ルノー・カングーが14年ぶりにフル・モデルチェンジを行ない早速試乗してきた。
まずはデザインが一新され大きくなったことが注目される。Aピラーが寝かされ、なだらかなフロントウインドウのデザインと、リヤの処理もわずかに傾斜を持つスラントテールになった。ひと目でカングーと分かるものの、従来のデザインとは違う。言い換えれば興味を持つ新しいユーザーの獲得ができそうな気配があるモデルになったのだ。
【THE MOTOR WEEKLY】第512回 3月11日放送
新型カングーのインテンス(左)とクレアティフ(右)カングーはご存知のように商用車がベースになるモデルで、新型もそこは変わらない。が、商用と乗用の性能を格段にアップし、とくに乗用車に要求される性能に力を入れているのが特徴だ。
例えば乗り心地や静粛性だ。確かに静粛性は上がっていて、国産ミニバンと比較していいレベル。全部の窓の厚みを厚くし、ダッシュボードには3層構造の防音材を使いエンジン音を抑えるなどの対策がされている。だから商用車感は皆無で乗用車のマルチビークルといった印象だ。
ルノーでは、遊びの空間という造語「ルドスパス」を使ってカングーのキャラクターをイメージ付けている。商用ベースなモデルだけに、堅牢性や機能性はある意味担保されたモデルで、ボディ剛性や細部のシッカリ感といったものから商用が背景にあることが頼もしくなる。
見ての通り、フロントの顔も変わりLEDライトとCシェイプデイタイムランプが装備されクロームで縁取られたフロントグリルが特徴になっている。そして日本市場だけのモデルとしてブラックバンパーもラインアップされている。フランスでは黒バンパーは商用で乗用はボディ同色となっているが、国内ではどちらも選択できるようになっている。
そしてボディサイズが再びアップした。全長は+210mmで4490mm、全幅も+30mmで1860mmに、全高は変わらず1810mm、ホイールベースも+15mmで2715mmとなっている。使用されるプラットフォームは日産と共有するCMF-C/Dで、最小回転半径は5.6m。それほど小回りが効くというほどでもない。
新型カングー「クレアティフ」(ボディカラーはジョン アグリュム)こうしたサイズアップはインテリアにもメリットを生み、後席は3座独立したシートになり大人3人がしっかりと座れるサイズになっている。もちろん荷室も拡大され、通常時で775リッターもの大きさを持ち、後席を畳んだ状態では2800リッターという大容量だ。ちなみに前モデル比+132リッターだ。
しかもバックドアはカングーのアイデンティティとされるダブルバックドアで、90度で一旦ロックされるが、ロックを外すと180度開き、荷物の出し入れはさすが商用ベースと感心させられる。そのバックドアを開けると荷室はスクエアで大きな突起物はなく、フラットで荷物の積みやすさが容易に想像できる。こうした使い勝手は先代から引き継がれ、サイズアップをユーザビリティに反映しているわけだ。
ダブルバックドアを継承後席を畳むと広大なスペースに標準装備のシートバックテーブル3座独立タイプの後部座席運転席ではまずレザーステアリングが目を惹き、ハンドルに装備されるADAS系のスイッチやインフォテイメントへのアクセススイッチなど乗用車と同じ。8インチモニターはApple CarPlay、Android Autoに対応するスマートフォンミラーリング機能が装備されている。
水平基調デザインとなったダッシュボード周りは質感が大幅にアップしているそしてパワートレインはガソリンとディーゼルが選択できる。前モデルでディーゼルがカタログモデルになかったが、新型では選択肢になった。
ガソリンは1.3Lの4気筒ターボでルノー・日産・ダイムラーの共同開発エンジンを搭載。131ps/240NmのスペックでWLTCモード燃費は15.3km/Lとなっている。ディーゼルは1.5Lの4気筒ターボで116ps/270Nm。WLTCモード燃費は17.3km/Lだ。
今回その両方を乗り比べができた。ちなみに、サスペンションやトランスミッションはどちらも共通で、先代の6速乾式から7速湿式EDC(DCT)に変更している。またステアリングギヤ比が今回17:1から15:1へと速まり、ステア応答性をあげているのも新型カングーの特徴だ。
