新型は4グレード構成。スマートな造形が光る
日本を代表するコンパクトカー、アクアがモデルチェンジした。この10年でアクアを取り巻く環境は大きく変化した。多くの車種にハイブリッドが設定され、ハイブリッドは「特別な存在」から「普通の存在」となった。そんな中、ハイブリッド専用車の2ndアクアは、どのような新価値を提示したのか。じっくり乗って確かめた。
HVコンパクトカーのトヨタ・アクアが全面改良。燃費は従来型比で最大約20%アップの35.8km/リットルを実現
メカニズム面ではヤリスと共通性が高い。GA-Bプラットフォームや1.5リッターエンジンとモーターを組み合わせたTHS(ハイブリッド機構)を採用する。とはいえ各部は専用仕様となっており、キャラクターは少なからず異なる。
ボディサイズは全長×全幅×全高4050×1695×1485mm(FF)。一見するとずいぶん大きくなった印象を受けるが、実際は全長と全幅は従来と変わらず。全高が30mm高くななっただけ。日本の道路環境に適した5ナンバーサイズを堅持している。ただし2600mmのホイールベースは従来比50mm伸びた。
新型はモダンでスマートな造形だ。いたってシンプルだった旧型と比べると、成熟し車格感が上がった印象を受ける。スムーズなラインと豊かな面で構成されたスタイリングは、なかなかエモーショナルである。前後の造形は従来の面影を残しており、一目でアクアとわかる。新たにアース系を加えた全9色のボディカラーラインアップは、いずれも新型によく似合うと感じた。
快適な室内空間。特に後席の広さが魅力
インテリアは居心地がいい。シンプルさとクリーンな印象をキープしながら格段に上質になった。トヨタのコンパクトカーで初採用となる10・5in大型ディスプレイオーディオが設定され、ヘッドアップディスプレイも選べる。セレクターレバーがインパネに配されたことでセンターコンソールまわりもスッキリとした。収納スペースもかなり充実している。
シートは座り心地に優れた大型サイズ。上級グレードでは合成皮革とファブリックを組み合わせたパワーシート仕様が選べる。
後席のユーティリティはアクアの魅力。座った瞬間に広さ実感する。拡大されたホイールベースが効いている。身長170cm+αのパッセンジャーが前後に座った状態で、後席には膝前にコブシが3つの余裕があった。頭上空間も十分に確保されている。
後席にリクライニング機構はないが、座面と背もたれの角度はちょうどよく、ヒール段差も最適。直下にバッテリーを積むためか、もう少しクッションに厚みが欲しい気がしたものの居住性はハイレベルだった。ゆったり快適な後席スペースは新型の大きなポイントである。ベルトラインがキックアップしているものの、閉塞感をあまり感じないのも嬉しい。ただし、運転席からは後側方の死角がやや大きい。合流の際などには少々気をつけたほうがよい。
荷室の広さはそれなり。横方向はあまり広くないので、ゴルフバッグなどを積むときは、4:6分割可倒式のリアシートを前倒しする必要がある。
初採用バイポーラ型バッテリーの効果抜群。高い瞬発力が印象的
走りは力強い。1.5ℓエンジン(91ps/120Nm)とモーター(80ps/141Nm)のスペックはヤリス系と共通。アクアはBグレードを除く全車に、より大きな電流を瞬時に出せる世界初のバイポーラ型ニッケル水素バッテリーを採用した。その瞬発力は高い。エコモードを選んでも出足でもたつくことはない。マイルドだった旧型とははっきり違う。
パワー+モードを選択するとさらに力強さが増した。同時にトヨタ車で初採用のワンペダルで加減速ができる「快感ペダル」がほどよく効いて、テンポよく走れる。
新型はEV走行する時間が圧倒的に増えており、静粛性全般も概ね高く保たれている。強い加速を求めてエンジン回転数が上がるとやや騒々しいが、ごく普通に走るには静かな印象が持続する。
降雪地ユーザーの要望に応えて旧型にはなかった4WD仕様が設定されたのも新型のポイントだ。こちらもしかるべき機会にあらためて試してみたい。
足まわりは快適性重視セッティング。アクアのユーザー層が不満に感じることのないよう配慮されている。標準サスの15インチ仕様ではやや抑えの効いていない印象もあるが、やさしい乗り味を好む人も少なくないはず。専用のスウィングバルブダンパーを備えたZをオプションの16inタイヤとの組み合わせでドライブしたところ、しなやかさの中にフラット感とダイレクト感があり、マッチングは上々だった。。
電動パワーステは、もどし制御を備えた最新世代。操舵力が軽く操舵フィール自体は悪くない。ただしやや応答性にクセがありイメージしたラインをトレースしにくい点は改善に期待したい。
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