電気自動車が続々と投入される一方で、根強い人気を誇るハイブリッド車。長年、親しまれてきた日本を代表するベストセラーカーの最新モデルはどんな進化を遂げたのか。メーカーがこだわったポイントを検証した。
日本では、電気自動車よりエンジン+モーターのハイブリッド車のほうが人気が高い。国産のハイブリッド車といえば、1997年にデビューしたトヨタ『プリウス』が代表格だが、その『プリウス』に技術面も含めて勝負を挑んでいるのがホンダ『シビック』だ。ホンダらしさが詰まった独自のハイブリッドは、昨年登場した『シビックe:HEV』で実用化された。今年1月には『プリウス』もフルモデルチェンジ。PHEVを投入する前に最新のハイブリッド車を投入した。
クルマを売却するなら買取専門店と販売店の下取り、どっちが得?
『シビックe:HEV』はスポーティーな走りを追求したクルマに仕上がっていた。新開発の2L直噴エンジンを搭載。熱効率に優れたアトキンソンサイクルに加え、直噴システムを採用した。これにより加速性能が向上。ハイブリッドユニットもPCUを高出力化し、重量があるIPUを後席の下に配したことで低重心化を実現した。こうした改良を重ね、スポーティーな走りを巧みに実現させることに成功した。ドライブモードもスポーツ・ノーマル・エコに加え、ドライバーの好みに合わせたセッティングができるインディビジュアルモードを国内向けの乗用車に初めて設定。最後まで走りを重視したクルマ造りにこだわった。
一方、新型『プリウス』は何といってもデザインに特徴がある。カタログを見ても最初からデザインの話で10ページも割いていることから、こだわりが伝わってくる。実際に新型『プリウス』のデザインは歴代モデルの中で最も斬新だ。フロントバンパー、ボンネット、フロントウインドウからルーフまで、横から見るとほぼ一直線につながっている。
一説によると、社内でもここまで大胆なスタイリングでは売り上げは期待できないだろう、という声もあったそうだ。ところが結果は月販目標台数の4300台を大きく上回る受注があり、グレードによっては納車まで1年近くかかるという状況。安全装備や先進装備の充実ぶりもかなりハイレベルだが、最新モデルはとにかくデザインファーストだ。
期せずして、両車とも2Lのガソリンエンジンをベースにしたハイブリッド車だが、性格は異なる。『シビック』はタイプRまで用意し、走りにこだわった。『プリウス』はスタイリングを第一に考えたクルマ造りを追求した。ぜひ一度、乗り比べてみてほしい。
爽快感たっぷりの加速が楽しいハイブリッド
ホンダ『シビック』
Specification
■全長×全幅×全高:4550×1800×1415mm
■ホイールベース:2735mm
■車両重量:1460kg
■排気量:1993cc
■エンジン形式:直列4気筒DOHC+交流同期モーター
■最高出力:141PS/6000rpm+184PS
■最大トルク:182Nm/4500rpm+315Nm
■変速機:電気式無段
■燃費:24.2km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:394万200円
※「e:HEV」
低重心を意識したフロントマスク。前方視界を確保するためにフロントウインドウも大きく設計されている。LEDのフォグライトとコーナリングライトは標準装備。
『プリウス』と比べると、全長、ホイールベース、全高はわずかに短くて低いが、室内のスペースは余裕がある。ロングノーズ、ショートデッキのスポーティーなプロポーション。
高い位置のテールランプは最近のトレンド。リアゲート開口部は路面から約660mmと低い。リアウインドウ用ワイパーは全グレード標準装備。リバースギアにシフトすると連動する。
感性を刺激する挑戦的なデザイン
トヨタ『プリウス』
Specification
■全長×全幅×全高:4600×1780×1430mm
■ホイールベース:2750mm
■車両重量:1420kg
■排気量:1986cc
■エンジン形式:直列4気筒DOHC+交流同期モーター
■最高出力:152PS/6000rpm+113PS
■最大トルク:188Nm/4400~5200rpm+206Nm
■変速機:電気式無段
■燃費:28.6km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:370万円
※「Z 2WD」
フロントガラスの幅は『シビック』より狭い。空気の取り入れ口なども小さく、あくまで空力抵抗を重視したデザイン。全幅は『シビック』より20mm狭いが、全高は15mm高い。
フロントウインドウからBピラーあたりを頂点にしたプロポーションは『プリウス』の伝統。最新モデルはその集大成。ドアウインドウの面積は狭くクーペスタイルを意識している。
デザイン重視のボディーはトヨタやPRIUSのエムブレムもボディーと同色にし目立たないようにしている。リアウインドウ用ワイパーはオプションの設定もない。大雨の日の後方視界は不便。
走りか?デザインか?性格の異なる究極のハイブリッド車
ホンダ『シビック』
エンジンルーム
2Lのエンジンは小気味よく回転が上昇、4000回転以上になるとサウンドも魅力的に。燃費に関しても実走15~18km/Lを記録した。
運転席と各種装備
水平基調を主張したインストルメントパネルのデザイン。ダッシュボード中央の液晶パネルは時代を感じさせる新しい設計。
シートスペース
前後席ともに低めの着座位置。後席の足元は余裕があるが、頭上は身長180cmがギリギリ。左右1名ずつの着座が快適定員だ。
ラゲージスペース
後席の背もたれは6対4で分割前倒しが可能。トノカバーは左から右に引き出す変則方式。ラゲージは広くゴルフバッグも横置きできる。
【 ココがポイント!】シンプルでわかりやすい操作系インターフェイス
前席の間にあるシフト部はP、R、N、Dが別々のスイッチになっている。その後方にあるのは、インディビジュアルモードを追加したドライブモードスイッチ。前席の周りはスッキリした設計。
【 ココがポイント!】スポーツタイヤ装着で走りの質も高い!
