遊び心のわかる経営陣のおかげで個性的なデザインに
スズキが2017年12月に発売した新型スペーシアとクロスビー(XBEE)は、いずれもシンプルながら個性的かつ可愛らしいデザインを持ち、東京モーターショーへ参考出品されたころから、老若男女問わず多くのユーザーから好評価を得ている。両車のデザインを統括した、スズキ四輪デザイン部エクステリア課の塚原 聖(つかはら・ひじり)課長代理に、それぞれの狙いを聞いた。
──スペーシア、とくに標準仕様のデザインテイストを初代より大きく変更したのはなぜでしょうか?
塚原 聖さん(以下、塚原さん):販売台数が競合他車より少なく、その原因を調べると他車より大きく見えないというのがありました。もちろん実際の寸法はあるのですが、お客さまからするとワゴンRの背高バージョンというイメージを持たれており、ディーラーまで足を運んでいただけなかったのです。そこで心機一転、大きく広く感じるデザインを目指すべきではないかと考えました。
──新型スペーシア・カスタムについては、2016年末に追加された先代「カスタムZ」の方向性を踏襲したのでしょうか?
塚原さん:そう考えていただければと思います。
──新型スペーシア・カスタムと先代カスタムZとの違いは?
塚原さん:大型グリルとヘッドライトのつながりは同じですが、標準仕様とともにエンジンフードの高さを上げていますので、視点が上に上がることでより大きく見えるよう狙っています。逆に、フードとライトの部分は軽自動車と思えないほど抑揚を大きく付け、今までの軽自動車にはない形状を表現しました。大きく見せようとすると単純に四角くなりがちですが、そうではない方法で表現し、空力性能にも配慮しています。
──新型スペーシアのデザインモチーフにスーツケースを選んだ理由は?
塚原さん:ほかにもいろいろアイディアはあったのですが、今回は大きく広く見えるデザインを目指すことを中心に、デザイナーに考えてもらいました。そのなかで、単純な箱ではない、大きいけど愛着が持てる、スーツケースをモチーフにしたアイディアスケッチがあったのです。
その前に大きく見せるデザインの研究をしたのですが、単純に大きいだけではどちらかといえばエブリイのようなクルマに見えてしまう。「これではお母さんや、そうではない本当に背高軽ワゴンを求めている人が乗るだろうか」と考えたのですが、大きいけれど角が丸いスーツケースをモチーフにしたスケッチを見て「これはいける」と思い採用しました。
──四角いけど丸いモチーフが随所にありますので、ほどよく角が取れた道具感がありますよね。
塚原さん:そうですね。機能一辺倒では必要に迫られて乗っている雰囲気になりますが、そうではなく乗る人自身に愛着を持ってもらえるようにデザインしました。とはいえ、機能面に影響しない部分を丸くしていますので、実用性を損なわず充分な広さを備えています。
──室内もスーツケースをモチーフにしているのがまた面白いですね。
塚原さん:「外がスーツケースなら中もスーツケースにしてしまおう」というインテリアデザイナーの遊び心があったので、本当にスーツケースがはまっているようなインパネになり、「面白いな」と思いましたね。
──これならカスタマイズもしやすそうな雰囲気ですね。
塚原さん:初代スペーシアは子育てママさん向けのイメージが非常に強かったので、男性ユーザーは少なかったのですが、新型は男女関係なく乗っていただきたいと思いました。こういったクルマはママさん以外にも必要としている男性が多く、ママにこだわる必要はない、本当にこのユーティリティを求めている人のために作っています。またディーラーオプションで、ボディカラーと合わせてインパネアッパーボックスとルームミラーカバーをコーディネートできるようにしました。
なお、ボディカラーとしては「ツールグリーンパールメタリック」という、工具箱のように機能的なテイストを持つ色を新開発しています。
──ソリッド色のように見えますが、実際にはソリッド色ではないのですね。
塚原さん:ソリッド色は経年変化で色が大きく褪せてしまうので、パールなどを混ぜて耐久性を高めています。
──カスタムは、他車ではドレッシーなものが多い傾向にありますが、新型スペーシアのカスタムのボディカラーはホットハッチ的なものが多いですね。
塚原さん:先代カスタムZでは「アクティブイエロー」の評判が良かったので、それを新型にも踏襲しています。
──2トーン色は、ウインドウフレームをボディ同色としているのが面白いですね。
塚原さん:初代の2トーン色はフローティングルーフにしており、軽快でスタイリッシュに見えるのですが、ピラーが中に入るのでキャビンが小さく見えてしまう。新型ではキャビンを大きく見せたいので、サイド面を15~20mm外に出していますが、さらにスーツケースをモチーフにデザインしていますので、その持ち手を連想させる塗り分けにしました。ただ、プレゼンテーションのときには「本当にこれで大丈夫か?」と相当心配されましたが……(笑)。
ハスラーのイメージを踏襲しつつもハスラーとは全然違う見た目
──クロスビーは写真で見ると本当にハスラーとそっくりのデザインですが、その狙いは?
