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ヴィンテージ・リバイバル・モンレリー

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ヴィンテージ・リバイバル・モンレリー

1920年代にタイムスリップ

「フレーザー・ナッシュやGNが集まるイベントが5月にモンレリーであるから、来ないか」と誘われたのは、今年のレトロモビルのアミルカーのスタンドに立ち寄った時だった。オートドローモ・モンレリーはパリから南へ向かって、1時間あまりのところにあるサーキット。完成したのは1924年で、ヨーロッパではイギリスのブルックランズ(1907年)、イタリアのモンツァ(1922年)に続く、3つ目のサーキットである。


第1次世界大戦が終わった1920年代は、パリが世界の享楽の中心となりアメリカ人も日本人も、世界中から何かを求めてくるエトランゼたちが集まり、ジャズとダンスとシャンパンの時代だった。その頃のモンレリーのパドックも、パリの社交界の延長であり、とても華やかだったという。富豪やそれをとりまく美しい貴婦人たちがいて、そこでは、レーサーたちは、英雄でありスターだった。その頃はレース中もピットインのたびにシャンパンを飲んだり、葉巻をくわえながら走ったりと、それが粋な時代だった。

モンレリーは、そんな1920年代の記憶に満ちたサーキットである。しかし、実はわれわれの記憶にだって残っていて、1972年までパリ1000kmレースが催され、ポルシェ917やフェラーリ512Sを打ち負かす地元マトラの活躍が日本の自動車雑誌でも伝えられていた。また映画『男と女』や『冒険者たち』にも登場するサーキットであるから、日本でも知られていないことはないはずだ。


私が初めてモンレリーを訪れたのは1996年ごろのことだと思う。やはりヒストリックカーのイベントで、フランスの様々なワンメイククラブが集まって、多種多様なフランスの古今のクルマの世界を一望にできた。戦後車にしても、少数派のDBやマトラなどが多数、集まってきていた。同行したパリ在住の吉田秀樹画伯の友人のクルマに乗せてもらって、バンクを走るという得難い体験をしたが、その時にはバンクの上のほうからブガッティを抜いたが、横に並びながらも、われわれは上から見下ろし、またブガッティの乗員は下から見上げているというその光景が非日常的で不思議な感覚だった。

今回も戦後のフランス車にも久しぶりに出会えるだろう、と思って赴いたのだが、ちょっと勝手が違った。今回の主役はそのタイトルどおり、ヴィンテージカーであることくらいは想像できたが、少しは戦後のルネ・ボネやDBなどもいるだろうと勝手な先入観を抱いていたのが、見事に戦前のクルマのみだった。しかも、大挙してイギリスからやってきているようだった。



これで分かる GN/フレーザー・ナッシュ


主役はGNとフレーザー・ナッシュ、そしてモーガンとそのフランス版であるダルモンなどのサイクルカーであった。サイクルカーでも、地元フランスにもアミルカー、サルムソン、BNCなどあるけれど、イギリス車の勢いに押され気味で、今日は控えめな態度だった。フランスのブガッティ・クラブの一員であるフランス在住の日本人女性とも邂逅したが、今日はイギリス人ばかりでいつもと雰囲気が違うわね、とおっしゃっていた。今日ばかりはブガッティも主役ではないようだ。

GNは、アーチー・フレイザー・ナッシュとH ・R・ゴドフレーという2人のパイオニア的技術者の発案から生まれた。極めて軽量で簡素なシャシーに、ほとんどが2気筒のエンジンを搭載した。数千台単位の生産だったが、ヨーロッパ各国にも輸出されたし、フランスでは飛行機エンジンのメーカーだったサルムソンがGNのライセンス生産から自動車製造に乗り出したのだった。GNの一番の特徴はシャフトドライブではなく、チェーンで後輪を駆動することだ。したがって、デファレンシャル・ギアを持たない。


フレーザー・ナッシュは1924年にGNから分かれて生まれた。GNの見かけをより普通のクルマにしたようなものだったが、相変わらずチェーン駆動だった。1930年代まで各種のエンジンが搭載されたが、1934年からはBMWのイギリスでの輸入元になり、進歩的な328をベースにしたスポーツカーを製作するようになり、戦後もル・マンやタルガフローリオなどヨーロッパ大陸のレースで好成績をあげてきた。その後はポルシェのディーラーとして、今もAFN社として存続した。

イギリスでは、GNやフレーザー・ナッシュはチェーンギャングと呼ばれ、今なお熱心な愛好家に親しまれている模様を、イギリスのヒルクライムに出かけた折に見かけていたが、今回ほど大挙して集結している様を見たのは初めてで、この日ばかりはモンレリーがイギリス領と化していた。



60枚の写真で「ヴィンテージ・リバイバル・モンレリー」詳細レポ

参加者はクルマの年代に合わせて大人のコスプレを楽しむ。

ヌヴォラーリのそっくりさんも登場して皆の喝采を浴びていた。

見学者だって1920年代の雰囲気を醸し出して気分を盛り上げる。

ドラージュは1905年に創業して3年後にはACFGPで優勝し、輝かしい歴史が始まった。1925年にモンレリーで初めて開催されたACFGP(フランスGP)で優勝したのも2ℓ 12気筒のドラージュ2LCVだった。

1927年にモンレリーで開催されたACFGPではドラージュが表彰台を独占した。サルムソンから引き抜かれたアルベール・ロリーが設計を担当し、新規定に合致した1.5ℓ直列8気筒、過給器付きエンジンを開発した。

