現行のレクサス「LS」のビッグマイナーチェンジ版に、ひと足はやく渡辺敏史が試乗した。気になるライバル、ドイツ勢との違いは?
LSの流れを変えた現行モデル
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この10年ばかしのレクサスブランドが歩んできた歴史を振り返るに、彼らはいかにエモーショナルであるかをひたすらに意識し、注力してきたようにみえる。
背景には2011年、当時の新作だった「GS」をアメリカのメディアが試乗した後の意見交換で、豊田章男社長が「レクサスはいいクルマだが退屈だ」と、告げられたのが影響しているのだろう。翌2012年のデトロイトショーで、当初は発売予定のないデザインスタディとしてお披露目された「LF-LC」が大きな反響を呼んだとみれば、豊田社長は即座にその市販化を決断。そのスタイリングを市販要件に忠実に落とし込んだLCは、日本車離れした車格と官能性を備えたスポーティクーペとして一定の支持を得ている。
そのLCとアーキテクチャーを共有するLSは、1989年に登場した初代の衝撃がブランドの礎を築いたとさえいえる、そんなモデルだ。圧倒的な静粛性と振動の少なさはメルセデスやBMWをも慌てさせ、主要メーカーによって内包した技術が隅々まで丸裸にされるほど研究され尽くした経緯を持つ。
それでも優位は覆されることはなく、高速・高負荷域でのダイナミクスは劣るかもしれないが、現実的な速度域でのまろやかな乗り心地で他を引き離す。LSはそんな個性で勝負してきた。
その流れを大きく変えたのがこの5代目だ。見ても乗っても感じられるのは著しく高められたスポーティネス。その理由は前述の“退屈”に対する回答であったかもしれないし、LSのユーザー層の若返りを図るためだったかもしれない。そして運動性能を一気に向上させることになったのは、LCと並行して開発された新しいGA-Lプラットフォームの素性によるところも大きかった。
かつてクローズドコースでBMW「7シリーズ」やメルセデス・ベンツ「Sクラス」と乗り比べる機会では、その旋回性能や限界域の高さに驚かされた覚えがある。Lセグメントのサルーンをこれほどのハンドリングカーに仕立ててくる、その振り切りぶりはブランドの愚直さと不器用さを同時に示したものかもしれない。果たしてLSは、たとえドライバーズカーとしてみても、乗り心地面で課題を抱えることとなった。
その後、年次ごとに細かな改良がくわえられてきたが、その項目の大半は乗り心地の向上策だったといっても過言ではない。そして今回のフェイスリフトを伴うビッグマイナーチェンジを機に、そこに大きく手がくわえられた。巨体をものともしない旋回力にも貢献していたランフラットタイヤは、柔軟性を高めて衝撃吸収能力を向上させながら軽量化も施し路面追従性を高めたほか、サスペンションやスタビライザーの特性も全面的に改められ、バンプストッパーやエンジンマウントの硬度なども見直されている。
乗り味の変化に注目
これらをもって、確かに乗り心地は一目瞭然の進化を遂げていた。舗装面の粒状によって目まぐるしく変わっていたロードノイズは均質に整えられ、大小のうねりを受けたボディの揺すられ感も抑えられている。ジョイントやマンホールなど角の立った凹凸の乗り越えも穏やかで、車内に雑な突き上げは伝わってこない。路肩の段差などはっきりした入力にもダンパーがよく仕事をしているのがわかる。
相変わらず苦手なのは路面補修跡などの微細な連続入力で、これが続くとタイヤのバタつきと共に跳ねるようなノイズが室内に伝わってくる。が、これも年次毎に確実に量は減っているようだ。乗り心地は、Sクラスには及ばずとも7シリーズにはキャッチアップ出来ている。そして静粛性については、これらライバルのドイツ勢とは一線を画するところに到達したようにうかがえた。
試乗はクローズドとはいえ公道に似た環境だったため、ハンドリングがどのように変化したかは確認できていない。が、ひとつはっきりしているのはロールやピッチといった上屋の動きは当初よりやや大きくなったということだ。
が、それは運動性能を阻害するような緩さからきたというよりも、加減速や操舵に同調した心地よさに繋がるものだ。ましてやLSにはオーナードライバー向けのスポーツグレードとしてFスポーツが用意されているわけで、標準グレードのこの変化は間違いなく歓迎すべきものだと思う。
パワートレインの側もハイブリッドはバッテリーアシストの稼動域を広げてエンジンの活発な稼働を抑える方向でリファインされ、力強さはそのままに、日常域での静かさや滑らかさといった上質感が高まっている。一方のツインターボは相変わらずのスポーティさだが、ムービングパーツの変更などでこちらもアッパーサルーンに相応しい柔らかなフィーリングをプラスしている。
レクサスは日本出自のブランドであることを内装の設えで感じさせる取り組みを続けてきた。
直近のLSでは切子調カットガラスのオーナメントにハンドメイドのプリーツが施されたファブリックドアトリムを組み合わせたパッケージが用意されたが、この新型LSでは切手大のプラチナ箔を貼り合わせたオーナメントに銀糸を多用した西陣織のドアトリムを組み合わせ、水面に揺らぐ月明かりをイメージしたパッケージが新たにくわえられる。
価格はご立派なものになるだろうが、日本車が苦手としてきた“和”の文化的表現に挑戦する姿勢は素直に讃えたい。
文・渡辺敏史
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みんなのコメント
結構長い記事なのに、結局何言ってるのか全然分からん