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【ハイパー四駆SUV 日本公道試乗:フェラーリ プロサングエ】「跳ね馬」であるために必要なものをなんら犠牲にすることはない

掲載 更新 9
【ハイパー四駆SUV 日本公道試乗:フェラーリ プロサングエ】「跳ね馬」であるために必要なものをなんら犠牲にすることはない

ワールドプレミアが2022年9月、京都の仁和寺で行われたジャパンプレミアが同年11月だったから、昨今の新型車の中では待たされた方だと言えるだろう。フェラーリのプロサングエが、ようやく日本の道を走り始めた。ある意味で、究極の「四駆王」ともいえるモデルだろう。(MotorMagazine 2024年8月号より)

2+2GTの系譜を現代の流行にあてはめてみれば・・・
私自身は2023年2月にイタリアで開催された国際試乗会にも参加しているが、それでも1年以上の間を開けての再会である。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

久しぶりのプロサングエ、果たしてその印象はと言えば、異様なほどの迫力、圧倒的な存在感に改めて感嘆させられることとなった。そのオーラはまさに格別。街中を走らせていて、これだけ視線を浴びせかけられる経験は久々かもしれない。

フェラーリにとって初の4ドア4シーターモデルであり、しかも大径タイヤ&ホイールを履く4WDで高い最低地上高を持つプロサングエ。決して流行りに乗ったSUVではなく「フェラーリの2+2GTの系譜の延長線上にある存在だ」というのが、このクルマに対するフェラーリの公式見解だ。

走行性能最優先のミッドシップモデルとは異なり、GTには実質2人でのロングツーリングを可能とする快適性、実用性が求められる。しかも市場の拡大もあり要求はどんどん厳しく、幅広くなっているから、クルマの態様もまた様変わりしてきている。

フェラーリの近年のこのカテゴリーのモデルを見ても、流麗な2ドア4シーターFRクーペだった「612スカリエッティ」は、ハッチバックで4WDの「FF」に置き換えられ、さらに「GTC4ルッソ」へと発展した。いま、SUV的なものがこのセグメントにおける時代の要請であるならば、フェラーリだって無視するわけにはいかないのは当然だろう。

プロサングエが、こうした背景なしには生まれ得なかったクルマであることは間違いない、しかしそれでも実車を目の前にすると、フェラーリの、これはSUVではないという主張も、なるほど確かにと思えてくる。

さながら「ロングノーズがひときわエレガントな」4ドアGT
スリーサイズは全長4973×全幅2028×全高1589mm。フロントミッドと呼べる位置にV12ユニットを収めるべくノーズはとても長くなっている。それに対して後方に寄せられたキャビンはコンパクトにまとめられ、ボリュームに満ちた艶めかしくすらある前後フェンダーとの対比で、グラマラスな体躯を描き出す。

目をひくのはフェラーリとしては高いが、ライバルと較べた時には格段に低い全高だ。改めてそのフォルムを眺めてみると、高さを稼いでいるのは主にフロントが22インチ、リアが23インチの大径タイヤ&ホイールと地上高だとわかる。純粋なボディシェイプだけで見ると、さながらロングノーズのエレガントな4ドアGTといった趣なのだ。

冒頭に迫力、存在感と書いたが、強面(こわもて)の顔つきで威圧してくるのではなく、流麗なフォルムや近年のフェラーリに共通する空気の流れを可視化したかのようなディテールのおかげで、プロサングエの佇まいには有り体に言えばオラオラ感は薄い。逆に言えば、それが故に孤高の雰囲気、気高さのようなものすら漂うのだ。

それこそライバルとなるSUVたちと並んだ時に、区別がつかないなんて微塵も思わせることはないはずである。

4枚のドアは、リアドアを後ヒンジかつ電動開閉式とした、いわゆる観音開き。さすがにセンターピラーレスではないが、ドアはフロントが63度、リアが79度まで開くため、乗降性は上々だ。

インテリアは左右をほぼ対称の意匠でまとめたデュアルコクピットデザインを採用する。左右独立の後席もやはりバケットシートとされており、頭上には十分な余裕が確保されている。つまり後席も補助席などではなく、4人が平等に捉えられているのである。

優れたハードウェアとともに、実用性にも配慮
ラゲッジスペースの容量は後席使用時でフェラーリ史上最大と言われる473L。とは言え、GTC4ルッソの450Lと数値上は大差ないのだが、段差のないフラットな空間は、格段に扱いやすくなっている。

しかも取り外し式の隔壁を外して、スイッチひとつで格納と展開ができる後席バックレストを前に倒せば、さらに広いスペースを確保することもできる。4人で長期の旅行は厳しいかもしれないが、1~2泊分の荷物なら積み込める。ふたり旅なら余裕だろう。

このボディはアルミニウムを主体に高強度スチールなどを組み合わせたもので、当然このクルマだけのために開発されたものだ。

ルーフパネルはCFRP製。中間層に防音素材を挟み込みながらも、アルミニウム製とするより2割も軽いと謳われている。

前ヒンジのボンネットフードを開けると、キャビン側に食い込まんばかりに後方に積まれているV型12気筒エンジンは排気量6.5Lの自然吸気で、最高出力725ps、最大トル716Nmを発生する。そのアウトプットはエンジン前方に置かれたPTU(パワートランスファーユニット)により前輪に、そしてトランスアクスルレイアウトの8速DCTを介して後輪に伝達される。

