名高速で自損事故を起こしてしまいました。
自戒と交通安全の啓発の意味合いを込めてその経緯を複数回にわたって記したいと思います。またこれは筆者が遭遇した一例であり、必ずしも同様の経緯や手続きが適用されるとは限らない事をご了承願います。
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2018年5月12日正午頃事故発生
この日、ツインメッセ静岡で開催されている静岡ホビーショーに向かっている途中での出来事でした。
東名高速上り線安部川橋を走行し目的最寄りのICとなる静岡ICまで1kmの標識が見え、ICから降りるため右車線から左車線に車線変更をした際、左車線の走行中の車両との速度差が思った以上にあったため、フルブレーキングをした時の事です。スッとタイヤがグリップが抜ける感覚で「タイヤがロックした!」と思った瞬間、視界を覆う白煙と共に突然の横Gと鈍い衝撃音が2回、車線変更で左にステアを切った状態でタイヤがロックしそのままスキッドを起こして左方向にスピン、車体右前部と右後部を欄干にぶつけて1回転した状態で路肩に停車しました。
一瞬、オーディオが止まって時計がリセットされたので、衝撃でイグニッションの回路がOFFになったかバッテリーケーブルが外れかけたようです。幸い自分に怪我はなく、他人を巻き込んだりしなかったのがせめてもの救いかもしれません。
まずは警察と保険会社に連絡
自走は無理と判断し、ハザードランプを点滅させ一呼吸おいてから、まずは警察に通報。事故を起こした場所と経緯と他にけが人はなく自損事故であることを伝えます。次に保険会社に連絡、筆者の場合保険会社にレッカーの付帯サービスをつけていたので、キャリアカーの手配も同時もお願いしました。
すると警察と中日本高速道路株式会社のハイウェイパトロールがほぼ同時に到着。ちなみに速度は具体的な数値は控えさせていただきますが、スリップ痕を見た警察官も「まぁ、遅くも無く早くも無く、大体みなさんそのくらいの速度で走ってますね。」という範囲内の速度であったとだけ申し添えておきます。
高速道路上で事故、または故障に遭った場合は追突の危険があります。必ずガードレールの外に退避、また筆者のように橋の上もしくはトンネル内等、ガードレールの外に出られない場所は車内で待機し、車外に出ないようにしましょう。(注 警察官立ち合いの下撮影しています)
中日本高速道路のハイウェイパトロールからは
警察の見分では免許証、車検証、自賠責保険の提示が求められます。筆者の場合、10年分くらいの自賠責の証書をそのまま車検証入れに入れっぱなしにしていたため、探すのに一苦労しました。事故に遭った際はどうしても焦っているものです。
万が一の際にすぐに必要な書類を提示できるよう、車検証の原本と最新の自賠責の証書はすぐ取り出せるように整理しておきましょう。
高速道路株式会社のハイウェイパトロールからは「前の休憩はどこで取りましたか?」ということを聞かれました。筆者は「浜名湖SAでシートを倒して軽く横になって休憩した。」と答えましたが、現在ハイウェイパトロールは事故を起こしたドライバーには必ず休憩した場所を聞いているそうで、長時間の運転には適度に休憩を取るように促しているようです。
また自損事故でも道路の設備を破損した場合は対物補償の対象になります。筆者の場合、橋の欄干のコンクリート壁にぶつかったのですが、後日このコンクリート壁を補修する必要があるかどうかを調査し、補修費用の請求が来るという旨の説明を受けました。
この時の破損はコンクリート壁と橋の継ぎ目のボルト擦過痕くらいで、とくにコンクリート壁に亀裂、破砕が発生したわけでもなく、しいて言えば、ボルトを交換する必要があるかどうかくらいとのこと。後日道路の破損については何も連絡が無かったので、どうやら交換の必要は無かったようです。
