軽自動車の販売台数の話題になると、必ず登場するのは「N-BOX」と「タント」だが、ベストカーが自販連や全軽協のデータをもとに作成した2019年12月と2020年1月の販売台数ランキングでは、その2台の間に「スペーシア」が割って入っている。
2019年11月、タントが2年3カ月ぶりにN-BOXを逆転したことで、世間の注目を2台に持っていかれた感のあるスペーシア。だが、販売は非常に好調だ。
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2台に対して、どんな武器がありここまで人気を維持してのか? 渡辺陽一郎氏が2台と比較しながら解説をしていく。
文/渡辺陽一郎
写真/編集部、DAIHATSU
【画像ギャラリー】ライバル2車種に割って入る人気の「スペーシア」3つのスタイルをチェック!!
■強力ライバルに引けを取らない堅調さを見せるスペーシア
今は国内で新車として売られるクルマの38%を軽自動車が占める。このなかでも特に好調に売れているのが、全高を1700mm以上に設定したスライドドアを備える車種だ。このスーパーハイトワゴンが軽乗用車全体の約50%を占めている。
次に多いのが全高を1600~1700mmに設定したハイトワゴンで、この比率は約35%だ。従って軽乗用車の約85%が背の高い車種になる。
スーパーハイトワゴンは、販売面では軽乗用車の約半数だが、車種数はあまり多くない。従って1車種当たりの販売台数が増えて、「N-BOX」は2019年に25万3500台(1か月平均で2万1125台)を販売して、国内の販売ナンバーワンになった。国内で売られたホンダ車の35%がN-BOXで占められる。2019年の販売ランキングは、1位の「N-BOX」に続いて、2位が「タント」、3位は「スペーシア」と続く。上位車種はすべてスーパーハイトワゴンであった。
そこで注目されるのがスペーシアの動向だ。2019年の販売ランキングでは前述の3位だが、2019年12月と2020年1月は、スペーシアが2位に上がってタントは3位に下がった。
2017年11月にフルモデルチェンジした「スペーシア」。現行モデルに切り替わったが、エクステリア、コンセプトとも先代モデルからガラリと変わって人気となっている
ちなみに全国軽自動車協会連合会の発表したデータでは、両月ともに販売上位にデイズが入ったが、これはデイズとデイズルークスを合計した台数だ。ユーザーから見るとデイズとデイズルークスは別の車種だから、分けて集計すると、2019年12月と2020年1月の販売ランキングは、1位:N-BOX、2位:スペーシア、3位:タントになる。
■スペーシアの好調要因は「ギア」投入
なぜ2018年1月に発売(発表は2017年12月)されたスペーシアが2位で、2019年7月に発売された設計の新しいタントが3位に下がったのか。背景には複数の理由がある。
まずスペーシアの好調な売れ行きには、2018年12月に追加された「スペーシアギア」が貢献した。スペーシアの2019年における販売台数を見ると、発売直後の2018年に比べて9%増えている。これはスペーシアギアを加えた効果だ。
2018年12月に、スペーシアに新設定された「ギア」。ジムニーやハスラーといったスズキのSUVラインの象徴である丸目のヘッドライトを採用し、SUVテイストの専用パーツが各所に施されている
もともと実用指向の軽自動車は、フルモデルチェンジしても、ユーザーが飛び付くように買うことはない。その代わり優れた商品なら、愛車の車検満了などに合わせて着実に購入される。売れ行きが一気に伸びない半面、長期間にわたって安定的に売れ続ける。スペーシアもこのパターンで、スペーシアギアも追加したから売れ行きを順調に伸ばした。
また2011年12月にN-BOXが登場して以降、ライバル車となるスーパーハイトワゴンのスペーシアとタントも、相乗効果で注目されている。その結果、スズキ車ではスペーシアの売れ行きが伸びる代わりに、ワゴンRと先代ハスラーは減った。
2019年の対前年比は、スペーシアは前述の9%増加だが、ワゴンRは17%、先代ハスラーも11%減少している。つまりワゴンRや先代ハスラーの需要がスペーシアに流れ、売れ行きを押し上げた面もある。
また新型になったタントの売れ行きが伸び悩んだことも、スペーシアの販売ランキング順位が2位に高まった要因だ。新型タントの売れ行きを振り返ると、フルモデルチェンジ直後の2019年8~9月には、対前年比が70~90%の上乗せになって販売ランキング順位もN-BOXに次ぐ2位となった。
