派手さはないが総合的なバランスの良さで売れているのが、スモールファミリークラスのクルマだ。今回はこのカテゴリーをリードする人気の2台をピックアップ。それぞれの魅力を探ってみた。
全長4.5mから4.7mのスモールファミリークラスは、日本だけでなく欧州でも人気が高い。それだけに各メーカーはビッグヒットを狙って、ニューモデルを投入している。このクラスの先陣を切ったのは、SUBARU『レヴォーグ』。2014年4月に発売された。当初は日本国内専用モデルだったが、後にワゴン人気の高いイギリスやオーストラリアにも輸出されることになった。
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現在のモデルは2代目で2020年にフルモデルチェンジ。最近のSUBARUは毎年、年次改良モデルを投入している。直近の改良は2023年10月で安全装備「アイサイト」はステレオカメラに広角単眼カメラを追加した改良型を実装。デジタルマルチビューモニターに4つのカメラから取り込んだ映像を合成した車両周囲360度を映し出す3Dビュー表示と、時速15km以下になると自動的にフロントとトップビューを表示するオートモードが追加された。今でも国産車トップクラスの先進安全技術を駆使したクルマ造りで他社をリードしている。
『カローラ クロス』は2021年9月にデビュー。『レヴォーグ』の2代目より後に発売された。このクラスでは後発になる。それだけにライバル車との差別化を意識したクルマ造りを垣間見ることができる。このクルマは2023年10月に一部改良を実施。それまでパワーユニットは1.8Lのガソリンハイブリッドと、1.8Lのガソリン車だったが、ガソリン車は低燃費・高出力の2.0L「M20A-FKS」型に替わった。今回、試乗したのはすべての電動モジュールを刷新したハイブリッドFF車。ハイブリッド車にはFFと4WD(E-Four)が用意されている。
発売直後から『カローラ クロス』の人気はかなり高く、後発モデルの新鮮味と販売力を生かし、2022年はガソリン車を1万1660台、ハイブリッド車を4万7410台販売した。一方の『レヴォーグ』は1万4275台と『カローラ クロス』のガソリン車よりわずかに売れた程度。それでもSUBARUの中ではヒットモデルとなっている。『レヴォーグ』の強みは1.8Lターボによるスポーティーな走りと熟成された4WDの安定感、そして「アイサイト」の安全性能など多岐にわたる。
どちらも人気モデルだがそれぞれの良さも違いも、実際に乗ってみないとわからない。
「アイサイト」も乗り心地も進化
SUBARU『レヴォーグ』
Specification
■全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm
■ホイールベース:2670mm
■車両重量:1580kg
■排気量:1795cc
■エンジン形式:水平対向4気筒DOHCターボ
■最高出力:177PS/5200~5600rpm
■最大トルク:300Nm/1600~3600rpm
■変速機:マニュアルモード付きCVT
■燃費:13.5km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:379万5000円
※「GT-H EX」
SUBARUの顔となった六角形のグリルとターボエンジンであることを物語る大きなボンネット上の空気取り込み口が特徴。全幅を1.8m以下に抑えているのもポイント。
全長は『カローラ クロス』より265mm長いが、ホイールベースは30mm長い。『レヴォーグ』は4WDしか設定されていないが、最低地上高は145mm。タイヤ/ホイールは225/45R18サイズを装着。
ボディーの高い位置にテールランプを設けているのはリアデザインの最新トレンド。『レヴォーグ』の全高は『カローラ クロス』よりかなり低い1500mm。使いやすさを重視している。
広々したゆとりの空間と使い勝手の良さを追求
トヨタ『カローラ クロス』
Specification
■全長×全幅×全高:4490×1825×1620mm
■ホイールベース:2640mm
■車両重量:1400kg
■排気量:1797cc
■エンジン形式:直列4気筒DOHC+交流同期モーター
■最高出力:98PS/5200rpm+前95PS
■最大トルク:142Nm/3600rpm+185Nm
■変速機:電気式無段
■燃費:26.4km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:325万円
※「2 HEV FF」
試乗した「Z」グレードのヘッドライトは1灯の光源でロービームとハイビームの切り替えができるバイビームを採用。すべての光源をLED化している。フォグランプもLEDで「Z」は標準仕様。