しかし、道路の破損の説明でこの時はじめて聞いたのですが、今はもし道路の破損を補償する必要があった場合、取り換えたボルトや割れたコンクリートやアスファルト等を引き取る事もできるそうです。と、いうのも最近は年々厳しくなる企業コンプライアンスの関係で社用車で事故を起こした場合、その会社内で破損した道路設備の弁償費用の決済時に「証拠物品」として事故で破損したコンクリート、アスファルト片、道路設備を提出するように求められることがあるようで、後日最寄りの高速道路株式会社の事務所に取りに行くことができるようにすることもできるそうです。
気が重い帰路
キャリアカーにセリカLBを載せ、帰路に付きます。帰路の車中だんだん冷静になってくると次第に現実を受け入れ始め気が重くなります。実は数週間前以前CLでも紹介した村上タイヤの村上社長にタイヤの溝が減ってきたので、ヴェレデステインのスプリントクラシックの在庫を調べてもらい「すぐに空輸でできる状態なので、摩耗が気になるならすぐに交換してください」と言われ「今月は色々予定があるから来月オーダーしようかな」と考えていた矢先でした。
もし新品のタイヤならスキッドは回避できたかもしれません。他にももう少し早めに減速していれば、気まぐれで東名ではなく走りやすい新東名で行けば、母親のクルーを借りていけば、そもそもホビーショーに行こうなどと考えなければ事故に遭わなかったかもしれない等、色々な考えがよぎります。しかし、後悔した所でどうにもなりません。幸い自分が入っている保険の補償金額でどうにか直せるかという感じでした。
そもそもクラシックカーでも車両保険に入れるのか?
結論からいうと入れます。ただしこれは「保険会社と代理店次第」と言ったところでしょう。具体的な保険会社の名前は伏せておきますが、クラシックカーやスポーツカー等に詳しく、そういったクルマの市場価格に詳しい代理店を選ぶと相応の車両保険に加入できる可能性が高くなります。
本来、車両保険は減価償却で算定するため、新車から一定年数を経過した車両は残存価値ゼロとなってしまい、毎月保険料を払っているのに補償金額はほとんどゼロというケースもあります。ただし、車両保険には「全損修理特約」という商品があり修理費用が車両保険金額を超えた場合、修理する場合に限って車両保険金額(全損)に+50万円まで修理費用の補償が受けられます。
初年度登録から2年以上経ったクルマに適用される商品なので、ある程度年数が経過したクルマで車両保険に入る、もしくは新車から2年以上たった際の保険の見直しで「全損修理特約」に入る事をお勧めします。
では筆者のセリカの場合、新車から40年以上経過しているので当然、減価償却では残存価値はゼロです。しかしご存知の通りクラシックカーの市場価格は世界的に高騰していて、初代セリカでも数百万円の値が付くケースも珍しくありません。減価償却と時価で著しい乖離が発生しているのです。そこで1973年型セリカLBに車両保険をつけるためにしたのが
・自動車雑誌やインターネットの広告の販売価格
・レストアにかかった費用や部品購入、ネットオークションの明細
この二つの項目の資料を出来る限り集めて、本来の保険の目的である「原状復帰」のためにはこれだけの「取得費用+部品」の購入費用とレストア費用がかかるという証明をしたうえで保険を審査してもらいました。幸いにも保険会社の担当者が「クラシックカー好き」ということもあり、親身になって尽力していただけた結果、3年契約で初年度180万円、翌年165万円、翌々年150万円という補償金額が付きました。更に年々市場価格が上昇して、コンディションを維持していれば市場価格が上がる事はあっても下がることは無いクラシックカーで杓子定規に補償金額が下がるというのもおかしな話なので、4年目以降の補償金額はご相談という形にしてもらえました。
筆者が事故を起こした時点で保険は2年目…最大165万円。まぁこれならどうにかなるだろうと思っていたのですが、修理をお願いした東海自動車の社長は険しい顔をして「金額的にはそれで直せないことは無いとは思うんだが、これは揉めるなぁ…」という不穏な言葉が…。次回は保険金の支払いが決まるまでの経緯や部品探しについて書きたいと思います。
[ライター・カメラ/鈴木 修一郎]
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