第3世代となる新型レンジローバースポーツに試乗する機会が得られた。洗練されたエクステリアデザインに加え、最新のテクノロジーを搭載したモデルとは? 走りを追求したそのレンジローバースポーツの実力をさっそくチェックした。(Motor Magazine 2023年4月号より)
上質なフィーリングの直6ディーゼルエンジン
超絶、優雅な気分にさせてくれる現行レンジローバーの乗り味から想像しても、先代のレンジローバー スポーツの走りを見ても、新型レンジローバー スポーツに対しては「絶対に裏切られない感」しか抱いていなかった。そして実際に試乗してみたら、期待値以上の「ラグジュアリーパフォーマンスSUV」であった。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
平たくいえば、名前のとおり、レンジローバーをよりオンロード志向としたコンセプトなわけだが、ちょっと意匠を変えたとか、サスペンションのチューニングを変えたとか、そんな小手先の変更には留まらない、オリジナリティ溢れるモデルに仕上がっている。
エクステリアは、最新のレンジローバーのデザインコンセプトである、「余計なものを削ぎ落とした」もの。キャラクターラインはほとんど見られないが、丸みが感じられ張りのあるサーフェスはモダンであり、スポーティで、確固たるアイデンティティがある。中でも薄いヘッドライト、同じく細いフロントグリルが特徴的だ。
走り始めたファーストインプレッションは、フットワークがレンジローバーより少しマッシブな印象だが、良い意味でのまったりというか、有機的しなやかさは損なわれていない。乗車後即、シートマッサージを設定。もう、何百kmのドライブだって怖くないってくらい、すぐにクルマとシンクロできてしまうのだ。
そして、助手席の編集スタッフに尋ねた。「このエンジンは、ディーゼル?」。トルクフルなフィールはディーゼルっぽいが、静かで振動がなく滑らかな回転フィーリングはとてもディーゼルとは思えなかったからだ。そして搭載されていたのは、3L 直列6気筒インジニウムディーゼルターボエンジンだった。
質感の高いディーゼルエンジンはうれしい限り
ちなみに、ディーゼルとすぐに認識できなかったのは、インパネを覗き込んでもタコメーターがなかったせいもある。これも追々試してみたところ、ステアリングスイッチでさまざまなレイアウトを選ぶことができ、タコメーターを表示させることもできた。まぁ、でも、その必要はないかな。
最高出力221kW(300ps)、最大トルク650Nmのパフォーマンスは十分に力強い走りを堪能できる。その後、ワインディングロードなどでちょっアクセルペダルを多めに踏み込んで加速し、エンジン回転が上昇していく際のサウンドは確かにディーゼルと認識したが、それにしてもこんなに上質なディーゼルエンジンはそうそうない。
限定モデルのファーストエディションはガソリンエンジンを搭載するが、カタログモデルは現状、ディーゼルエンジンのみ。ランドローバーももちろん電動化を宣言しているが、充電インフラの遅れている日本においてはまだ内燃機関に頼らざるを得ない状況もあり、質感の高いディーゼルエンジンは嬉しい限りだ。
その電動化も念頭に開発された最新のアーキテクチャーが採用され、ねじれ剛性は先代モデルより35%向上しているという。褒め言葉で「大きさ重さを感じさせない」というが、このクルマは良い意味でそれを感じさせる。高速道路を走っていても、この、威風堂々とした走りは、コンパクトカーからは醸し出せない雰囲気だから。
レスポンスも高く快適なフットワーク
レンジローバースポーツには、オールテレインテクノロジーのテレインレスポンス2が搭載されるが、そこに「ダイナミックモード」を備える。ワインディングロードで試してみると、ステアリングレスポンスやアクセルレスポンスは高く、フットワークは快適にスポーティな走りを味わえる。
ランドローバー初搭載となる「スイッチャブルボリュームエアサスペンション」にツインバルブモノチューブダンパーを組み合わせることで、快適性とダイナミックなハンドリングを両立した。とはいえ、ここでもやはり、「優雅さ」は損なわない。
不自然に足を突っ張った感じでロールを抑えるのではなく、ロールの速度や量を抑制、コントロールしている感じ。しっかりと足が動いて、しなやかさは感じながら、左右の切り返しなどでボディの動きが遅れるようなこともない。あくまで「スポーツカー」ではなく「、レンジローバー」の「スポーツ」なのだ。
しかし、この俊敏でありながら優雅な走りは、単純にサスペンションのみが作り出すわけではない。オールホイールステアリングや、アクティブロールコントロールシステム「ダイナミックレスポンスプロ」、トルクベクタリングを備えるアクティブディファレンシャルなどなど、多くの電子制御の連携プレーによるもの。そして、それらが見事にシンクロし、ドライバーには極めて有機的フィールを与えるところが究極のチューニングといえる。
今回、オフロードでの試乗機会はなかったが、岩場を駆け上がり、ダムの放水路を駆け上がる、ローンチの際のスペシャルムービーに衝撃を受けた。
レンジローバースポーツは「、オンロード寄りに振った」のではなく、レンジローバーの「オフロード性能はそのままに、オンロード性能までパフォーマンスの幅を広げた」という表現が正しいだろう。(文:佐藤久実/写真:井上雅行)
ランドローバー レンジローバー スポーツ オートバイオグラフィ D300 MHEV主要諸元
●全長×全幅×全高:4960×2005×1820mm
●ホイールベース:2995mm
●車両重量:2530kg
●エンジン:直6DOHCディーゼルターボ+モーター
●総排気量:2993cc
●最高出力:221kW(300ps)/4000rpm
●最大トルク:650Nm/15000-2500rpm
●モーター最高出力:13kW(18ps)/5000rpm
●モーター最大トルク:42Nm/2000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:軽油・90L
●WLTCモード燃費:11.3km/L
●タイヤサイズ:285/40R23
●車両価格(税込):1457万円
[ アルバム : ランドローバー レンジローバー スポーツ オートバイオグラフィ D300 MHEV はオリジナルサイトでご覧ください ]
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