全国の大学で日々活動する自動車部を取材するこの企画。今回はミスタージャイアンツ・長嶋茂雄氏の母校としても知られる立教大学の自動車部にお邪魔した。いままでの大学の取材でもたびたび名前が聞かれた立大自動車部の唯一無二の特徴とは!?
※本稿は2024年3月のものです
文/奥野大志、写真/大石博久
初出:『ベストカー』2024年4月10日号
学生ジムカーナの定番インテグラタイプRからポロGTIに乗り換え!? その意外すぎるワケって? 躍進中の立教大学自動車部
■立教大学自動車部活動内容
広大な敷地を有するガレージ。サービスカーや積載車などのサポートカーも充実
・正式名称:立教大学体育会自動車部
・創部:1933年(取材時の時点で90周年)
・部員数:17名
・保有車両台数:4台(試合車)
・活動場所:富士見総合グラウンド内ガレージ
■言わずと知れた「ミスター」の母校!
新たに主将に就任した2年生の鈴木さん(左)と4年生の中山さん(右)。立大カラーを模索しながら鋭意活動中
これまで7つの大学を取材しましたが、取材中、一番名前を聞くことが多かったのが立教大学自動車部。その理由は後述しますが、念願叶ってやっと取材することができました。
立教大学は1874年にアメリカの宣教師が開設した「立教学校」をルーツとする大学。いわゆるキリスト教系の学校で、洗練されたイメージを持っている人が多いと思います。
ベストカー読者のみなさんはプロ野球界のレジェンド、長嶋茂雄さんの母校というイメージが強いでしょうか? 長嶋さんは名門、立大野球部を経て、昭和33年に巨人入団。その後の活躍はご承知のとおりです。
立大自動車部はその野球部と同じ体育会に所属し、創部90周年を迎えた由緒ある部。活動拠点のある埼玉県富士見市の「富士見総合グラウンド」に向かうと目の前には広大なガレージが!
軽く10台くらい入りそうな広い建屋と、ちょっとしたジムカーナができそうな広大な駐車場があり、なんとも恵まれた環境です。4年の中山将さんと、2024年から主将を務める2年の鈴木唯斗さんに話を聞きました。
「立教大学自動車部は現在17名が在籍しており、毎週土曜日、ガレージで活動しています。学連戦のジムカーナ、ダートラ、フィギュア、軽耐久に参加しているほか、eスポーツにも参加しています」(鈴木主将)。
■ジムカーナ用の試合車にフォルクスワーゲンポロGTIを使用
ジムカーナ用の試合車として2020年に導入したポロGTI。ポロの前は定番のインテグラタイプRだった
立大自動車部の最大の特徴は、ジムカーナ用の試合車にフォルクスワーゲンポロGTIを導入していること。ホンダインテグラタイプRが大半を占める学連戦において、ポロで出場している大学は皆無。かなりの大英断と言えます。
「うちもインテグラを使っていたのですが、部品がどんどん高くなり、維持するのが苦しくなりました。そこで、ツインチャージャーのポロに目を付けたのです。直線の速さもコーナリングも、設計が新しいクルマなので、そんなに見劣りしないだろうという算段があり、レギュレーションをよく研究し、2020年に導入しました」(中山さん)。
ポロはWRC(世界ラリー選手権)にワークス参戦していましたが、チューニングベースとしては一般的ではありません。そのため、ロールケージは海外のメーカーにワンオフ品を発注。外部の力を借りながらロールケージとデフを組み込み、試行錯誤しながらジムカーナ仕様のポロGTIを作り上げました。
「ドライブシャフトひとつとっても低コストで交換できますし、AT車なので全部員がステアリングとペダル操作に集中できます。突出した速さは厳しくても、平均して高い成績が見込めるのがポロです」(同)。
他大学の反響は大きく、ポロGTIは注目の的に。立大自動車部と言えばポロGTIというイメージが浸透していきます。立大自動車部にとって、注目度アップも織り込み済みで、狙いどおりの状況です。
「実は軽耐久でも、1990年代の軽自動車が大勢を占める中、新規格のスズキKeiを導入しました。ボディや足まわりがすごくよくなっているので、確かめることになったのですが、まわりは興味津々でした」(鈴木主将)。
