2023年4月1日からトヨタ自動車の新社長になった佐藤恒治氏に、1時間あまり話を聞く機会があった。「遅れている」と言われるトヨタのBEV戦略のこと、自身の長所と短所、e-fuel(合成燃料)のこと、次期セリカのこと(!??)など、矢継ぎ早の質問に佐藤さんは、技術者らしくすべてにホンネで答えてくれた。
文・写真/ベストカーWeb編集部(本記事アイキャッチ写真は「サインください」と頼んだところ笑顔で応じていただいたメッセージ付きサインと佐藤新社長お薦めの豆大福(後述)。実は以前、別件取材時にサインをねだったところ佐藤さんが多忙で実現しなかった経緯があり、今回陳謝いただきサインも頂戴しました。「不祥事の時に(陳謝の写真は)使わないでくださいね(笑)」と釘を刺されました(絶対に使いません))
「自分にはわからない」と言える大切さ BEVもe-fuelも、セリカも豆大福も大いに語るトヨタ佐藤恒治新社長密着インタビュー
■ベストカーで掲載したセリカのCGについて聞いてみた
インタビューのやり取りの前に、佐藤新社長の人柄を知ってもらうため、次期セリカの話から始めたい。
そもそも、なぜいまセリカが話題になっているかについて。それはモリゾウさん(トヨタ自動車豊田章男会長)が、2023年3月に実施された新城ラリーのトークショーでセリカについて語ったからだ。
「セリカがもう一回欲しいなって感じがしますよね。セリカはものすごく想いのあるクルマだと思うんです。最近ではロングセラーのクルマが復活してきましたので、そういう流れを佐藤新社長が引き継いでくれるんじゃないかと、淡い思いで期待しております」
モリゾウさんの発言は、WRCのトヨタチームを率いるラトバラ監督運転のセリカGT-FOUR(ST165)に同乗したこともあって、多分に「シャレだろう」と思っていた、…ら、……これを聞いた佐藤新社長が、「(あくまでも夢として)構想がないわけではない」とコメントしたことから周囲がざわついた、というところまでは皆さんご承知の通り。佐藤さんはかつて6代目となるスーパーストラット・セリカに乗っていたこともあり、「セリカ愛」は人一倍強い。
ならばと、ベストカーが2023年4月26日号で作ったCGについて感想を聞いてみた。ちなみに、佐藤さんはベストカーをよく読んでいただいているようで、「毎号SCOOPを楽しみにしています」と語っている。
「うーん、あのセリカ……、もうひと頑張りしましょう! あれではモリゾウさんに商品化決定会議でダメ出しされてしまいます(笑)」とベストカーSCOOP班に奮起を促した。
ベストカーが作ったセリカのCGははっきりダメ出しされてしまった(笑)
こんなやり取りができるのも佐藤新社長の魅力なのだと思う。閑話休題。インタビューに移ろう。
■「次世代BEV」のイメージはどんなもの?
佐藤新社長の最大のミッションは「トヨタをモビリティカンパニーに変革させること」だという。そのためには「出遅れている」と言われがちなBEV(バッテリーEV)で、トヨタがどう主導権を取っていけるかにかかっている。特に新体制方針説明会で語られた「次世代BEV」には注目が集まるが、ではこの2026年に出るという次世代BEVは、いったい何が画期的なのか? 佐藤さんはこう説明してくれた。
「これからBEVで競争力を高めていくにはシャシーの考え方を変えなければなりません。エンジン車両でいうところのシャシー(車台)の影響はざっくり3分の1になります。(これはガソリン車やハイブリッドカーに比べると相対的に小さい影響で)逆に、ぐっと重要度を増すのが電子プラットフォームとソフトウェアです。特に電子プラットフォームは、将来そのモビリティがいかに拡張性に富んだものへ対応できるかがカギになります。今挙げた3つ(シャシー、電子プラットフォーム、ソフトウェア)を革新したものが、2026年に投入する次世代BEVとなります」
2023年4月7日に開催された、トヨタの新体制方針説明会にてチラ見せされた「2026年に投入予定の次世代BEVのコンセプト画像」。この中身について佐藤さんから語られた
■3つを革新すると、いったいどんないいことがあるのか?
「現在のBEVの価値観は、航続距離の長さだったり、加速性能のよさ(速さ)だったりしますが、将来BEVの価値は"エネルギーをモバイルできること"へと変化すると思います。つまりBEVならば”電気を出し入れできる”ということです。今の化石燃料は入れたら最後、エネルギー変換しないとどこにも行けません。でもエネルギーを入れて出すことを考えた時のBEVは、今のBEVではなくなります。
そうなると、いまBEVはバッテリーのキャパシティのみで性能が語られていますが、電流をどれだけ早く大量に入れ、どれだけ早く抜けるかという技術開発をやらなきゃいけなくなります。それが実現できれば、クルマがエネルギーグリッドになって、BEVの付加価値がさらに上がっていくでしょう。その場合、電流をいかに速く出し入れできるようになるかが、未来のBEVの競争力になっていくはずです。そういったことを見すえて次世代BEVは開発しています。
もう一点、そうなると、エネルギーを出す先で、何とどう繋げるか、という話になります。その繋ぎをどう制御するか。そこで電子プラットフォームをアリーン(arene)というOSを使ってオープンプラットフォームにすることで、サードパーティが作ったものも含めていろいろなものと繋げられるようになります。現在の電子プラットフォームは先進安全装備や車両制御、マルチメディアが複雑にからみあっており、オープンプラットフォームにはできないので、そこを進化させる必要がある、と」
次世代BEVはアリーン(arene)OSによってさまざまなものとつながることができるようになる
■チーフエンジニア経験が社長業に与えるメリットとデメリット
佐藤さんはカムリやレクサスGSの製品企画担当を務め、レクサスLCのチーフエンジニアを務めている。その経験は社長業にどう生かされるのか?
