この記事をまとめると
■昨年、トヨタ・クラウンクロスオーバーが販売を開始した
クラウンセダンの「全長5m超え」ってデカすぎじゃない!? タクシーやパトカーに向かないサイズで果たしてどうなる?
■2023年はクラウンスポーツ、クラウンセダンがデビュー予定
■すべてのタイプが同時に登場しないことでディーラーには不利益も
いまクラウンクロスオーバーの納期は2024年春以降
昨年デビューしたトヨタ・クラウン・クロスオーバーに続き、2023年はクラウン・スポーツ、クラウン・セダンがデビュー予定となっており、すでにクラウン・スポーツのプロトタイプ試乗記がウェブニュースをにぎわせている。
そもそも、なぜクラウンはここへきてここまでワイドラインアップになったのだろうか。これは日本市場の事情というよりは、中国市場においてクラウンのみを扱う専門店舗を今後展開していくとされており(複数のラインアップが欲しい)、そのような海外市場の事情のほうが大きいように感じている。すでに中国ではクラウン・クロスオーバーがデビューしているだけでなく、クラウン・クルーガーや、クラウン・ヴェルファイアもラインアップされている。
中国のことはさておき、クラウンスポーツは今年秋にはデビュー予定となっているが、そのころであってもクラウンクロスオーバーの納期遅延は改善されていない可能性が高い。クラウンクロスオーバーは本稿執筆時点で発注しても、納車予定は2024年春以降となっているからである。販売現場としては新型車投入については基本的にありがたいのだが、クラウンクロスオーバーのバックオーダーを抱えるなか、同じクラウンを名乗るクラウンスポーツがデビューするのは少々困ったことになってしまう。
まず考えられるのが、現状ですでにクラウンクロスオーバーを発注し、納車を待っている人のなかから「クラウンスポーツに注文車を変更したい」という話が続出する可能性が高いということ。さらに、現状クラウンクロスオーバーで受注車両がまとまりそう、もしくは今後販売促進活動する予定のお客がいたとしても、価格はわからないがクラウン・スポーツのほぼ全貌が半ば公開されてしまうと、「クラウンスポーツの価格などの詳細情報がわかるまで結論を待つ」というお客も出てくることは十分予想できる。
すべてが出揃ってから購入を検討する人も少なくない
現状ではクラウンスポーツも話題の高いモデルなので、デビューからしばらくは納期遅延というものは覚悟しなければならない(デビュー早々に新規受注停止になる可能性もある)。クラウンクロスオーバーも納期遅延が続いているが、クラウンスポーツに注文車の変更をされてしまうと(それが可能ならば)、発注したお客が納車までさらに待つことになるだろう。さらにディーラーとしても実績カウントできる(新規登録できなければ実績にならない)時期が先延ばしになってしまうのである。
クラウンスポーツだけでなく、その後は年内予定とされているがセダン、そして2024年以降にエステートがデビュー予定となっているので、すでにエステートのデビューまで待ってから購入の判断しようとする人もいるだろうから、クラウンとしての話題は持続するものの、販売現場では五月雨式でとくに同一車種でバリエーションの異なるニューモデルが登場する状態について必ずしもウエルカムとは言えないのである。極端な例えをすれば、クラウンクロスオーバーの購入を検討していた人が、「スポーツが出そう」とのことで結論を延ばし、さらに「セダンが出そう」とさらに結論を延ばし、「エステートが出るまで結論を先送りしたい」となるケースも十分想定できるのである。「どうせなら全車種同時にデビューさせてほしい」という声も販売現場では少なくない。
部品調達がなかなか計画どおりに進まない現状では、全車種一斉デビューは生産体制の都合もあり難しいのかもしれないが、ここまで今後デビューするモデルの情報が溢れていれば、「どうせ納車も時間かかるし」とエステートがデビューするまで待つ人も当然いるだろうし、「エステートが出てから購入を考えるよ」と言われ、セールスマンの売り込みを回避する逃げ口上にも使われかねない。メーカーの自信作であっても、すべてのお客が「かっこいいなあ」などと思い自発的に購入するわけではない。
セールスマンの既納客への売り込みで受注につながるケースが新車販売ではまだまだ主流で、それが新車販売を支えているのは間違いないことであり、とくにトヨタディーラーはそれを得意としているので、今日の圧倒的な国内販売シェアを支えているといっても過言ではない。クラウンのような伝統的で高級なモデルなら、なおさら店頭を初めて訪れるようなフリーな立場のお客へバンバン販売していくというシチュエーションは馴染みにくいものとも考えているし、歴代モデルより買い求めやすくなったとはいえ、高級車には変わりないので、紹介もなく初めて店頭を訪れたお客へバンバン売るのはリスクが高い(海外へ転売されてしまったり、資金洗浄のための購入など)ので、販売現場では慎重にならざるを得ないのである。
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