コストダウンと高性能化を狙う
フランスの自動車大手ルノーは、2028年から新世代の電気自動車(EV)を導入し、効率性、充電性能、持続可能性を大幅に向上させ、「2世代分を一気に追い抜く」としている。
【画像】流線型ボディの新世代EV【ルノー・エンブレム・コンセプトを写真で見る】 全17枚
EV子会社のアンペア(Ampere)は、設立から1年が経過し、次の10年に向けたEV開発を着々と進めている。今後3年間でバッテリーコストを50%削減、エネルギー効率を8.3km/kWhに向上、充電時間を15分まで短縮するという計画を打ち出している。
技術開発に伴い、エクステリアとインテリアデザインに対する全く新しいアプローチも導入する。
先月『パリ・モーターショー2024』で発表されたルノーの新型コンセプトカー「エンブレム」は、今後登場するEVの方向性を示すものだ。流線型のボディは空力特性を最大限に考慮したデザインで、未来的なミニマルデザインのインテリアと、水素燃料電池とバッテリー式パワートレインを独自に組み合わせた画期的なパワートレインを備えている。
ルノー・グループの最高経営責任者(CEO)であるルカ・デ・メオ氏は、エンブレムについて「単なるコンセプトやビジョンだと思われるかもしれませんが、わたしのことを少しでも知っている人なら、わたしがステージに上げたものは最終的には実現する傾向にあると知っているはずです」と述べた。
つまり、エンブレムから発展した量産車がいずれ登場する可能性がある。注目すべきは、ルノーの直近のコンセプトカー、セニック、4、5は、いずれも市販化に際してほとんど変更されていないということだ。
さらに、デ・メオ氏は、エンブレムの量産車バージョンは「次世代の革新的なCセグメント・プラットフォーム」を採用すると示唆した。これは、現在販売されているAmprプラットフォームベースの4 Eテック、5 Eテック、メガーヌEテック、セニックEテックとは技術的に一線を画すものである。
同氏は「短期的な障害や困難があろうとも、EVは未来である」として、欧州でのEVの普及が鈍化している中でも、次世代EVへの多額の投資を継続することが重要だと述べた。
「人々はEV市場の停滞を懸念しています。すべてが順調だという言葉も当てにしないでほしい。明らかに大きな課題があり、わたしは欧州がそれらを早急に解決しなければならないと考えています。しかし、大きな未来に再び焦点を当てることも重要だと思います。そして、長期的な視点から、わたしはEVこそが未来であり、少なくとも未来の大部分を占めると言えます」
EV市場は「欧州の自動車業界の成長の場となる」一方で、「その他の市場は横ばいか、あるいは減少する可能性がある」とし、1年前にルノーからアンペアを分社化した決定を正当化した。
デ・メオ氏によると、EVは生産から廃車までの全過程において、エンジン車よりも二酸化炭素排出量が少ないことは「科学的に疑いの余地がない」という。また、アンペアの開発努力により、ルノーのEVは2030年までにエンジン車よりも排出量を70%削減できるとしている。
さらに、総所有コストの観点からEVはすでにエンジン車よりも安価であり、バッテリーのエネルギー密度を高め、生産コストを削減し、全体的な効率性を向上させる取り組みが、この差をさらに広げるだろうと述べた。
新しいバッテリー技術
ルノーの新世代EVにとって特に重要な技術開発は、エネルギー密度がはるかに高いバッテリーパックの導入である。同社は「ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)のエネルギー密度、リン酸鉄リチウム(LFP)のコストと安全性、15分未満の充電」を組み合わせたものになると説明する。
バッテリーのコストの60~75%が化学組成(ケミストリー)によるものだと、ルノーは言う。これがエンジン車との価格差の主な要因であり、新しいタイプのバッテリーへの投資を促す主な動機となっている。
ルノーは2026年以降、主力のEVバッテリーをNMCからLFPに切り替える予定であり、これにより航続距離に影響を与えることなくコストを20%削減できるとしている。
アンペアはルノーのEVプラットフォーム開発陣と協力し、LFPに内在する効率低下を補う新しいセル・トゥ・パック構造を設計した。これにより、コスト削減がエネルギー出力の低下を招くことはなくなった。
同社は、コバルトフリーの正極材とシリコン負極材を組み合わせた新しい化学組成を導入することで、2028年までにコストを50%(現在比)削減する予定である。LFPの安全性を維持しながら、NMCと同等のエネルギー密度を実現するという。さらに、充電時間を大幅に短縮(15分)できるという利点もある。
そして今後10年以内に、シリコン負極材をリチウムに置き換えることで、NMCバッテリーのエネルギー密度を2倍に高めることを目指す。これは、ルノーが量産車に搭載予定の全固体電池で「基本構成」と呼ばれる組成である。
アライアンスパートナーの日産は2028年から全固体電池搭載EVを販売する計画だが、ルノーも同じスケジュールで対応できるのだろうか? アンペアのバッテリー化学開発責任者であるモハメド・タゴギ氏は問い合わせに対し、日産と「協議中」であるとだけ答えた。
ルノーのエンジニアは、バッテリーコストの25~40%が組み立て(ケーシングとシャシーへの取り付け)に関連し、2028年までに同コストを半減させることもアンペアの計画の鍵であると述べた。
ここでもまた、エネルギー容量を最大化するセル・トゥ・パック構造が重要となる。また、今後発売されるEVにセル・トゥ・シャシー構造を採用し、さらに効率を高める作業が進行中だ。
二酸化炭素排出量の削減
ルノーの電動化戦略の中心にあるのは、自動車とグローバル事業活動の両方における二酸化炭素排出量を大きく削減するという目標だ。
その意欲は、エンブレム・コンセプトに象徴されている。同車は、製品ライフサイクル全体(使用15年または走行20万km)で排出される二酸化炭素量がわずか5トンと予測されている。これに対し、現行世代のガソリンエンジン車「キャプチャー」の排出量は約50トンである。
バッテリー素材の調達や、車両全体で使用される膨大な数の部品の影響を考慮すると、キャプチャーをEVにしても「この問題の半分しか解決できない」と、サステナビリティ担当のクレア・マルティネ氏は主張する。
マルティネ氏は、自動車生産においてネット・ゼロを実現できるかどうかは、低炭素エネルギーの調達、バッテリー工場の効率の最適化、そしてできる限り影響の少ないバッテリー素材の調達にかかっていると述べた。これらはすべて、ルノーが新世代EVの展開に掲げている目標である。
バッテリーのケースにリサイクル・アルミニウムを使用することや、電気炉で鉄鉱石と水素を混ぜて「最も耐久性が高く、要求の厳しい部品の1つ」であるスチール製ボディパネルを生産することも、目標達成に向けた重要なステップとなる。
AUTOCARの取材に応じたマルティネ氏は、広範なサプライチェーンの二酸化炭素排出量の削減にどのように取り組むのかという質問に対し、「それは当社のロジスティクス部門における脱炭素化戦略の一部です。2030年までに20%削減するという目標を掲げています」と答えた。
フランス北部にあるルノーのEV生産拠点エレクトリシティについても言及し、「ここで本当に重要なのは、ティア1サプライヤーの75%が300km圏内に位置していることです」とした。
マルティネ氏は「EVメーカーにとって、欧州にこのように強力な地域拠点があることは有益です」と述べ、EUの炭素国境調整メカニズム(EU域外からの輸入品に課税する制度。略称:CBAM)が本格適用された際には、さらに有益性が増すだろうと付け加えた。
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みんなのコメント
内容的には単なる全固体電池の話と水素製鉄によるハイテン鋼板の採用の
話をしてるだけでは。。。。