「(技術者出身社長であることの)有利な点は、たとえばBEVの在り方を自分で判断できる点だと思います。事業戦略を”商品”でやっていくんだという意味で、クルマづくりができる人間がリーダー役をやっているほうが、話が早いでしょう。これが良さだと思います。
その一方で、クルマが好きすぎるゆえに、”クルマ屋でありたい”と思いすぎちゃうところもあるんだと思います。たとえばZ世代のクルマの使い方で、停まったまんまで動画を見るとかは、自分の価値観では考えられません。ただ、それもクルマの新しい使い方なんですよね。
(BEV時代になって、バッテリーを通してクルマが)いろんなものと繋がる、ということで言えば、先ほどかっこよく言いましたけど、(今あるソリューションで言えば)そもそも"繋がりたいもの"が自分にはそんなにありません。
“(運転しているときや目的地へ着いたときに愛車に)そんなに繋げたいものってないんだよな…”だとか、”男は黙ってクルマを走らせる…”という価値観も、正直いってあります。そこは冷静に、”自分にはわからない”っていう想いを持ってないとダメなんだと思います。
だから若い子たち、ウーブンの子たちをとにかくエンカレッジして、彼らにいきいき働いてもらうことをやらないと、トヨタの未来は危ないなと思っています。
週末はレースにラリーにと飛び回る。現地現物にこだわる姿勢はGRカンパニープレジデント時代から変わらない
中嶋(裕樹/商品担当副社長)もそうですけど、まあまあペトロヘッド(「ガソリン頭」≒尋常じゃないクルマ好きのこと)なんですよね。豊田章男会長もスーパーペトロヘッドでしょう。この時代に、トヨタのトップなのに”僕はね、ガソリン臭くて、音がうるさいクルマが好きで…”と言ってしまう。あれ、モリゾウさんじゃなかったら世の中からバッシングが来ていると思いますよ。でもそれが本当に”カーガイ”モリゾウのリアルな姿だから。それで愛されている。本音を出すから。
僕は遠慮していますけれども、分類すればペトロヘッドです。クルマづくりに関わっている首脳陣がみんなそんな感じになっちゃうと、冷静に、事業の面で、本当に見失わないで判断をできるか? という観点はあります」
■e-fuel(合成燃料)とどう向き合っていくのか?
「e-fuel もしっかりやっていきます。G7でも(新車販売だけでなく)"保有"にフォーカスを当ててくれているのはありがたいと思います。保有車両のカーボンニュートラル化は、新車販売の約15倍のインパクトを持つから、(カーボンニュートラルを進めるには)”そこ”をやらなければなりません。ただ、e-fuelはコストをいかに下げられるかが重要なんですよね。添加剤を入れ替えて、コストを下げていく必要があります。
JIS規格に入れて、オクタン価を少し下げてでも、エンジン側で燃焼を改善できれば添加剤を減らすことができます。(この新燃料の開発と普及、低価格化促進について)エネルギー産業に丸投げしても、できない。トヨタとしても技術開発をしっかりと進めていきます。ガソリンと同じ熱エネルギーにはできませんが、頑張ってクルマ側でノックを抑えればここまではやれる、となればよいなと。
産業連携して、5年くらいかけて技術開発をやっていければと思います。大量に普及するのはなかなか難しいかもしれませんが、ある一定量は賄えるのでは。たとえばGRのモデルはe-fuelで守っていこうよ、だとか。GRの会員制にして、指定給油所で、GRヤリス乗っている人はe-fuelを給油できますなどの、メンバーシップ制にするとかですね」
話し出したら止まらないクルマが大好きな佐藤社長は、同席した広報から「ストップ」を掛けられる一幕も(笑)
■佐藤さんは無類の和菓子好き! 特に豆大福が大好き!
『トヨタイムズ』の動画で和菓子、特に豆大福好きを告白している佐藤さん、「クルマよりも和菓子のほうが詳しい」(本人談)というほどの和菓子通。今回のインタビューでも佐藤さんは和菓子の有名店、岡埜榮泉の豆大福を我々にご馳走し、皆でお茶を飲みながらのインタビューとなった。
「豆大福好きの佐藤さんへ」と、当編集部からほど近い護国寺の名門和菓子店「群林堂」の豆大福を差し入れとして持参したところ、「やった! 群林堂だ」と大喜び。和菓子に詳しいのは茶道を嗜むからだという。
クルマも豆大福も大好きで、飾らず、しっかりと自分の言葉でインタビューに応じる佐藤さん、またじっくりとお話しを聞いてみたい。
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みんなのコメント
色々なことを迷いながら、手を広げ、「今日決めるのは明日のこと」程度で進んできた会社というイメージだ。
全方位でやっているのも、決める勇気がまだ無いからだろう。
開発の幅を狭めたい他メーカーにとって、それが癪の種。