それが10月は対前年比が4%のマイナスで、販売ランキング順位もスペーシアに次ぐ3位になってしまう。11月は改めて変動があり、対前年比は90%の上乗せ(つまり前年の約2倍)になり、販売ランキングの順位はN-BOXを抜いて1位になった。
■タントの打った策によって勝負は拮抗
この乱高下は、2019年10月に発生した台風19号の影響が大きい。尊い人命が失われ、自動車の流通も影響を受けた。同月には消費増税もあり、ダイハツ全体の対前年比はマイナス26%、ホンダは40%、スバルは49%減った。スズキも減ったが9%に収まっている。国内販売は特殊な状況に置かれ、タントも10月に減って11月は反動で急増した。
さらに2019年12月には、先に述べたとおりスペーシアが再び2位に上がってタントは3位に落ちた。12月のタントの売れ行きは前年に比べて18%減っている。この時はまた別の事情があった。新型タントの発売後の伸び悩みを心配して、2019年12月23日に、新しいグレードのセレクションシリーズを追加したことだ。
ダイハツ「タントカスタムRS”セレクション”」。このモデルには、コンフォータブルパック、スマートクルーズパック、スタイルパックというパックオプション(トータルで約12万円)が標準設定され、かなりお買い得なものになっている
このシリーズは買い得感が強い。例えば標準ボディのXセレクションでは、360度スーパーUV&IRカットガラス、チルトステアリング、運転席シートリフターなどを含んだコンフォータブルパック(3万8500円/2WD)をプラスしながら、価格はXと同額の149万500円に据え置いた。
このような買い得車は、通常は新型車には設定しない。モデル末期に特別仕様車として投入することが多い。それを発売から5カ月後に追加したのだから、ダイハツはタントの売れ行きに相当な危機感を抱いていた。
しかも、セレクションシリーズは買い得なために、既存のグレードをそのままでは売れなくなってしまう。そこで販売会社は、セレクションシリーズの追加に伴い、在庫車にカーナビを無料装着するなど値引きの拡大を強いられた。このセレクションシリーズと在庫車の入れ替えにも時間を取られ、12月は対前年比が18%のマイナスになった。
2020年1月になると、セレクションシリーズによるタントの反撃が期待されたが、これまた伸び悩んだ。対前年比は6%減り、スペーシアを抜けない。スペーシアも、スペーシアギアを加えた直後の2019年1月に比べて14%減ったが、タントの販売台数はさらに少なかった。そして2020年2月になり、タントはようやくスペーシアを抜いて2位になれた。それでもタントの販売台数は、対前年比で4%の減少だ。
ちなみに先代タントが発売された翌年の2014年には、1年限りではあったがタントの売れ行きが先代N-BOXを上まわり、国内販売の1位になった。2014年の対前年比も62%の上乗せであった。この先代タントの売れ方に比べると新型は勢いが乏しく、ライバル車のスペーシアはギアの追加もあって下降を食い止めたから、タントとスペーシアが接戦になっているわけだ。
■ダイハツとスズキ ともにナンバー1を譲れぬ理由あり
そして2020年1/2月の軽自動車累計販売台数をダイハツとスズキで比べると、ダイハツが上まわったものの2203台しか差がない。仮にこのままタントが伸び悩み、新型になったハスラーが好調に売れてスペーシアも堅調を保つと、ダイハツの軽自動車販売1位がスズキに奪われかねない。
ダイハツやスズキの販売店では「軽自動車の販売ナンバーワンは大切」という。「軽自動車はボディサイズがすべて共通で、背の高い車種は外観も似ている。車種ごとの個性がわかりにくい。特にクルマに詳しくないお客様の場合、販売ナンバーワンなら間違いないと判断して、買う車種を決めることがある」。
以上のようにさまざまな事情と思惑が絡み合い、販売ランキングの順位が決まる。「売れてないからダメ」と片付けず、なぜ売れていないのか、さらにセレクションシリーズのようなグレード追加までチェックすると、販売ランキングの真実が見えてくる。それは今の自動車業界の国内事情を読み解く手段にもなり得る。
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みんなのコメント
軽スーパーハイトをイマ現在検討してはいないが、買うとしたらっというのは何となくはあるけれどねえ。
生活の足として多用途多機能よりも、素っ気無いくらいすっきりシンプルなものにならないかなあ。