塚原さん:作る上では小型車ということもあり違うものになると思っていましたが、ハスラーでできたスズキの小型SUVのイメージは大事にして使ってよいのではないかと考えてデザインしました。ただ、以前のワゴンR+やワゴンRワイド、Keiの拡大版だった初代スイフトのように見えてはならないと全社的に意思統一されていましたので、実車を見るとふくよかで抑揚のあるデザインになるよう、最初からデザインしています。東京モーターショーでも来場者がハスラーと見比べて「全然違う」とおっしゃってくださいましたね。
──クロスビーの内外装でハスラーから流用した部品はありますか?
塚原さん:まったくありません。ヘッドライトも、デザインはハスラーと同じ丸と四角の組み合わせですが、違うものですね。
──イグニスと同じ部品はありますか?
塚原さん:外装ではドアハンドルとホイール、それ以外ではルーフアンテナなどの細かい部品くらいでしょうか。内装はエアコンのスイッチ類が同じですが、色を高輝度シルバーに変更してガジェット感を演出しています。
──カラーリングについても強烈な個性がある、ほかのクルマにはないようなものが多いですが、その狙いは?
塚原さん:最近はユーザーがカラーを非常に重要視していますので、落ち着いたモノトーン色も用意していますが、小型車ならではの遊び心で派手にしてもよいのではないかと考えました。ハスラーも派手な色が多いのですが、クロスビーではそのお兄さんとして、小型車ならではの色を開発しています。また、ドアパネル下部のスプラッシュガードは別体になっていますので、3トーン色も設定しました。なお、スプラッシュガードはディーラーオプションで、色を自由に変更できるようにしています。
──ハスラーもそうですがクロスビーも派手な色だけではなく、昔のクルマのようなシックなカラーリングも似合いますよね。
塚原さん:そうですね。色を変えるだけで雰囲気が変わるクルマになっていると思います。
──クドいだけのデザインが多いなかで、近年のスズキ車はシンプルかつ遊び心のある、簡単なようで非常に難しいデザインのクルマが多いように思います。ぜひこの方向性を続けてほしいですね。
塚原さん:当社のデザイン部はそういう人間が多いんですよね。格好良いクルマよりも、遊び心のあるクルマのほうが好きなんですよ。もはや社風になっているような気がしますね。
──経営陣の方もそういうデザインを良しとして、それにGOサインを出すと。
塚原さん:はい。
──いくら優秀なデザイナーがたくさんいても、経営陣にセンスがなければ、そういうデザインのクルマは世に出てこないですからね。
塚原さん:こちらから経営陣に訴えて、そうしたデザインに納得してもらうこともありますけどね。先ほどお話ししたスペーシアの2トーンの塗り分けはまさにそうでしたが、実車ができあがると「いいね」と言ってもらえました。
──この方向性は、他社が真似したくとも、なかなかできないと思います。
塚原さん:初代スペーシアが他社に負けているなかで、新型では何か思い切ったことをしなければならないと、経営陣も考えていました。だからこそ今回のデザインにGOサインを出してくれたと思いますね。初代はニュートラルで誰からも嫌われないデザインだったと思いますが、やや存在感が弱いクルマでした。
──貴社にはエブリイもありますから、違いをより鮮明に出しやすく、また出すべきだったということでしょうね。
塚原さん:私はエブリイも担当しており、エブリイのようにならないポイントも理解していますので、新型スペーシアをより個性的にすることができたと思います。
──確かにエブリイは、デザインの差別化がしにくい軽1BOXのなかで、新型スペーシアとも違った「プロの道具」感がある、スッキリした個性的なデザインになっていますね。ありがとうございました。
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