SUVであることを強調する前後タイヤのオーバーフェンダー。ハイブリッドはツートーンの組み合わせは3種類。最低地上高は160mmでルーフ後端の沈み込みがないデザイン。
リアのウインドウが大きいデザイン。全高は1620mmと高め。リアゲートの開口部は高く、『レヴォーグ』より約110mm高い。荷室はやや狭い印象があるが実用的で使い勝手も悪くない。
使い勝手の良さとコスパで選ぶならスモールファミリークラスが正解
SUBARU『レヴォーグ』
エンジンルームSUBARU独自のエンジンは水平対向4気筒+ターボ。パワフルで低重心の走りは楽しいが、燃費は13.5km/Lとやや物足りなさを感じる。
運転席と各種装備左右の三角窓も大きく、運転席は見切りがいい。インパネ中央のナビ用画面もいち早く縦長の液晶パネルを採用した。視認性は高い。
シートスペース着座位置はやや高めで、前席のホールド性はいい。後席も着座位置はやや低めだが、狭さを感じない。床面中央にはトンネルがある。
ラゲージスペース奥行き、左右とも幅のある後席の荷室。背もたれは4/2/4の分割可倒式で前倒しも可能。床面とほぼフラットに。サブトランクもある。
【 ココがポイント!】気分によって上手に使い分けたい走行モード低回転域からのトルクの盛り上がりを体感できる「S」モードと緩やかな加速で走行できる「I」モードを選べるスイッチがハンドル中央右側に配置されている。
【 ココがポイント!】電源コンセントと入力端子が充実外部電源用コンセントは12Vの差し込み口、USB用の電源×2、さらにAUX(音声)の入力端子も備わっている。後席にはUSB電源も2つ備わっている。
トヨタ『カローラ クロス』
エンジンルーム直列4気筒ガソリンエンジンは1.8Lをキープ。2000回転前後でアクセルオフした時の唸り音が少し気になった。燃費は向上している。
運転席と各種装備ハンドルの向こう側にあるメーター類や横型のナビ画面、変速用ミッションなど、どの装備を見てもコンサバな印象がある。
シートスペース少し高めの着座位置からはボンネットが見えるので全体がつかみやすい。後席は低めの着座位置で前席の圧迫感がある。
ラゲージスペース奥行きは『レヴォーグ』より約200mm短く、左右幅も5~15mm狭い。床面は開口部より70mm下にある。トノカバーは高さが550mmもある。
【 ココがポイント!】いつでも遠出したくなる圧倒的な燃費性能2023年10月のマイナーチェンジで、ハイブリッドモデルは電動モジュールを刷新したシステムを採用し、低燃費・高出力化を実現。燃費に関してはWLTCモードで26.4km/Lを達成している。
【 ココがポイント!】ミシュラン製タイヤを装着し乗り心地を追求乗り心地とハンドリングを向上させるため、トヨタが注目したのがタイヤの選択。試乗車にはミシュランの高性能タイヤ『プレマシー4』の225/50R18タイヤが装着されていた。
走りを重視するなら『レヴォーグ』、実用性重視なら『カローラ クロス』
SUBARU『レヴォーグ』
[運動性能]1.8Lガソリンターボは5800回転まで回り、8速マニュアルモードを駆使すればスポーツドライビングも可能。17点
[居住性]やや高めの着座位置だが圧迫感はない。後席はやや低めの着座位置で頭上も広々。サブトランクも広い。19点
[装備の充実度]「アイサイト」は新世代に進化。マルチビューモニターも3Dビューなど死角を減らす工夫で安全性能を強化。19点
[デザイン]『レヴォーグ』から始まったスポーティーなクーペワゴンスタイル。次々と発表されるモデルも同じようなデザイン。18点
[爽快感]運転のしやすさ、切り替えられるトルクの盛り上がりなど、気分によってはっきりと使い分けられる楽しさがある。18点
[評価点数]91点
トヨタ『カローラ クロス』
[運動性能]パワー/エコ/ノーマルの3モードを用意。パワーモードは全体に重めの操舵力をキープし乗り心地も硬めの印象。18点
[居住性]居住性は確保できるが後席の圧迫感は大きめ。ツマ先は前席の座面下に入れやすいので走行中でもリラックスできる。18点
[装備の充実度]上級車は標準装備が多い。今回の改良で安全装備、コネクテッド機能を充実させた。対歩行者用の配慮も充実している。19点
[デザイン]トヨタの他のSUV『ヤリス クロス』『RAV4』『ハリアー』と比べてもそれぞれの顔を持ち、共通の雰囲気が感じられる。19点
[爽快感]ドライブモードは切り替えられるが、パドルシフトがないためスポーティーな走りの志向は感じられない。18点
[評価点数]92点
取材・文/石川真禧照 撮影/望月浩彦
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2024年1月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。
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