フェルディナント・ピエヒと日本のメーカーとの関係
ポルシェ社創業者の孫であるフェルディナント・ピエヒ(以下、ピエヒさん)。2019年8月、惜しまれながらこの世を去ったピエヒさんは、日本の自動車メーカーとも深い関わりがある。ポルシェを語るうえで欠かせないピエヒさんの功績について、あらためて触れておきたい。
ピエヒさんは日本を愛していた?【清水和夫のポルシェに乗らずに死ねるか】
トヨタがポルシェを救った!?
1980年代後半、日本はバブルに踊り、自動車メーカーはさまざまな技術に挑戦していた。ニッサンGT-R、ホンダNSX、トヨタ レクサス(初代セルシオ)、マツダ ロードスター、スバル レガシィ・・・30年の時が経っても存在感を放ち続ける、日本を代表するモデルたちが誕生したのは、まさにこのタイミングである。
日本車が性能面で欧州車に急接近したのだと、私が強く意識した瞬間でもあった。
その頃、欧州ではベルリンの壁が崩壊。東西ドイツが併合し民族分断が終焉の時を迎えたものの、東西の経済格差は大きくドイツの財政面を圧迫した。それに加え、ドイツの自動車メーカーでいうと、旧態化した生産システムに首脳陣は頭を悩ませていた。
一方、日本はすでにひとつのラインに多くのモデルを混流させる、フレキシブルで近代的な生産システを確立していた。ドイツ勢は大きく遅れをとってしまっていたが、そのファクトリーラインの刷新に挑戦した人物こそ、ポルシェ社からアウディ社を経てフォルクスワーゲン社のCEOに就いたフェルディナント・ピエヒ、その人である。
まずピエヒさんは、トヨタ生産システム(かんばん方式=ジャストインシステム)の生みの親であるトヨタ自動車元副社長の故・大野耐一さんの愛弟子で、生産技術部門で腕を振るいシステムを知り尽くした人材を指南役として招聘。二年にわたってポルシェの生産システムの大手術を敢行した。
その結果、ポルシェの工場からは無駄な部品が姿を消し、効率のよいスマートな生産システムへと生まれ変わった。この時、陣頭指揮を執ったのが元CEOのヴァンデリン・ヴィーデキング氏だった。プライドの高い技術者集団であったポルシェがトヨタから生産方式を学ぶという行為に、最初は多くの反発や軋轢を生んだというが、経営危機を乗り越えるための改善に成功。その改革後に生まれたモデルがタイプ996の911カレラである。
ピエヒさんはホンダで仕事をしたかった!?
ピエヒさんはニッポンを尊敬し、戦後わずかな時間で急成長した自動車産業を評価していた。当時、ドイツのシュピーゲル誌のインタビューで日本観を語っていたが、我々日本人を賞賛し感動させる内容だった。その一部を紹介すると、「私は日本に非常に感銘している。日本人の勤勉さ、規律を守る姿勢、民族の信じがたい結束力・・・私はこの国を賞賛する」と語っている。
さらにピエヒさんは自伝(第3章「日本の誘惑」Verlockung Japans)の中に「夢が叶うなら、第一候補はホンダ、第二候補はトヨタで働きたい」と記している。ピエヒさんはバイクを通じてホンダのことは知っていたが、ホンダの斬新な技術とその精神に賛同していたという。特にホンダS800を取り寄せて分解した際、「85psのアルミ製4気筒エンジンは、ポルシェの65psエンジンを時代遅れにするほどのレベルだ」と、すっかりそのエンジンに魅了されていたようだ(※)。
あまり知られていないが、トヨタからプリウスが発表される二年前にアウディはパラレル型ハイブリッド「DUO」を開発しており、私はインゴルシュタッドで試乗したことがあった。その時、ピエヒさんのカンパニーカーのアウディA8を見ることを許されたが、内装は漆塗りが施され、随所に日本愛を感じさせるアレンジが加わっていた。
日本人以上に日本の能力を信じていたピエヒさんが日本の生産方式を採り入れ、ポルシェをはじめドイツ自動車メーカーを救ったと言っても過言ではない。日本人にシンパシーを感じてくれていたピエヒさんが亡くなったことは残念で仕方がないが、残した功績によって今のポルシェの飛躍があることを忘れてはいけない。
ポルシェのEV、タイカン試乗
ポルシェの初EVモデル、タイカンの国際試乗会に参加してきた。アルプスのワインディングを走ってきたのだが、EV嫌いの私もエンジン車にはない異次元の走りに心を動かされた。もはやEVは手段のひとつである。タイカンもクルマとして魅力がなかったかといえば答えは「ノー」であり、逆にその走りはセクシーだった。次期911シリーズにも電動化の波はやってくるだろうが、これからポルシェの進む道をタイカンに乗って大いに感じることができた。正直それほどに走っていて楽しかったのである。
(※)参考文献:フォルクスワーゲン社とポルシェ社—同族統治と企業統治の狭間で ー吉森 賢 著)
TEXT/清水和夫(Kazuo SHIMIZU)
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