ホンダはハイブリッドでも走りの味つけを忘れない。e:HEVのタイヤはミシュランの『パイロットスポーツ4 235/40ZR18』。高速走行になるほど乗り心地、安定感が増す設計となっている。
トヨタ『プリウス』
エンジンルーム
2Lのエンジンは始動すると室内への音の侵入が目立つようになる。システム出力は196PSを達成。実走燃費は13~19km/Lだった。
運転席と各種装備
メーターはハンドルの上から見るスタイルだがメーターに合わせると着座位置が高くなりドアの上縁が気になる。運転は慣れを要する。
シートスペース
前席は低めの着座位置だが死角は少ない。後席は足元は狭くないが頭上は身長170cmぐらいが限界。後席ドアのウインドウは全開する。
ラゲージスペース
奥行きは約800mmで『シビック』(約930mm)よりも短い。背もたれは4対6で前倒しできる。ラゲージの床面は高いがほぼフラット。
【 ココがポイント!】すべてが簡素化された操作系スイッチ
短いシフトレバーはB/R/Dを選択できる。Pはプッシュボタン式で、パドルシフトはなし。コンソールは細身のデザインでインパネの下にもぐり込むような設計になっている。
【 ココがポイント!】エコ性能を追求したタイヤを標準装着
実は走行機能に関して新しいデバイスを採用しているのだが、ほとんど展開されていない。タイヤはヨコハマのエコタイヤ『ブルーアースGT 195/50R19』を装着。
完成度の高さなら『シビック』、デザインや新しさなら『プリウス』
ホンダ『シビック』
[運転性能]「タイプR」を想定して開発されただけに操舵感はシャープで、やや重め。コーナーでのキビキビした動きは秀逸。19点
[居住性]前後席ともに低めの着座位置でヘッドスペースを確保。足元の狭さも感じない。ラゲージも横幅が広くて実用的。18点
[装備の充実度]先進安全運転支援システムのホンダセンシングを標準装備。前後方向のソナーセンサーも搭載し快適装備も充実。19点
[デザイン]ウインドウの面積も広く直線を生かしたボディーラインはシンプル。インパネの六角形模様は掃除が大変かも。17点
[爽快感]小気味よく伸びるエンジンと力強いサウンドは走りの楽しさを味わえる。ドライブモードのメリハリも効いている。18点
[評価点数]91点
トヨタ『プリウス』
[運転性能]高出力化したエンジンは加速性能も『シビック』より0→100km/hで1秒近く速い。操舵性も設定次第では◎。18点
[居住性]着座位置、ハンドル上からのメーターの視認性は改良の余地あり。後席は頭上の空間が狭く圧迫感がある。17点
[装備の充実度]トヨタセーフティセンスは標準装備だが、トヨタ車初の後方車両接近告知、停車中後突対応などはオプション設定。18点
[デザイン]試乗中にパーキングエリアに止めると話しかけられるほど注目度は高い。ここまで大胆な形を選択した潔さに脱帽。19点
[爽快感]ハンドリングの素直さ、コーナリング性能の高さは評価できるが、エンジン始動時の音と振動の大きさは要改良。17点
[評価点数]89点
取材・文/石川真禧照
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2023年2月28日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。
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みんなのコメント
シビックが良いと思った人はプリウス選ばないし、プリウス選ぶ人はシビック選ばないような。
自分が買うならシビック。
買えんけど…