セビルのグリルを縦に加工し再利用
タイヤの幅は、1930年代のモデルとしては太すぎるかもしれない。キャビンの形状も、見る角度によっては不自然ではある。それでも、他のレプリカのようなプロポーションの破綻は避けられている。
【画像】違和感ナシのレプリカ? クーリエ・キャデラックとセビル 現代技術で高度に蘇る名車たち 全102枚
AUTOCARをお読みいただいているようなクルマ好きを、オリジナルだと騙せる容姿とはいえないだろう。だが横からは、1936年のメルセデス・ベンツ540Kを綺麗に拡大したように見えなくない。
リア回りは精巧に仕上げられている。バックランプは後付け感が拭えないものの、違和感は殆どない。540Kと同じく、荷室へアクセスできるハッチが備わる。セビルの電動システムが流用され、ソフトクローズ機能も動く。荷室は奥行きがあり、実用性も高い。
垂直に切り立ったラジエターグリルは、キャデラック・セビルのグリルを縦に加工し直したもの。キャデラックのロゴがグリル上部に活かされ、その頂部にオーナメントが光る。ルーバーが切られたボンネットは、中央ヒンジで左右に開く。
法的な闘争を避けたかったロバート・メイドメント氏は、キャデラックへ確認を取り、これらの再利用の許可を得ている。何度も却下されつつ、最終的にはゼネラル・モーターズの幹部から書面で認めてもらったとか。
インテリアはキャデラックのまま
ドアを開くと、インテリアは1970年代後半のキャデラック。左右に別れたフロントガラスと長いボンネット越しの前方視界を除けば、運転体験もセビルのまま。ワンオフ特有の作りの甘さはまったくない。大量生産されたような、まとまりが漂う。
ダッシュボードは、幅が狭められたエンジンルームに合わせてある。中央で切断し結合されているが、非常に自然。ウッドパネルにメタルトリム、幾何学的な造形などの組み合わせは、アールデコ調。レプリカ・クラシックカーの内装として、馴染んでいる。
パワーシートやクルーズコントロール、エアコン、間欠ワイパー、オートヘッドライトなど、当時の最新技術もすべて動く。ただし、ステアリングホイールとペダルの位置は、かなりオフセットしている。
エンジンは、当初はセビルが積んだ5.7LのV型8気筒が維持された。しかし、1万6000kmほど走ったところで、6.6LのV8へ換装。最高出力は300馬力以上へ上昇しているらしい。
ボッシュ社製のインジェクションが機能し、エンジンは1発始動。3速ATはコラムレバーで操作でき、至って安楽に運転できる。だがアクセルペダルを押し倒すと、ドロドロという唸りを放ちながら、豪快に加速する。
発進時は緩やかに感じられるが、追い越しは余裕綽々。高速道路では、太いトルクで堂々と巡航できる。エグゾースト系はバイパス加工を受けており、スイッチオンで戦前のスポーツカーを彷彿とさせる轟音が開放される。音色はアメリカンだけれど。
本物の540Kでは得られない快適性
キャデラックらしく、広々とした直線を流している時間が最高。現代的な技術で設計されたセビルのシャシーは、グレートブリテン島の管理の良くないアスファルトを難なく処理する。540Kでは、得られない快適性といえる。
操縦性も悪くない。初代セビルは、欧州のモデルを強く意識した走りが狙われていた。ボディロールは小さくないものの、一度姿勢が決まれば高いグリップ力で活発にコーナリングできる。ヨットのように、ユサユサと揺れることはない。
ボディ後方が軽くなったため、リア・サスペンションは調整を受けている。その結果、安定性は高い。ステアリングも驚くほど正確。余計な振動は伝わらず、軽く回せ、遊びは小さい。強めにペダルを踏む必要がある、ブレーキも良く効く。
V8エンジンは軽くなく、気張りすぎるとアンダーステア。ステアリングホイールを回すと、1秒ほど遅れて重心移動が決まり、ボディを傾けながら回頭が始まる。
果たして、メイドメントの540Kは、想定より高価に仕上がった。複数を生産しても、1台当たり10万ポンドを超えると見積もられた。1990年前後からクラシックカー市場は停滞傾向にあり、英国経済も低調になり、売れる見込みはほぼなかった。
地元企業の協力を得ながら、1台は形になった。しかし、低摩擦のドアヒンジという、自社が取得した特許技術のPRに用いられたのみ。販売へ至ることはなかった。
仕上がりには満足していた社長
それでもメイドメントは、仕上がりには満足していた。21年間所有し、6万kmの距離を重ねている。普段の買い物や、シルバーストン・サーキットでのタイムアタック、グッドウッド・サーキットでの自動車イベントなどへ、積極的に出かけている。
モデル名は、最終的に彼が営むクーリエ・プロダクツ社にちなんで、クーリエ・キャデラックへ落ち着いた。メイドメントが住んだ地元では有名な1台になっていたが、乗る機会が徐々に減り、状態を維持してくれる人を求めて手放された。
2011年7月に、ボナムズ・オークションへ出品。アラン・キャリントン氏が、2番目のオーナーになっている。それ以来、キャリントンは1万3000kmほど距離を伸ばした。かなり乗りやすい540Kのレプリカであることは、間違いなさそうだ。
協力:アラン・キャリントン・クラシックカーズ社
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