フルモデルチェンジしたメルセデス・ベンツ「Sクラス」の凄みとはなにか? 今尾直樹が考えた。
人間の官能を刺激する
29歳、フェラーリを買う──Vol.120 小さなトラブルは気にしない、気にしない
「なぜSクラスは世界の高級車をリードするのか?」というお題を編集部からいただいた。
筆者も、今年の1月に国内発売となったメルセデス・ベンツの「S400d 4MATIC」に試乗して、驚嘆した。
これぞ、新しいベンチマーク。エア・ベッドみたいに快適な乗り心地を備えているのに、退屈さとは無縁。ものすごくリラックスしているのに、神経が研ぎ澄まされる、といいましょうか。
というのも、自動車の快適性というのは通常、NVH(ノイズ・ヴァイブレーション・ハーシュネス)をおさえることで生まれる。ただし、やりすぎると、リアル・ワールドと隔絶して眠気を催す。運転に飽きちゃったりするのだ。
ところが新型S400d 4MATICときたら、エア・サスペンションのおかげで超快適な、エア・ベッドのごとき乗り心地を実現し、あまりの気持ちよさに、頭をさえさせてくれる。
全長5m、車重2tを優に超える巨体が、最大トルク700Nmをわずか1200rpmで生み出す2924ccの直6ディーゼル・ターボ・エンジンと後輪操舵、フルタイム4WD、そして、それらをつかさどる電子制御システム等、最新のハイテクを使って、人間の官能を刺激する。
人馬一体というのではない。上下関係でもない。ゆうべはゆうべ、そして、今夜は今夜。いわば他人の関係ですけれど、ドライバーはS400dという他者を意識しつつ、ステアリングなりペダルなりの操作を行う。
すると、その操作に対して、S400dは、ああ、私が期待していたのは、まさにこれだったのだ……と、あとから思い至るような反応を返して、ドライバーを感激させ、またも、燃えるの。パッパ、パヤッパ。ご存じでしょうか、『他人の関係』。
人間工学の徹底的な追究がこのようなドライバー(人間)とクルマ(機械)の関係を生み出しているわけだけれど、エンジニアではない筆者としては、冒頭の設問に対してはこう答えたい。
それは、Sクラスこそ世界の高級車をリードする存在でなければならない、とメルセデス・ベンツのひとたちが、こころの底から思っているからである。「世界をリードする高級車をつくるんだ」と思わずして、そういうクルマがつくれるはずはない。
たとえば、サッカーの本田圭佑選手が、ワールドカップの抱負を聞かれると、いつも「優勝です」と答えていた。あるとき、本田選手は、こんな内容のことをテレビで語っていた。
「優勝しようと思っていないヤツが優勝できるわけがない」
そりゃ、そうだ。
自負と野心をはっきり示したSクラス
話をSクラスに戻すと、メルセデス・ベンツこそ、自動車界での常勝を宿命づけられたチームである。自動車界のバイエルン・ミュンヘン、レアル・マドリッド、野球でいえば、ニューヨーク・ヤンキース、読売ジャイアンツ……。
現存する最古の自動車メーカーのひとつであり、ここんちは1886年にガソリン自動車の特許を、それぞれ別個に取得したカール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーを始祖にいただくブランドである。われこそが自動車の創造主である、という自負を抱いていて、その自負、歴史と伝統が、彼らをして世界をリードする高級車をつくらせる。
もちろん、そのこと、つまり、世界をリードする自動車をつくるということを彼らは強烈に意識している。その証拠に、たとえば、7代目Sクラスのプレスリリースにはこう記されている。
「メルセデス・ベンツSクラスは、いつの時代も、その時点で持てる全ての技術を搭載し、世界の自動車の指標とされてきたメルセデスのフラッグシップモデルです。先代は2013年に発表され、累計販売台数は世界で50万台を超え“最も選ばれているラグジュアリーセダン”の一つとなりました。」
今回8年ぶりのフルモデルチェンジとなった新型Sクラスは「Sensual Purity(官能的純粋)を追求したデザイン」、「人間中心の最新技術」、「安全性の更なる追求」など、「現代に求められるラグジュアリー」を再定義し、その充実を図った意欲的なモデルです。
「世界の自動車の指標とされてきたメルセデスのフラッグシップ」にして、「現代に求められるラグジュアリー」を再定義するという自負と野心が、そこにはっきり示されている。
高級車のリーダーとは
これに対して、同じドイツの高級車メーカー、BMWやアウディはどう主張しているか? まず、2015年10月7日に発表されたBMWの旗艦、現行「7シリーズ」のプレスリリースにはこう書かれている。
「BMW 7シリーズは、1977年の登場以来、ダイナミズムとラグジュアリーを高次元で融合するとともに、モデル・チェンジ毎に数多くの革新的技術を取り入れ、約40年間に渡って常に最も革新的なラグジュアリー・セダンとして君臨し続けたBMWのフラッグシップ・モデルである。」
つまり、“最も革新的なラグジュアリー・セダンとして君臨し続けたBMWのフラッグシップ・モデル”ではあるけれど、“世界の指標とされ続けてきた”とはいっていない。
2018年9月5日に発表された現行アウディ「A8」もまたしかり。そのリリースは以下のごとくである。
「Audi A8は初代から常に、技術の最先端を歩み続けてきたフラッグシップセダンです。革新的なボディ設計技術であったアウディスペースフレーム(ASF)、高効率直噴エンジン、アダプティブエアサスペンション、前後不等分トルク配分のquattro(フルタイム4WD)、フルLEDヘッドライト、最先端のドライバーアシスタンスシステム、そして常に最新世代のMMIインフォテイメントを採用するなど、Audi A8はアウディの技術的ショーケースとしての役割を受け持ってきました。そして第4世代としてフルモデルチェンジを果たした新型Audi A8は、すべての要素を大幅にアップデートし、ふたたび技術の地平を切り拓いています。」
要するに、これまで“技術の最先端を歩み続けてきた”アウディのフラッグシップ・セダンは今度も「技術の地平を切り拓いて」いると述べているだけで、高級車ということばは意識的にか無意識的にか、少なくともプレスリリースの本文の冒頭には使っていない。
さて、わがニッポンの高級車メーカー、レクサスはどう考えているかというと、2017年発表の現行「LS」のプレスリリースは以下のごとくである。
「5代目となる新型LSは、1989年に発売され、高級車の新たな基準となった初代モデル以来継承されている、滑らかでパワフルな走りや圧倒的な静粛性・快適性など、LSのDNAはそのままに、セダンとして十分な居住性を確保しながら、斬新なクーペシルエットを両立したスタイリング、エモーショナルな走り、数々の先進技術により、LEXUSの象徴として大きな変革を果たした。」
初代LSが“高級車の新たな基準となった”と主張してはいる。けれど、5代目LSは「レクサスの象徴として大きな変革を果たした」のであって、それ以上のことは語っていない。
もちろん、メルセデス・ベンツ以外の3社のフラッグシップのプレスリリースの冒頭の文言は、たまたまそうなだけで、内心は異なるのかもしれない。高級車のリーダーはわれわれだ! と、BMWもアウディも、レクサスだって、そう思っているかもしれない。
そう思っていても黙っていては伝わらない。とはいえ、日本代表のエースが来るFIFAワールドカップの目標を問われて「優勝」と答えると“ビッグ・マウス”といわれる。だから、公には口にしない。ブラジルとかスペイン、ドイツだとかの強豪国のエースがおなじことをいっても、メディアもSNSも世論も、当然だと受けとめる。
メルセデス・ベンツSクラスもまた、そういう存在なのである。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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