今回はドラージュがここモンレリーで優勝してから90周年を祝った。それに合わせて『ドラージュ、世界チャンピオン』という本が刊行されたが、著者は昔からの友人であるクリストフ・プンちゃんだった。

いつもは主役のブガッティも今回は控えめな脇役だったようだ。

かつて生産された台数の2倍以上に増殖したというGPブガッティ。

8気筒の高性能でスポーティーなツァラーとして人気の高いT43。

スタイリッシュで人気の高いアミルカーCGS。エンジンがやや非力なのが残念なところ。

CGSに比べるとややごつい雰囲気だが、エンジンは強力なアミルカーC6が多数参加した。

BNCは1923年から1931年までと短命に終わった。搭載したエンジンは何種類かある。

アミルカーCVは 1923年型。

オースチン7も参加した。

ブガッティT13は8台が登場。

ビニャンはエンジン・メーカーとして1918年に創業し、大排気量の車でル・マンなど名だたるレースで活躍した。

スパやモンテカルロでも優勝したビニャンだったが、これはサルムソンのエンジンを搭載したサイクルカー。

これこそボートテールだ! 1920年代はモーターボートが流行の最先端で、車のデザインにも影響を及ぼした。

FWDに先鞭をつけたジョルジョ・イラのオーナーズ・クラブ。

テオ・マルタンの1934年製ピンタード・シムカ・モノプラス。

飛行機メーカーから転身したヴォアザンの最初期モデルC1。

1909年に最初の1台が作られたベデリアがサイクルカーの元祖と言われる。

ベデリアは1914年までに数千台を生産。整備してあれば100km/hも可能。

今回は2台が登場。前後のタンデムだが、ドライバーの座席は後ろである。

モシェ・ベロカーは、大人のためのペダルカー。エンジン付きの仕様もあったようだが。

親子で参加のこのクルマも、どうやらペダルカーのようだ。モシェのモデルだろうか?

パドックでは子供に押させて、コースでは父親と母親が交代で運転を務めていた。

雨の中、お爺さんがBNCのトノーカバーをゆっくりと外して、ひとりっきりで出陣の準備を始めた。

ヘルメットを被って走り出したら、ハンドルを持つ腕は確かで、かなり速いのに感心させられた。

サルムソン製GN。航空機エンジンで名高いサルムソンはGNのライセンス生産から自動車の生産に乗り出した。

1921年ダルモン・スペシャル

1934年モーガンSS

1922年GNヴィテッセ

ドラゴンフライの愛称で呼ばれるGN のスペシャル(改造車)も、侮れない速さを見せた。

イギリスのヴォアチュレットの雄ERA R9Bは、面子にかけてバンクの上方を走る。

1496ccの排気量ながら、バンク一番上の走行ラインを果敢に攻めるフレーザー・ナッシュ。

アルヴィスのFWDエンジンを搭載するフレーザー・ナッシュ・ノリス・スペシャル。

繊細で痩身が特徴のGNのなかで最も強烈な5ℓ V8のJAP航空機用エンジンを搭載するスペシャル。

1921年のGNヴィテッセは450kg程度の車体に1.1ℓのVツイン35馬力のエンジンを搭載。

サンダーバグの愛称で呼ばれるこのGNも4.3ℓの強力なエンジンを持つ。

サルムソンALのエンジンは最初OHVだったが、優れたDOHCに発展。

フレーザー・ナッシュ・ブローニュは4気筒の1500ccのエンジンを搭載。

1921年のサルムソン製GN GPは昆虫を思わせる特異な形。

ラジエターが無いが故の理想的空力ボディを備える。

スペアタイヤの設置場所にも現れるセンス。

フランスのアルシオンは自転車やオートバイがより有名。

オートバイのBSAもごく短期間3ホイラーを生産していた。

モーガンはファミリー向け3ホイラーも用意した。

モーガンのフランスでのライセンス生産車がダルモン。

キックスタートをして、バタバタと走り去っていった。

ダルモン・モーガンのなんとも不思議な後ろ姿。

ちょっと伊達な雰囲気ゆえに、フランス製と思われる。

このダルモンは空冷エンジンゆえにラジエターグリルも無い。

サンフォールは4気筒エンジンを幅広のボディに搭載した。

ヴィンテージ・リバイバルのレギュレーション。

ヴィンテージ・リバイバルのロゴ・バッチも作られていた。

オフィシャルショップではTシャツも販売されていた。

インフィールドの観客のための駐車場にも興味深いクルマが見られた。この見慣れぬルノーは、この日、現地で知り合った自動車史全般の教養もある若い愛好家も初めて見たそうだから、フランス本国でも珍しいのだろう。それもそのはずで、アフリカやアジアの植民地向けの多目的車として開発されたコロラーレ・ブレークの4X4仕様。

かつてエンツォ・フェラーリは特別仕様の250GTEを愛用し、スクーデリアのサービスカーとしてプジョー404ブレークが使用されていた。その時代を彷彿とさせる光景だが、両車とも同時代のピニンファリーナのデザインであり、ライトリムなども共通の部品を使っているそうだから、確信犯的な事情通がわざわざ置いたのだろうか!?

ルノーのロゴがドアに描かれた愛らしいクルマは、4CV開発以前のルノー初の小型大衆車ジャヴァキャトルで、1937年に発表された。このブレークは1952年に追加されたが、ブレークのみが4CVが生まれてからも生産が続けられ、キャトルの登場で引退するまでフランスの職人さんや農民のための実用車として必要な存在であり続けた。

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