1.3L 4気筒 ガソリンターボエンジンディーゼルは1.5L 4気筒ターボ走行フィールでは乗り心地という点では、前モデルのカングーとサスペンション・ストロークは同じという説明だったが、明らかに足の伸びていく感覚は減り、ロールも少なくなった。前モデルではコーナリングでのロールは大きくストロークのある長い足が印象的だったが、新型では乗用車ライクなコーナリング姿勢と言える。
タイヤサイズはどちらも205/60-16で、ホイールはスチールホイールにホイールカバーという組み合わせ。試乗したディーゼルは日本専用仕様のブラックバンパーでホイールはスチールにハーフキャップ。ガソリンはボディ同色のバンパーで、フルカバーホイールキャップという違いだ。
黒バンパー+ハーフキャップ(クレアティフ)同色バンパー+フルキャップ(インテンス)またステア応答もほどよい感じで、ギヤ比を速めているもののクイックで敏感とは感じさせず、ちょうどよいフィーリングでステア操作できる。
つまり、ガソリンとディーゼルではまさにエンジンだけの違いで、室内で聞こえるエンジン音が違うといった程度。ガソリンのほうがもちろん静粛性は高く、なめらかに走るが、パワーを求め大きくアクセルを踏み込むと一生懸命さがでてくる印象だ。
一方のディーゼルは静粛性ではガソリンより劣るものの、うるさいということではなくエンジン音が聞こえるというレベル。しかし市街地走行や高速の巡航ではそのエンジン音も聞こえてこないので、発進時や追い越し加速といった場面で音の違いが出るという状況だ。
またトルク感ではディーゼルのほうが全速度域で余裕があり、頑張っている感じは出てこない。30Nmのトルクの違いなのだが、フラットなトルク特性を持つディーゼルならではということだろう。
こうした違いを踏まえると、ルノージャポンが言うように「好みと用途で選ぶ」ことになる。市街地走行が多く、ゴーストップが多い使い方ならガソリン。高速移動、長距離移動が多い人にはディーゼルという選択になるのではないか。個人的価値観では、軽油価格を踏まえるとディーゼルという選択肢になる。
最後のADASの搭載について少しお伝えすると、前型では緊急回避ブレーキも装備されていなかったが、今回先進の運転支援システムを搭載している。高速道路でも使用してみたが、乗用車と同様の使い勝手で、長距離の高速移動で交通量の少ない場所では積極的に使いたいと感じた。
ステアリングの左側にADAS系のスイッチが配置されているそのADAS機能では、ルノーの日本導入モデルとしては初となる二つの機能をお伝えしよう。ひとつは車線中央維持機能でエマージェンシーレーンキープアシスト。これは車線をはみ出しそうになったときに、ハンドル操作介入があり車線維持をする。さらに、前方路面上の車線や路肩などを検知し、近づきすぎるとアラートが出て、自動でハンドルを少し回して衝突、逸脱から回避をする。作動速度は、路肩感知は70~180km/hで、対向車の感知は70~110km/hとなっている。
そしてもうひとつはブラインドスポット・インターベンションで後側方車両検知警報は、後側方車両との接触回避をサポートする機能だ。後側方からの車両の接近時に接触しそうになると、ステアリングを少し回して衝突を避けるようにアシストする。作動速度は70~180km/h。
このように新型カングーには最新の安全運転支援装置とアクティブセーフティを備え、ボディの堅牢性も手伝い、安心・安全でありつつ、遊びの空間を広げるマルチパーパスビークルになって登場したということだ。
諸元表
価格
The post 【ルノー 新型 カングー 試乗記】らしさ健在で14年分の進化。ガソリン or ディーゼルどっちにしようか first appeared on オートプルーブ - Auto Prove.
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みんなのコメント
ブランドに拘るユーザーでも無い限り、候補には入らないと思う。
さっきプジョーの正規Dラーに点検行ってきたけど、走行2万キロの2008で車両本体価格が298万だったよ。
2年前に新車で買った時の車両本体価格で、今じゃ中古しか選べないんだもんな。
この値上がり、たまったもんじゃないよ。