そしてハードウエアの一番の目玉となるのが「フェラーリアクティブサスペンションテクノロジー(
FAST)」だ。

これは4輪それぞれの車高を、ダンパーに仕込まれた電気モーターによって個別に制御するもので、単に車高を調整できるだけでなくロールやピッチングといった姿勢のコントロールも可能とする。シャシはこれと減衰力可変システム、後輪操舵、E−デフ、ブレーキバイワイヤシステムなど、さまざまな機構が統合制御されているのである。

余裕の速さ。車両感覚は思いのほか掴みやすい
改めて、ドライバーズシートへ。ポジションを合わせると視界の隅にかすかにフェンダーの峰が入り込んでいる。ドアミラーに視線を移せば、こちらもリアフェンダーが後輪のおおよその位置を教えてくれるという具合で、高めのアイポイントと相まって実は車両感覚は思いのほか掴みやすい。地上高の余裕ゆえに少々の段差は気にしなくて済むのも嬉しいところだ。

ちょっと緊張感がほぐれるのを感じながら、いよいよスタートだ。

ハンドル上のスイッチに触れエンジンを始動させると、始動音もそしてアイドリング時のサウンドも至って控えめで、最初は拍子抜けしてしまった。しかし、それも深夜早朝に出かける際にも気遣いが要らなくなったと考えれば、使い勝手の間口がかつてないほど広いこのクルマには合っていると言えるだろう。

日常域での所作は、ありあまるパワーとトルクをひけらかすことのない穏やかなもので、まさに踏めば踏んだ分だけ、いかにもV型12気筒らしい緻密できめ細やかな回転上昇とともに余裕の風情で速度を高めていく。音圧はやはり大きくはないが、単に静かというのではなく硬質で粒の揃った心地良い音色は、十分に酔わせてくれる。

車重を意識させない走り。そして至ってナチュラル
唸らされたのが、そのフットワークである。操舵していくと、まるで車体が平行移動するかのように軽やかに向きが変わり車高の高さも、2・2トンを超える車重も、まるで意識させないのである。

件(くだん)のFASTはロール剛性だけでなくロールセンターも自在に制御できる。もちろん、その他のデバイスも総動員された結果、ドライバーは車重も重心の高さも特段意識させられることなく、いつものようにハンドルを切り込むだけで、切れ味の鋭いコーナーへのアプローチを味わえる。しかも一連の挙動にはいかにも制御されているという違和感はなく、至ってナチュラルなのだ。

そうやってラインに乗せたら、あとは出口に向かって右足を踏み込むだけ。押し寄せる自然吸気
V12のサウンドを浴びながら、ややリア下がりの絶妙な姿勢での呆れるほどの加速を味わう瞬間は、まさに愉悦と表現するほかない。

乗り心地も、低速域ではややコツコツとした感触を伝えるもののその先ではスッと縮んだサスペンションがしっとりと伸びて姿勢をフラットに保ってくれる。ストローク感は他のフェラーリよりやや増しているだろうか。目線こそ高めだが、両足を前に投げ出すようなドライビングポジションも含めて、その操縦感覚は正真正銘フェラーリそのものなのだ。

4ドア4シーターのパッケージ、高い地上高などにより、それこそSUVじゃないとしても、十分SUV的に使える実用性あるいは日常性を備えながら、プロサングエは跳ね馬にとって大切なものを何も犠牲にはしていない。むしろ、そうした存在だからこそピュアにフェラーリらしい走りの世界にこだわった結果が、自然吸気V12の搭載であり、またFASTのような新技術の採用なのだろう。

その技術力、そしてプライドこそが、こうしたクルマを作り上げた。その意味でプロサングエが「フェラーリにしか創り得なかった1台」であることは間違いない。
(文:島下泰久/写真:永元秀和)

フェラーリ プロサングエ 主要諸元
●Engine
型式:F140IA
エンジン種類:V12DOHC
排気量:6496cc
エンジン最高出力:533kW(725ps)/7750rpm
エンジン最大トルク:716Nm(73.0kgm)/6250rpm
燃料・タンク容量:プレミアム・100L
WLTPモード燃費:5.7km/L
●Dimension&Weight
全長×全幅×全高:4973×2028×1598mm
ホイールベース:3018mm
車両重量:2210kg
●Chassis
駆動方式:4WD
トランスミッション:8速DCT
サスペンション形式 前/後:ダブルウイッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ 前/後:Vディスク/Vディスク
タイヤサイズ:前255/35R22 後315/30R23
●Price車両価格:47,600,000円

[ アルバム : フェラーリ プロサングエ 公道試乗 はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

9件
  • ザ・ファイナル・タカヒロ
    やっぱ本物は全然かっこいいし格が違うしマジで欲しいと思うよね
    超絶ハリボテコピー品のクラウンスポーツwwと全然違うよねw

    こっちの本物プロサングエが世界にデザイン公開した時期は2021年3月頃
    パクった偽物クラウンスポーツwwは2023年10月と1年半年以上遅れて発表w

    あのさ信号でこっちの本物に並ばれて指さされて笑われたらどーすんの?
    歯ぎしりイキリダッシュでも逃げれないよ?w
    クラウンスポーツww遅いからねw
    ほんでまた次の信号で横に並ばれて指さされて笑われたら惨めじゃんw
  • Lore in
    おぉ!?と思って追いついた時に
    クラウンだった時のガッカリ感ときたら尋常じゃない
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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