2018年11月のLAオートショーで世界初公開されたポルシェ911GT2RSクラブスポーツは、同社の市販車の中でも珍しい位置づけの1台だ。なにしろこのクルマはサーキット専用車。つまりナンバーの取得は出来ないが、プロのレースへの参戦が意図されたものではなく、趣味として純粋にサーキット走行やイベント出場を楽しむためのクラブマンモータースポーツ用として企画されたのである。
そんなマシンだけに試す舞台は当然サーキットとなる。舞台は富士スピードウェイだ。
隙のない進化を見せたプレミアムSUVの先駆的存在、GLEに試乗
ベースは言うまでもなく911GT2RS。最高出力700psを発生する水平対向6気筒3.8ℓツインターボエンジンを積み、4WDとなる911ターボとは異なり後輪のみを駆動するという911のラインナップの中でもっとも過激な存在である。エンジン、そして7速PDKというパワートレインのハードウェアは、ロードカーのGT2RSのものがそのまま流用されている。
異なるのは、ボディとシャシーである。リアの大型ウイングをはじめとする専用の空力パーツで武装し、更に前後フードやルーフがカーボン・ケブラー製とされたボディには、18インチのスリックタイヤに合わせたレーシングサスペンションが組み合わされる。
室内を見れば、シートはヘルメットサポートまで付いたフルバケット1脚だけしかなく、ドライバーの目の前にはクイックリリース式のステアリング、データロガー内蔵の専用デジタルインストゥルメントパネルが装備されている。安全燃料タンク、消火器、エアジャッキといった装備もレーシングカーそのままだが、一方でエアコンは取り払われてはいない。実は最近のGTレーシングカーの多くも、エアコンは標準装備。長距離、長時間の走行のためには、これは必需品なのだ。
レース仕様とするにあたり、大型リアウィングのようにエクステリアのデザインや素材を変更した、他の911でも味わえない動力性能最高出力700psの後輪駆動で、しかも車重はロードカーより80kg軽い1390kgと聞けば、走る前にはそれなりに緊張感が漲ってくる。しかも外観には物々しいウイングが備わり、タイヤはスリック。車内もまんまレーシングカーだとなれば、扱いは相当に難しいと覚悟したのだが、いざ富士スピードウェイのレーシングコースに出てみると、これが期待とは裏腹、とても乗りやすいクルマに仕立てられていて驚いてしまった。
最高出力700ps、最大トルク750Nmを発揮する3.8リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載する。ベースとなったGT2 RSは4WDだったが、クラブスポーツは後輪駆動である。そうは言っても、動力性能はもちろん凄まじい。どんな回転域やギアポジションであっても、アクセルペダルを踏み込めばほんの一瞬の間のあと、圧倒的な力で背中から押し出されるような加速が始まり、そしてその勢いがいつまで経っても衰えず続く。ポルシェのターボエンジン特有の太い音、そしてヒューンというタービンから発生しているのであろうサウンドを耳にしながら、デジタル表示される速度計の数字の尋常ではない跳ね上がり方を見ていると、そのまま吸い込まれていきそうな恐怖心を覚えるが、しかし一方でその刺激は堪らないものがあり、右足を戻すことができない。この快感は麻薬的とすら言える。
富士スピードウェイの長い長いメインストレート。念の為、相当手前でアクセルを戻していたにも関わらず、デジタル表示の速度計では280km/hという表示を確認できたから、しっかり攻め切れば300km/hも容易に見えてくるに違いない。
インテリアはシングルシートとなり、大幅な軽量化を図っていることが一目わかる。ステアリングやメーターパネルもレース仕様のものに入れ替え、ロールケージなども当然用意されている。嬉しい驚きは、コーナリングがまったく神経質なものになっていなかったことだ。実はロードカーの911GT2RSは不用意にアクセルを踏み込むとすぐにリアが滑り出して車体が横を向くようなじゃじゃ馬だったのだが、高いグリップ力を発揮するレーシングスリックタイヤのおかげもあってか、クラブスポーツはより積極的なドライビングを許容してくれる。しかも、車両姿勢安定装置のPSMやトラクションコントロールなどの電子デバイスも備わり、走りを邪魔することなく必要な分だけ効いてくれるから、安心してハイパフォーマンスを楽しむことができるのである。
確かに車重がそれなりにあるから、プロ用レーシングカーのような切れ味というわけにはいかないのも事実。しかしながらポルシェのセオリーに忠実に、コーナー手前でしっかり速度を落として小回りで向きを変え、できるだけ早くアクセルを全開にするという走りを心掛けるだけで、このマシンは素晴らしい速さを発揮してくれる。何しろラップタイムは1分42秒台と、ポルシェ カレラカップのマシンとほぼ同等だったのだ。
パワートレーンはGT2 RSと基本的に同一だが、大型のリアウィングなど様々なエアロパーツが追加されている。これらのチューンにより、ダウンフォースの改善や車体の軽量化に成功している。サーキット走行では、後方から速い車両につかれたり、それを気にしてミラーばかり見なければならなかったりというのがイヤという人も決して少なくないだろう。けれど911GT2RSクラブスポーツなら、直線の速さに余裕があるだけにそういう場面に遭遇することはきっと稀なはず。自分のペースでサーキットを楽しみたい人にとっては、これは最適な選択肢になるのではないだろうか。
世界でたったの200台限定であり、しかも価格は税抜き40万5千ユーロもするが、そのハードルを越えられるのであればゼヒ。ちなみに問い合わせは、ロードカーと同じように近所のディーラーで受け付けている。この辺り、サーキットとストリートの距離がきわめて近い、ポルシェらしいところである。
文・島下泰久 写真・ポルシェAG 編集・iconic
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みんなのコメント
こういうクルマの需要があること、表舞台に出ないホンモノの
富裕層が存在する、ということを実感する記事。
実際、ツクバでナンバー無しのフェラーリをローダーに整備士付きで
持ってきて走らせていた方いらしたからね。