「まわりから天邪鬼的なチョイスが立教らしいねって言われますが、ぼくらもちょっとそういうところを目指しています」(中山さん)。
他大学から立教の名前を聞くことが多かったのは、この攻めた試合車選びが理由。当然、ライバルのマークは厳しくなりますが、それも含めて立大自動車部は楽しんでいるのです。
「2023年の全日本ジムカーナ男子団体では29校中6位に入りました。これはインテグラでも出せなかった結果です。セッティングの正解はいまだに見つけられていないのですが、ここ2、3年の成果がようやく出せました」(中山さん)。
■自由な雰囲気で上位を狙う
女子部員の多さも立教大学自動車部の特徴。現在、一学年にひとりずつ、合計4人の女性部員が在籍する
また、立大自動車部のもうひとつの特徴が女子部員の多さ。現在、一学年にひとりずつ、合計4人の女性部員が在籍しており、学連戦の女子の部に出場しています。女子部員がいる自動車部が数少ないことを考えると、これは驚異的。
立大自動車部は今から7~8年前、ほとんど試合に出ず、自動車サークルになっていた時期があったそうですが、新たな監督の指導のもと、学連戦メインの活動を再開。
すると毎年のように女子部員が集まるようになり、好循環が生まれました。そして、ポロGTI導入により、それは加速。立大自動車部は今、最もモチベーションが高い状態にあります。
「ゆるさや自由なところがいい方向に向いているのかなと思いますね。強豪校と違い、厳格な上下関係もないですし、結構ワイワイした部活で、それなりの戦いができているので。そういうのをまさに目指してきたので、これも立教カラーですね」(中山さん)。
大胆な手法で大学自動車部界に新風を巻き起こした立大自動車部。2024年シーズンの戦いに注目です。
■自動車部員の愛車聞き込み大調査
●ミニクーパー 飯島季美花さん(異文化コミュニケーション学部4年)
飯島季美花さん(異文化コミュニケーション学部4年)
デザインがかわいいと思ってミニクーパーを選びました。マニュアル車に対する憧れがあったので、ミッションはMTです。もともとは街乗りというか家からここまで来るために買ったのですが、今はサーキットなどでの練習車としても使っています。一番のお気に入りは、珍しい白の純正ホイールです。
●マツダ ロードスター 星野光海さん(経営学部4年)
星野光海さん(経営学部4年)
父がクルマ好きでこだわりを持っているので、NB6が欲しいということになり、自分もOKを出して、2人で乗っています。軽さがロードスターの一番のポイントですが、運転していてもそれを感じることができ、楽しいクルマです。ジムカーナやサーキットには行っていますが、キレイなまま乗り続けています。
●アウディ S3セダン 我妻優宇さん(経営学部3年)
我妻優宇さん(経営学部3年)
アウディの魅力は男臭くもなく、女性的過ぎるわけでもなく、中世的なところです。母親のクルマなのですが、ぼくが免許を取ってから運転しなくなり、ほとんど乗っています。コーナーの立ち上がりは4WDのほうが気持ちいいですね。部活やプライベートで乗るぐらいで、ジムカーナでは走り込んでないですね。
●アウディ A6セダン 鈴木唯斗さん(経済学部2年)
鈴木唯斗さん(経済学部2年)
アウディが特別好きというわけではないのですが、これまでFR、FFと乗り継ぎ、今度は4WDに乗ってみたいという思いがあり、クワトロを搭載しているアウディを選びました。実はすべてセダンを選んでいるのですが、前後のボディにハコがあり、そこに足がついていると走りが結構変わってくるからです。
■そもそも「自動車部」ってナーニ?
2024年、立大自動車部が台風の目となる!?
自動車部はクルマの運転技術と整備力を競う運動部。野球部や陸上部などと同じ体育会に属し、全日本学生自動車連盟(学連)主催のジムカーナやダートラ、フィギュアなどに出場しています。
モータースポーツという言葉が一般的になる以前から、自動車部は活動しており、今回の立教大学のように長い歴史を誇るところが多いです。
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