2台の開発用車両によりヨーロッパ全域でテストプログラムを実施
ヨーロッパ全域におけるベントレー「バトゥール」の実走行試験が開始された。2022年8月にモントレー・カー・ウィークでデビューしたバトゥールは、2台の開発用車両により、最高水準の性能と品質を確実なものとするための厳しいテストプログラムを行なう。
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このわずか18台の限定シリーズは、様々なエンジニアリングプログラムを経て、2023年半ばから納車を始める予定となっている。
テストの検証項目は、エンジンと車両全体の耐久性、環境適合性と太陽光のシミュレーション、高速安定性、空力、騒音・振動、ドライビングダイナミクスなど多岐にわたる。120を超える個別のテストは、ゴールドの「オルガンストップ」ベンチレーションコントロールの表面仕上げの品質から、新しいW12エンジンのハードウェアとソフトウェアに至るまで、すべてを網羅。
ヨーロッパ横断2,500kmの大規模なドライブ試験を実施
2台の先行開発車では、58週間を超える車両検証が予定されており、エンジンパワーの向上を検証するためにすでに完了した100週間以上の車両開発を補完するもので、バトゥールは少なくとも最高出力740PSを誇る史上最もパワフルなベントレーとなった。
開発車両の1台であるカーゼロの最初の活動は、実際の状況をシミュレーションするため、ヨーロッパ横断2,500kmの大規模なドライブすることとなる。ドイツを出発し、イタリア、フランス、スペインを経て、試験場での高速テストが行われる。
マリナーのチーフテクニカルオフィサーであるポール・ウィリアムズ氏は、今回の走行試験の開始について次のようにコメントしている。
「プロジェクト開始当初から、このクルマが究極のGTでなければならないことは明らかでしたので、エクステリアデザイン、エンジンパワー、ハンドクラフトのインテリアなど、すべての要素が妥協なく作り上げられました」
バトゥールには、新しい挑戦となるユニークな機能がいくつもある。例えば、エクステリアのヘッドランプは非常にコンパクトなLEDユニットで、スタイリング・チームがデザインした挑戦的なプロポーションに合わせて作られており、クルマの外観を一変させるが、生産過程は複雑となる。また、20年の歴史の中で最もパワフルなW12の開発も行っており、膨大な検証プログラムが必要となる。
小さなディテールまで計算されており、例えば、フロントグリルのダイヤモンドの角度はW12エンジンのシリンダーの角度を表している。また、バトゥールは18台しか生産されないが、その品質レベルは、現在ベントレーが毎年生産している15,000台と同じでなければならない。
テストコースでは、開発車両のカーゼロは7週間にわたり、ハンドリングトラック、混合路面、高速テスト、過酷な路面状況での耐久性テストが行われる予定となっている。これらのすべての活動において、データとフィードバックが収集され、技術目標が達成されていることが確認される。
試験場での作業が完了すると、さらに7,500kmの実走行が行われ、環境試験が開始される。4週間弱で600時間の太陽熱負荷に耐えることになるが、この時間はアリゾナ砂漠の5年分に相当。特に、カーボンファイバーに代わるサステナブルな新素材を外装部品に採用したため、この試験は重要となる。
最初の納車が始まる頃には、810以上のユニークな部品が160週間に及ぶテストと開発を終え、究極のコーチビルト・グランドツアラーが完成する。
すでに100週間を超えるパワートレイン開発が完了、最高峰のW12ンジンが完成
バトゥールは、ベントレー史上最もパワフルな車であり、過去20年間ベントレーの成功の原動力となってきた象徴的な手作業で組み立てられた6.0リッターツインターボW12エンジンで最高出力739PS以上を発揮。
新しいエアインテークシステム、改良型ターボチャージャー、改良型インタークーラー、エンジンギアボックスとエレクトロニックスタビリティコントロールの新しいキャリブレーションを確認するために、すでに100週間を超えるパワートレイン開発が完了し、最高峰のW12を完成させた。
ベントレーの完全電動化に向けたビヨンド100戦略の変革の一環として、エンジンが終わりの時を迎えるにあたり、バトゥールはW12の並外れたパワー、トルク、洗練性を称えるイベントの第一弾となる。スピードチューンエアサスペンション、電動アクティブアンチロールコントロール、eLSD、4輪ステアリング、トルクベクタリングを備えたベントレー史上最も進化したシャシーに、エンジンパフォーマンスがマッチングする。
塗装にもオーナー仕様と同じレベルでこだわる開発車のカーゼロ
18台のバトゥールはすべて予約済みとなっており、今後、マリナー社内のデザインチームの指導のもと、それぞれのオーナーと共同でデザインされる。
オーナーは、バトゥールのほぼすべての表面の色と仕上げを指定することができ、個性的なクルマを作ることができる。メインのエクステリア・ペイントからエアベントの表面仕上げに至るまで、文字通りあらゆるものが、細部に至るまで指定できるようになっている。
エンジニアリング開発車であるカーゼロも、オーナー仕様と同じレベルのこだわりがある。エクステリアの塗装は特注色であるパープルセクターで、曲面全体に深い鮮やかな色彩を与えている。ボディワークは、光沢のあるナチュラルファイバー仕上げのフロントスプリッター、サイドスカート、リアディフューザーで強調されている。
フロントには、グロス・ダークチタン仕上げのメインマトリックスに、中央のパープルセクターからサイドに向かって徐々に暗くなり、ブラッククリスタルへと続く水平のオンブレパターンのコントラストシェブロンがアクセントとなった、芸術的なグリルが搭載されている。さらにエンドレスボンネットのラインはサテンチタンで仕上げられ、22インチホイールのスポークもグリルと同じグロスとサテンブラッククリスタルで仕上げられている。
ただしカーゼロにしか存在しないが、ボディパネルの端に小さな白い矢印が表示されている。このマーカーは、耐久試験中のパネルの動きや緩みをフィードバックするのに役立つ。
コーチビルドの未来に向けて
2020年に発表された2シーターのオープンカー「マリナー・バカラル」は、ベントレーのオーナーの嗜好について重要な洞察を与えてくれた、近年初のコーチビルドプロジェクトであった。
今回のバトゥールでは、カラー、素材、仕上げだけでなく、マリナー・バイ・ネイム・オーディオシステムのような新しいテクノロジーも含め、さらに豊富なオプションが開発された。コンチネンタルGTに搭載されたネイム・オーディオ・システムに、20個のフォーカル・スピーカーを追加し、バトゥール専用に設定、カスタムチューニングして、クラス最高のオーディオ体験ができるようにしている。
さらにデザインチームは、ハイエンドの素材と仕上げを組み合わせることで、バトゥールにユニークな個性を与えている。これは、アディティブ・マニュファクチャード・ゴールドからサステナブル・ハイドやナチュラル・ファイバー・パネルまで、持続可能な素材と生産方法への大きな一歩となる。
先進の製造技術により、金型への投資を最小限に抑えることができ、製造工程における材料やエネルギーの使用量を削減することができる。また、テストが成功すれば、マリナーはカーボンファイバーの代わりに天然繊維を車の一部に使用することを計画している。これは、これらのパーツの材料を製造するために必要な炭素を大幅に削減するものとなる。
バトゥールでは、マリナーの技術力を駆使して、次世代のコーチビルドベントレーの持続可能な機能の開発を推進するため、サステナビリティが重要な役割を担っている。関連情報
https://www.bentleymotors.jp/
構成/土屋嘉久(ADVOX株式会社 代表)
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