日本の都市環境にはハイブリッドのほうが適している
日本は、1997年にトヨタから世界初のハイブリッド車(HV)プリウスが発売され、HV人気が高まった。それに対し、ことに欧州はエンジンとモーターを併用することに対して慎重で、当時はHVへ関心を寄せてこなかった。部品点数が増えることは原価を高めることに通じ、またエンジンとモーターの相乗効果を活かす制御開発などにも時間を要する。
燃費を改善するなら、従来から欧州では小型車や商用車で定着していたディーゼルでよいという発想だ。またディーゼルターボなら、日本に比べ速度域の速い欧州でも走行全般にわたって燃費を改善できる。
単に原価上昇への懸念ではなく、欧州は日本のように大都市がなく、都市部も国内に点在する格好で、大気汚染への関心が低かった。ロンドンは800万人とやや突出しているが、ドイツの首都ベルリンは300万都市で、国の首都でさえ人口が少ない。日本で言えば、名古屋が200万人だ。しかも、100万人以上が住む都市は欧州では一国に数えるほどしかない。一方日本には、12都市もある。
そうした背景があるにもかかわらず、日本でも欧州に遅れてダウンサイジングターボやクリーンディーゼルが遅ればせながら出てきている。しかし、ダウンサイジングターボはそもそも排気量が小さいので、発進などで力が足りない場合がある。ことにオートマチック車ではその傾向が強まる。その点、マニュアルシフトがなお根強い欧州では、クラッチのつなぎ方やギヤの選び方でエンジンの低回転域を避け、ターボチャージャーの過給を活かせる回転数をつなげて走ることができる。
日本の都市部でオートマチック車を運転する場合には、ダウンサイジングターボより、低回転でしっかり力を出すモーターを活かしたHVのほうが快適に運転できることになる。
マニュアルシフト車や長距離移動を頻繁にする人には、ダウンサイジングターボやクリーンディーゼルの選択肢が適しているかもしれないが、それ以外は、モーターを活かしたHVやEVのほうが運転しやすく、快適なはずだ。なおかつ大都市に住む人であれば、排ガスゼロにできるモーター走行を活用することが、大気汚染防止にもつながる。
この夏、猛暑とともに光化学スモッグが発生しやすくなっている。今日、公害を実感しにくくはなっていても、なくなったわけではない。一刻も早いゼロエミッション車の普及が、日本ではとくに望まれるのである。
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